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怪訝な顔……というよりは心底心配そうに俺を眺める凪たちを残して、俺は初詣で賑わう神社を後にした。
準備はすぐに整った、もともと仕事の早い俺、サスガ!
──と、余談はさておき、そうだな……旅立ちならまずはあそこからだ!
俺は分厚い時刻表──これでもミニチュア版──とにらみ合い、手持ちタイプの革鞄のポケットから赤ペン取り出して勢いよく丸をつけた。
携帯でも時刻検索ができるというのに、何故時刻表?と尋ねられたならこう答えよう。『旅っぽい』からだ!
そう、旅に必要なのは雰囲気とやる気!まずは雰囲気だ!
俺の現在地は本州の真ん中らへん、首都圏だが首都圏とはあまり思ってもらえていない関東のとある県だ。
そこからまずはひたすら電車を乗り継いで北を目指す。
旅人といえば場末の酒場と決まっている。
え?正反対だって?
ノンノン、俺はあえて場末をスタートにするのさ!
全ての行き着くところ、つまりは大凶に追い詰められた俺。
そこを突き破って出発してこそ、男の中の男だろう。
*
──どうにかこうにか本州の最北端の駅にたどり着いた俺は、改札を出ようとして、あることに気がついた。
金がねえ!
アイタタ、これは参ったさんだ!
近くを通りすぎてゆく善良な市民たちにかりたてるのも悪いし、また折り返して財布を取ってこようか、けれど確か残金もそんなに無かったはず。
待てよ、この駅で雇ってもらって──そんなバナナ。ムリムリだよなー。
行き当たりばったりで出かけたのが運のツキだったか……!
気付くの遅いぜ寛!
自問自答を繰り返していると、柔和な面持ちの老人がにっこりと笑って俺を眺めた。
「ご旅行かい?」
「あ、お爺さん、その、俺──」
「……あいわかった、協力してしんぜようぞ、若人」
まるで、全てを見通すような眼差し。
いつの間にか俺は、老人から目が離せなくなっていた。
そして、数秒後…
俺はわけのわからなかった老人の返答に、独り流れ着くことになる──。