投稿500話達成記念 リーナの成長日記⑦ 戦隊ヒーロー、リーナ発進!
・・・あれ? 投稿日がおかしく・・・なってる?
「・・・・・・」
リーナは絶望に包まれていた。
絶句して呆然としたまま言葉も出ない。
リーナの手に握られているもの・・・。
それは、リーナがローガとともに謎の覆面少女として王都の悪党たちを俵積みにしてきた活動中、ずっと相棒として使用して来たマスクであった。
「・・・・・・」
だが、リーナは手に持った自作のマスクを手に持ったまま微動だにしない。
「おや、リーナここにいたのか・・・どうかしたのか?」
自室に戻って来たヤーベだが、なぜか自室のベッドに腰かけて呆然と座っているリーナを見つけたため、声をかけた。
どうやらリーナは手に何かを持っていた。
「・・・ん、これリーナが王都で悪党どもを退治する時に被ってるマスク?」
リーナの手に持たれていたのは自身が王都で悪党を退治するときに被っていたリーナお手製のマスクだった。
顔にハートのアップリケを縫い込んだマスクは、最初目、鼻、口を出す穴もなく、自分で装着する際に窒息しかかっていたのだが、メイド長のリンダがそれを見つけ、一緒に修正。結果顔半分を覆うハーフマスクが完成していた。
そのマスクがズタボロになっていた。
「・・・どうしたんだ? そのマスク」
「ふぇぇ・・・」
リーナが目に涙をいっぱい溜めてヤーベのお腹に抱き着いてくる。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
「何があったんだい?」
頭を撫でながらリーナに何があったかヤーベは話を聞いていった。
「ふおおっ! 悪党はまとめて俵積みなのでしゅ~~~~!!」
王都のある裏通り。
十名以上の窃盗団をなぜかたまたま見つけてしまったリーナとローガは、見事に盗賊団を捕縛し、魔法のロープでそれぞれ縛り上げると、俵積みにして行った。
「キヒヒッ!」
「危ない! リーナ殿!」
ローガの声に鋭く反応したリーナが悪党の俵積みをやめ、その場を飛ぶように離れる。
リーナ自身、精霊たちの加護を受け、精霊魔法のトレーニング中でもあった。
今は風の精霊の力を使い、素早く宙に舞い上がって難を逃れていた。
攻撃してきたのは、全身に刃物を仕込んだような服を着た男だった。
「ウヒヒッ! 今宵の生贄はぁ、幼女幼女~キヒヒッ!」
「おおう、すさまじく気持ち悪いのでしゅ!」
「貴様、先日通り魔事件を連続で起こした切り裂きジョイスだな!」
リーナを襲った刃物を持った男の正体をローガが看破する。
「むむっ、悪党間違いなしでしゅ! 俵積みの刑に処すのでしゅ!」
とはいえ、リーナは精霊魔法の勉強中であり、元々悪党を捕縛する意思はあっても相手を殺す意思はない。そんなリーナが殺人鬼のような男を相手にするのはいくらなんでも危険であると判断したローガはヒヨコに連絡を取った。
『ピピピィ!(援護します!)』
本日のリーナ護衛担当だったヒヨコ十将軍序列七位のカラールが部下を引き連れて切り裂きジョイスの牽制を行い、リーナへの気をそらす。
「ヒャハッ!?」
目の前を塞ぐ様に飛び回るヒヨコに意識がそがれる切り裂きジョイス。
その隙をリーナは見逃さなかった。
「闇よ! 敵を拘束する呪縛となれ! <闇呪縛鎖>!!」
リーナの両手から闇の縛鎖が飛び出すと、切り裂きジョイスをぐるぐる巻きにして拘束した。
「ぐわわっ!?」
「むふー! リーナ大勝利なのでしゅ!!」
王都を震撼させた切り裂きジョイスを捕縛するという大手柄を立てたリーナ。
早速魔法のロープで縛りなおして悪党の俵積みの一番上に乗せようとした。
切り裂きジョイスの服装は刃物が仕込まれた危険な物であったが、そのような刃物に負ける魔法のロープではなく、切れて逃げられるようなことはなかったのだが・・・。
「よいしょっと、でしゅ!」
ドスン!
担ぎあげて一番上に俵積みした切り裂きジョイス。
だが、服装から出っ張った刃物が他の悪党たちに刺さってしまい、下の悪党が暴れ出した。
「ぐわっ!」
「痛ェ!」
「ふおおっ!?」
ゴロゴロドサドサ!!
