第60話 城塞都市フェルベーンに翻る極太のフラグをへし折る努力をしてみよう
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どうしてこうなった?
現在、俺様は馬車に揺られている。
ナイセーと移動に旅をしてきた馬車ではない。
まるでどこかのエリザベス様が結婚パレードに乗るような真っ白な馬車だ。屋根の無いタイプ。
その真っ白な馬車に俺はイリーナと並んで乗せられている。
前の席にはフェンベルク・フォン・コルーナ辺境伯とその奥方、間にルシーナ嬢が鎮座していた。
町の大通りは左右に人垣が出来ており、大勢の人々が人垣を作って手を振ってくれている。
俺とイリーナで教会に隔離された重篤な患者を回復して回った事を知ったのか、ありがとうありがとうと声を掛けてくれる。ありがたいと言えばありがたいのだが・・・。
「はっはっは、コルーナ辺境伯家の賓客ヤーベ殿が帰って来たぞ!」
フェンベルク卿よ、俺は帰ってきたわけではないぞ。あくまで王都に呼ばれたので向かっている途中にフェルベーンに寄っただけなんだからな。
それにしても奥様は優雅ににこにこしながら手を振っているだけだ。絵になるけど。
「皆さんご心配おかけしました! でも私ももう元気になりました。こちらのヤーベ様に体を治して頂きました!」
「「「わああ~~~~!!」」」
ルシーナは町の人々にも相当人気なようだ。
ルシーナが一時重篤だったのを知っているのか、相当喜ばれているみたいだな。
「後、私はヤーベ様に嫁ぐ事に致します~~~!」
「何ぃ~!」
フェンベルク卿が馬車で立ち上がりながら隣のルシーナをガン見する。
「「「わああ~~~!!」」」
「まあ、ステキ!」
町の人々の祝福と奥さんの笑顔が眩しい。
そしてルシーナは確実にフェンベルク卿の血を引いているな。外堀から埋めるタイプのようだ。
教育が行き届いてますね!
「ふぇぇ~、ルシーナちゃん大胆過ぎるよ~」
涙目のイリーナ。負けてますよ?
「ヤーベ殿、ありがと~」
むっ!? あれは・・・ボーンテアックのやつだな。
アイツこそが多くの命を救った英雄だと思うのだがな。
「ボーンテアック!お前の作った薬草と解毒薬は見事だったぞ!お前のおかげで多くの人々が助かったぞ!」
そう声を掛けたので、ボーンテアックの周りがざわついて質問攻めにあっていた。
はっはっは、君も英雄になりたまえ。
進んでいくと大きな教会の前に神官たちが横断幕を持ってずらりと並んでいた。シスターもたくさんの旗を振っている。
横断幕には・・・「おかえりなさい御使い様」。誰の事だよ!?
「式典の後はぜひ教会にもお寄りください!」
「我々にもう一度お導きを!」
「お待ちしております~」
シスターたちの黄色い声援に一瞬グラリとするが、横にいるイリーナが手を握る。
「ほわわわわっ!?」
痛い!何故だ!俺はノーチートだが無敵スライムボディでもあるはずなのに!?
最近のイリーナは意味不明にレベルが上がっているのか?
それにしてもこの後は領主邸までパレードして、その後領主邸で休憩、その後さらに中央広場にて領主であるフェンベルク卿自ら『城塞都市フェルベーンの奇跡』立役者である俺様に表彰と褒賞を授けるらしい。フェルベーンに到着する前にナイセーに聞いていた。
その極太なフラグを叩き折るべく、ナイセーにはいろいろ相談や提案を行った。
だが、極太フラグは俺様の提案や戦略などものともせず、優雅にたなびくのであった。
・・・悔しい。
最終的に、門から町に入る前に脱出するつもりだったのだが、まさか領主であるフェンベルク・フォン・コルーナ辺境伯自ら俺を待ち構えているとは思わなかった。
領主が町の外まで出て待ち構えているとは・・・そこまでやるか!?
