回想―すべてのはじまり―
「おーい寛明、寛ー!」
「なんだよ凪……新年早々に……。俺は寝ていたいんだ……」
「新年早々だからだよ! お前去年も初詣サボっただろ? 今年は皆で行くぞー!」
「えー」
俺、寛明は入社一年目のピカピカサラリーマン。
そんな俺の初の冬休みは、幼なじみの凪によって阻まれようとしていた。
凪は昔っから言い出したら聞かない奴で……
ああ、俺は因縁のおみくじと対決することになりそうだ。
──なぜ俺が初詣に長年行かなかったか?
それは幼い頃に引き続けた大凶トラウマのため。
もう二度と元旦に大凶は引きたくないっ!
そう決意していたのだが──。
*
「だ……大凶……」
寛、どうだった?
横から覗きこんだ凪が、ふにゃりと顔を緩ませる。
「あはは、なかなか引けないよ大凶なんて。記念に取っておけ──」
「大凶……大凶大凶大凶大凶大凶…!! 俺は何度大凶を引かされればいいんだーーーっっ!!!」
「え、ちょ、ちょっと寛? 顔が仁王になってるけどどした?」
「凪!俺……俺……会社辞めるわ! んでもって今日からすぐに全国巡るぜ!」
「は……!? 辞め……? いや今日元旦だしそんなすぐには辞められないだろお前、それに全国巡るって──」
「oh、ノープロブレム! 俺はやると決めたらやる男だ!!だから全て大丈夫だ!!!」
「──どこが大丈夫なんだよ」
*
──決めた。
俺は、大凶の宿命から抜け出してやるんだ……!
そのためなら、社会のルールだろうが倫理だろうが構うもんか!
実行は早いに限る!
俺は……今日、ピカピカサラリーマンの殻を破ってピカピカANGYA−(あんぎゃ)になる……!!!
ああ、なんて清々しいんだ……!
日の光が煌めいて、俺の心もときめく、キャっ。
旅に、出るぜっ!!!