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閑話77 ゲルドン、暁に死す!(前編)

クリスマスSSも間に合わず・・・

だが、これだけは!

やります! 今年もなんとか年またぎゲルドン祭り!

だが、ゲルドン祭りはこれが最後か!? タイトルは『ゲルドン、暁に死す!!』

さらば、ゲルドン!!



バキィ!


いきなりゲンコツでぶん殴られて吹っ飛ぶ小太りなおじさん。


「ふざけるんじゃあないよ! このスットコドッコイ!!」


ぶん殴られて吹っ飛ばされたのはデュグラント皇国の宰相の座についているモーブ。

口から血を流しながらよろよろと起き上がる。


「ですから、それは誤解なのですよ・・・」


「なにが誤解なもんさね! あの子をオークの慰み者に突き出しておいて! それであんたたちは安寧を買ったってのかい! ええっ!!」


まさしく、怒髪天を衝く、とはこのことか。

ガタイのいい老婆が肩を怒らせて一国の宰相を殴りつけた挙句怒鳴りつけている。


「まあまあお義母さん、説明しますから・・・」


及び腰で両手を突き出しながらまあまあ、というか、どうどうと抑えようとしているのはデュグラント皇国ブーナン・ディア・デュグラント皇王その人だ。

その横では頬に手を当ててあらあら困ったわねぇと王妃テンネー・ディア・デュグラントも困り顔だ。


「あらあら、お母さん少し落ち着いてくださいな」


「これが落ち着いていられるかいっ! アンタ達も自分の娘を売って皇国を生き延びさせていることに何とも思わないってのかい!」


「ひいいっ!」


皇王の胸倉をつかんで持ち上げるオババ。

人が人なら、間違いなく不敬罪で死刑もあり得るこの状況。

だが、このデュグラント皇国おいて、このオババに頭の上がる者は一人としていない。

そう、皇王でさえも。


なぜなら、前皇王を女性ながら勤め上げた、現在の王妃の母である、モイコーミ・ディア・デュグラント。ちなみにゲルドンの妻である元デュグラント皇国第一皇女マリアンの祖母に当たる。


つまりは、モイコーミはオークであるゲルドンにかわいい孫のマリアンを売ってデュグラント皇国の安寧を図ったと思っているのである。


問題なのは、モイコーミが言っていることは何一つ間違っていないという事である。

そして、通常オークに輿入れなどと言えば、まず間違いなく悲惨な運命が待っているという事だろう。

どんな説明をしても、オークと結婚しても大丈夫などという世迷言は信用されないだろう。


「何としてもそのオークをブチ殺してマリアンを救い出す!」


「いや、とにかくお義母さん話を・・・」


「ああんっ!!」


「ひいいっ!」


腰を抜かした皇王を尻目に、モイコーミは部屋を出て行った。






「それで、どうよ? 新しい生活は?」


「だいぶなれてきただよ。やっぱ自分の家っていいもんだべな」


王都のヤーベの屋敷。

久々に顔を見せたゲルドンはヤーベの執務室にて近況を報告していた。


元々、結婚したゲルドンだったが、まともに生活できずヤーベの屋敷に居候中だった。

だがしかし、いつまでも妻二人を連れたまま居候というわけにもいかず、幾人もメイド、家人を雇い、やっとゲルドン男爵邸が回るようになったのである。

そのため、ヤーベ邸を出てゲルドン一家は引っ越しを済ませてゲルドン達だけで生活を始めていた。


「いや~、改めて自分の家だと、新婚気分が戻って来てウキウキルンルンだで」


「いや、それは知らんし」


なんで俺がゲルドンののろけ話を聞かにゃならんのだとヤーベが顔を顰める。


「それで、生活習慣を見直せって話は?」


「ああ、それなら、早寝早起きがイイって指導だっただで、今は早起きして薪割りしてるだよ」


「薪割り?」


「そう、暖炉で使うだけじゃなく、木彫りも趣味だで」


ゲルドンがにっこりする。


「ああ、健康的で何よりだね」


「それじゃ、おでは自宅に帰るだよ。そのうち遊びに来てくれだで」


「誰が建てたと思ってんだよ。その家」


「大工さんだで」


ゲルドンの返しにヤーベはこめかみに青筋が浮かぶ。


「住宅ローン今すぐ取り立ててやろうか?」


「おっと、それはカンベンだで」


おどけながらゲルドンがヤーベの執務室をそそくさと出て行く。


「まったく・・・さて、どうしたものか」


ヤーベは執務机の上に広げていた手紙をクシャリと握りしめた。






「ここがヤツの(やさ)かい。随分と羽振りのいいこったね」


「はっ! 間違いありません。ここ数日は同じような生活を送っております」


ゲルドンの屋敷が遠目に見下ろせる木の枝の上でモイコーミとその部下が話していた。


「もうすぐ夜が明ける。ヤツは間違いなく玄関からでて裏手の庭で薪割りをするんだね?」


「ええ、ここ数日同じ行動です。というか・・・オークが堂々と家から出て来て薪割りする姿が今でも信じられませんが・・・」


「可哀そうなマリアン・・・もうすぐこの地獄から助け出してやるさね」



ブウン。



モイコーミの腕に魔力で出来た長細い何かが現れる。


「スキル『狙撃』。その脳天ザクーロの身の様に木っ端微塵に吹き飛ばしてやる!」


「モイコーミ様のスキルはいつ見ても不思議ですな・・・。弓でもなく、長細い筒から魔力の弾が発射され、対象は吹き飛ばされる・・・恐ろしいものです」


「だが、今ほどこの『狙撃』スキルに感謝したことはないさね。あのヤーベといった辺境伯の屋敷周りは狼がウロウロしていて近づけたもんじゃなかったからね・・・。それに比べてこの屋敷はロクな警備もなくて助かったよ・・・と、来たね」


モイコーミの見つめる先、屋敷の玄関が開き、オーク(・・・)が姿を現した。


「あばよ、クソッタレなオーク野郎! アタシの可愛い孫娘を返しな!」



ドパ――――ン!!



派手な音が鳴り響き、屋敷から出て来たオークの頭はまさしくザクーロの身が弾けるように木っ端微塵に吹き飛んだ。


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