なんと俵積みした悪党たちが暴れてしまったため、リーナも巻き込まれてしまった。
「リーナ殿!」
あわててローガが崩れて転がっている悪党どもを蹴散らし、リーナを助け上げた。
リーナにケガはなかったのだが、切り裂きジョイスのトゲトゲの服装に引っ掛かったのか、かぶっていたマスクが引っ掛かり敗れてしまったのだった。
「ふええぇぇぇぇん」
めそめそとヤーベのお腹に顔を埋めて泣いているリーナの頭をなでなでする。
それにしてもリーナの顔に傷がつかなくてよかったとヤーベはホッとしていた。
そして、リーナがそんな危険な連中とやり合うようになってしまったことに溜息を吐く。
どうせリーナに危険な事は辞めろと伝えても、きっと誰かを守るためにリーナは敵の前に立つのだろう。
「・・・・・・」
そんな時、ヤーベの脳裏に一つの名案が浮かんだ。
イメージは今はイリーナが使う、<勝利を運ぶもの>だ。
ヤーベは自身のスライム細胞を与えて、変身できる鎧を準備しようと考えた。
「よし、リーナにとっておきのプレゼントをしちゃうぞ!」
「ふおおっ!? 何でしゅかご主人しゃま!!」
急に目をキラキラとさせて埋めていたお腹から顔を上げるリーナ。
そのリーナの手を取り、左手の中指にスライム細胞で作った指輪をはめる。
「ふおおっ!? ご主人しゃまからのプレゼントでしゅ!」
嬉しそうに飛び跳ねるリーナにヤーベは指輪の説明をしていく。
「変身っ!!って言ってごらん? 手はこうでね、足はこうして・・・」
ついでにポージングも決めるヤーベ。
「ふおお~~~、変身でしゅ!!」
ピカ――――!!
「ふおおっ!?」
リーナがポーズを決め、変身と口にすると指輪からきらめく光が溢れだす。
にゅい~ん、ジャキン、ジャキン!
「ふおおおおおっ!?」
リーナの顔半分を覆うマスク、頭には輝くサークレット。耳の後ろには小さな翼が飾られている。マントに、鎧、手甲に靴。
フル装備で変身したリーナは大興奮である。
「すごいでしゅ! すごいでしゅ! ご主人しゃまありがとうなのでしゅ!!」
「気を付けて遊ぶんだよ?」
ヤーベはあくまでもヒーローごっこの延長でアイテムを渡していた。
だが、この光景を覗き見ている者がいたのである。
「ぬおお~~~、なんじゃあれは!? すごくかっこいいのじゃ! わらわも欲しいのじゃ欲しいのじゃ!」
リーナの変身姿をのぞき見していたのはちみっこ魔王アレーシアであった。
ちなみに泣きつかれているのは魔族執事のセバスティールではなく、リビングで本を読んでいた<古代竜>のミーティアであった。
「やかましい! そんなに欲しければヤーベ自身に頼めばよかろう! 我はそんなものいらぬわ!」
読書を邪魔されて些か機嫌の悪いミーティアは自分に縋りついてくるちみっこ魔王アレーシアに辟易していた。
「わらわが何か言うとあの男すぐに折檻するのじゃ! わらわには理不尽なのじゃ! 危険な男なのじゃ!」
ヤーベの理不尽さを喚きたてるアレーシアだったが、ミーティアは知っている。そのほとんどはちみっこ魔王アレーシアが悪戯したり常識はずれな行動をしてヤーベに怒られていることを。
「頼むのじゃ~~~! わらわも欲しいのじゃ! かっこよく変身したいのじゃ~~~!!」
「あ――――うるさい! 仕方のない奴じゃ! ついて参れ!」
あまりのうるささに読んでいた本を乱暴に閉じたミーティアはソファーからぴょんと立ち上がると、ヤーベの執務室へと向かった。
そして後の日――――
「悪党どもは許しゃない! 愛と正義を胸に戦う、美幼女戦隊ローガライダー、クリムゾンレッドのリリィなのでしゅ!」
悪党どもを足元に見ながらローガの背に跨って完全武装したリーナが名乗りを上げた。
「わらわはターコイズブルーのアリィなのじゃ!」
こちらも完全武装したちみっこ魔王アレーシアがローガの部下の背中に跨って嬉しそうに名乗りを上げる。
「・・・我はブリリアントグリーンのミリィじゃ・・・って、なんで我までこんなことをせねばならんのじゃ――――!!」
嬉々として名乗りを上げるリーナとアレーシアとは違い、幼女枠として巻き込まれた<古代竜>ミーティアの慟哭ともいえる叫び声が響いた。
そしてこの後、愛と正義を掲げる幼女3人組が狼牙を駆りながら王都を駆け巡り悪党どもを退治して行くという話がまことしやかに広がっていき、吟遊詩人たちにも歌われるようになっていくのであった。
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