投稿3年半記念 ヤーベ、異世界に召喚される ①
初投稿からすでに3年半もの時間が過ぎました。
ここまで続けられているのも一重に皆様にお読みいただけているからにほかなりません。
どうぞこれからもよろしくお願い致します。
投稿3年半記念(中途半端!)ヤーベ、異世界に召喚される、を数話お届けします。
お楽しみに!!
バキッ!
金髪の小柄な少年は殴られ、吹き飛んで朽ちた木箱のゴミ入れを壊して路地裏に転がった。
「ギャハハッ! ザコはよぇーなぁ! ザコはよ!」
「なんたってビットは召喚士として、クズ中のクズだからなぁ!」
「そうそう! だってオメーの召喚できる召喚獣は『スライム』だもんなぁ!」
ビットという小柄な少年に暴力を振るい、大声で笑う三人組。
「あうっ・・・」
壊れた木箱の残骸を払い、ビットと呼ばれた少年が起き上がろうとした。
「早くだせよぉ!」
「ぐあっ!」
右手を踏みつけられ、握っていた銅貨3枚がこぼれる。
「はっはっは、これはもらっていくぜぇ!」
ビットの手からこぼれた僅か銅貨3枚。
これはFランク冒険者であるビットがまるまる1日ドブ浚いの掃除を請け負ってやっと手に入れた報酬だった。
だが、この3人は銅貨3枚が欲しかったわけではない。ただただビットを甚振ってビットへの嫌がらせが目的であった。
「ぐっ・・・くそぉ! くそぉ!」
泣きながら悔しがるビットを見て3人はさらに下卑た笑いを上げる。
「ぎゃはははは! ビット! オメーはスライムしか召喚できねーザコなんだよ! <召喚>!」
その男が召喚と叫ぶと、地面に召喚陣が浮かびあがり、1匹の狼が姿を現す。
「俺様の召喚獣<森の狼>だ! テメーの喉笛嚙み切らせてやろうか? お前の最弱召喚獣のスライムじゃあ俺の<森の狼>の一撃で木っ端微塵だぜ!」
「<召喚>!」
「<召喚>!」
残りの二人も召喚獣を呼び出す。
<大地の魔鳥>に<大鼠>。どの召喚獣もランクEに指定される実力である。召喚獣はランクSを筆頭に最低をランクFと分類されている。彼らの言う、最弱の召喚獣、スライムはもちろんランクFに分類されている。
「この世界はどれだけ強い<召喚獣>を召喚できるかが全てだ! お前は最弱の召喚獣<スライム>しか召喚できねぇ! つまりはこの世界で生きる価値のない雑魚なんだよ!!」
ビットは悔しかった。
人は誰しも10歳になると、教会で洗礼を受ける。
その際に召喚術を授かることができる。だが、その召喚術で召喚できる召喚獣は誰しもが一種類だけだった。その召喚獣のランクで人生が決まると言っても過言ではなかった。
その<召喚術>において召喚できる召喚獣がランクFのまさに最弱であるスライムだった時のビットの絶望は計り知れないものだった。だが、実際の絶望はその後に訪れた。
結婚を約束していた幼馴染からは見捨てられ、両親からも家を追い出され、路上で生活しながらFランク冒険者としてその日を生き延びるためだけに生きてきた。それでも周りの人間からの蔑み、嫌がらせは多かった。
「こんな・・・こんな世界っ!! 消えてなくなってしまえばいい―――――!!!」
ビットは心の奥底から叫んだ。この不条理な世界が、消えてなくなってしまえばいい・・・そう思った。
「あああ~~~~~、仕事終わらね~~~!!」
ヤーベは執務室のデスクに書類ごと突っ伏した。
「いやいや、書類仕事多すぎませんかねぇ~~~~!」
ここは神都ヴィレーベでも、バルバロイ王国王都バーロンにある屋敷でもない。鉱山都市マーロの領主邸執務室である。
ミスリル鉱山のミスリル採掘量が右肩上がりで増えているのに加え、ドワーフの腕利き鍛冶師ゴルディン師の弟子たちが大量に移住してきて、ミスリル加工に精を出している結果、非常に質のいいミスリル武具が生産され、ミスリルを使ったアクセサリーも非常に高いレベルで生産されている。その売り上げも右肩上がりであった。
仕事が忙しいので、新しい奴隷の補充作業も続けており、その処理も膨大になっている。
その上、東の領地から難民が押し寄せ、その対応にも追われている。
なぜかこの日に限って奥さんズの面々はヤーベの元へ訪れることはなく、リーナも姿を見せていない。誰にも書類作業を手伝ってもらえないヤーベはついにキレた。
「やってられっけバーロー!」
ついに書類を宙にぶちまけ、デローンMk.Ⅱの姿に戻ると、執務室の奥にある簡易ベッドにダイブした。
「もう寝る~~~~~!!」
だが、ふかふかのベッドにダイブしたヤーベが布団にくるまれることはなかった。
ベッドに金色の魔法陣が急に浮かび上がり、まぶしい光がヤーベを包み込んだのである。
キィィィィィン!!
ビットの魂の叫び。
その時、金色の魔法陣がビットの足元に浮かび上がったかと思うと、その魔法陣が大きく拡大していき、まぶしい光が溢れだす。
「な、なんだ!?」
「どうなってるんだ!?」
「うわあっ!?」
3人がまぶしい光に目を開けられなくなる。
バキバキバキッ!! ドスン!!
「イッテェ!!」
ビットの後ろ。
先ほどビットが殴られて吹っ飛ばされ突っ込んだ木箱の残骸の上に見たことのないキモチワルイ魔物の姿があった。
「・・・な、なんだあれ・・・」
「ま、まさか・・・」
「まさかのスライム!?」
そう、ビットの後ろに現れた魔物・・・。
それはまさに3人が見たこともない形のスライム。
まさしく、異世界に召喚されたらまさかのスライムだった件・・・であった。
「ココ、ドコ!?」
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