ナイセーもナイセーで、パレードと式典だけはどうにもならないだろうと最初から諦め気味だった。というか、それに俺が出ないと領主の顔を潰すことにもなりかねんしな。俺の脱出の手引きを協力しろというのは元々無理がある話なのだが。
やがてパレードは領主邸までやってくる。
「皆よ、式典は午後から中央広場で行う!大勢集まってくれよ!」
「「「わああ~~~」」」
いや、何でこんなに盛り上がってるのよ。
こう言っては何だが、ヒマなのか?この町は。
「さあヤーベ殿、我が家に逗留して一息入れてくれたまえ」
「逗留って」
「午後から式典にはなっているが、今日から3日間は我が家で持て成す予定だ。ゆっくりしてくれていいぞ」
「午後から式典ってだけでゆっくり出来ねーよ」
「はっはっは、遠慮する事は無い!」
「話聞けよ!」
「ヤーベ様、さあこちらへ」
ルシーナが屋敷に案内しようと俺の手を取る。
「ヤーベ、待ってくれ」
イリーナは俺のローブの裾を握ってついてくる。
「まあまあ、みんな仲良しね」
奥さん、一言で纏めないでくださいね。
「まずはみんなで食事にしようじゃないか、さあ入ってくれ」
フェンベルク卿にも急かされ、俺は屋敷に入った。
・・・・・・
「それでは再会を祝して、乾杯!」
「「「カンパ~~~イ!」」」
俺は注がれた赤ワインに口を付ける。
「・・・うまい」
特に酒にうるさくなかった俺だが、このワインはうまいと感じた。
「そうか、気に入って何よりだ。王都から無理をして手に入れた甲斐があったというものだ」
ゲッ!そんなに貴重なヤツ?値段とか聞くとヤバそうだからスルーしよう。うん、それがいい。
その後もおいしい料理が次々と運ばれてくる。前菜らしきから始まり、メインの肉料理もおいしかった。さすがコルーナ辺境伯家といったところなのだろうな。
チラリと横を見ると、イリーナの顔が蕩けていた。
泉の畔での食事は狩りで捕って来たエモノを処理して焼いたり煮たりする料理ばかりだ。後は屋台の料理。そんなわけで、こんなに手の込んだ料理を食べるのはずいぶん久しぶりだ。
もちろん途中で宿泊した宿での食事も十分おいしかったのだが、コルーナ辺境伯家の料理はそれを凌駕するレベルにある。
特にデザートのような甘味はほとんど食べていなかったからな。甘いケーキのようなデザートを食べてほわほわしているイリーナを見ると、結構甘い物が好きだったようだ。というかこちらの世界、甘い物がほとんどなかった。多分、甘味は貴重なのか高級なのか、そういう事なのだろう。イリーナには悪い事をしたような気がしてきたな。王都ならおいしい甘味もあるんだろう。イリーナに何かデザートでも買うとしようか。
「・・・ん?どうした、ヤーベ?」
「いや、おいしそうにデザートを食べるなと思って」
「あ、いや、恥ずかしいな。甘い物はずいぶん久し振りな気がしてな。途中の宿で食べた料理ももちろんおいしかったのだが」
「じゃあ、俺のデザートも食べていいよ」
「ふえっ!? で、でも・・・」
「いいんだ、イリーナがとても幸せそうに食べているからね」
「あ、ありがとう・・・」
そう言って俺のデザートの皿をイリーナの前においてやると、喜んで食べ始める。
ニコニコしたイリーナの顔を見るとこちらも幸せになりそうだ。
「ヤーベ様、少し嫉妬してしまいそうですわ」
にっこりしながら、ルシーナが俺を見る。
「ああ、いや、普段はろくなものを食べていないのでね。やはり甘い物は女性にはたまらないご褒美なのかな?」
「クスクス、そうですわね。王都で珍しい甘味のお菓子などが手に入りますと、私も子供の様にはしゃいでしまいます」
笑顔を絶やさず、快活に話すルシーナを見ていると、こちらまで元気になりそうだ。
やはりルシーナは良い娘だ。
「で、ヤーベ殿、この前はどうして急にいなくなってしまわれたのだね?」
食事が終わり、最後のドリンクを飲みながらフェンベルク卿が俺に問いかける。
そんなんお宅の囲い込み作戦が嫌やってん!・・・と言えたらどんなにいいか。
「はっはっは、急用を思い出しましてな」
気分的には額の汗を拭いたいところだが、残念ながら俺は汗をかかないのだ。
「ヤーベ様、お気になさらずに。ちゃんと父には伝えておきました。ヤーベ殿を勝手に縛り付けるような真似をすると御不興をかってしまいますよと」
「や、これはルシーナ嬢にも気を使わせてしまい恐縮です」
ぺこりと頭を下げる。少し他人行儀にしておかないと、この連中グイグイと距離を詰めてくる。
「まあ、そんな他人行儀な言い回しは不要ですわ、ヤーベ様」
両手を組んで胸の前に置き、哀願するような表情で距離を詰めてくるルシーナ嬢。ほーらね。
「ヤーベ殿にはすまない事をしたようだ。出来ればこの地にとどまり、我が部下として・・・いやいや、我が身内としてその力を振るってもらいたいと思っていたのでな・・・。少し先走りし過ぎたようだ。気に障ってしまったのなら申し訳ない」
フェンベルク卿が俺に頭を下げる。さすがにそれはマズイ。
「いやいやフェンベルク卿。俺に頭を下げる必要なんてありませんよ。
ただ、いろいろとありまして、ご要望に沿えないこともありますのでね。そのあたりは申し訳ないとは思うのですがね」
「いやいや、そう言ってもらえるだけでもありがたいよ。君と交友が結べるだけでもありがたいんだ」
そんなに俺とのつながりがありがたいもんかねー。ローブを被ったままの怪しい男ですがね。
「それでは、場所を移して王家からの要請内容を説明しよう。その後は式典に出て頂く」
「あ、それは確定なのね・・・」
がっくり肩を落とす俺だが、ふと気づく。
「ん? 要請内容を説明?」
俺が首を傾げて聞く。
「うむ、王より賜った要請内容だ」
え・・・、王城に行って王の前で挨拶するだけじゃなかったんかい!?
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