第395話 今後の関係は穏やかに話し合おう
お待たせいたしました。
「・・・粗茶ですが」
とりあえず話し合い?を行うためリーナの両親の自宅に場所を移した。
リーナの母親のリルシーナさんが全員の前にティーカップを置いていく。
このメンツ相手に手を震わせることもなく見事な給仕だ。
・・・さすがに顔色は悪く冷や汗をかいているようだが。
ちなみにリーナパパであるドルーガさんは顔も見せない。
・・・根性なしだな。
「いや~~~、アナスタシア様がこれほどのお方と誼を結ばれているとは、偏にこのセバスティール感服致しましたぞ」
噴き出る冷や汗?をハンカチで拭き拭きしながら執事さんであると思われるセバスティールが先ほどから全力で俺をヨイショ?してくる。
俺の隣に座っているアナスタシアも苦笑いだ。
「ああ~ん? おいジジイ、なんでこんなもやしみたいな野郎にヘコヘコしなくちゃなんねーんだよ?」
「ねぇ~、それより人間界ってチョー美味しいお菓子があるんでしょ? スイーツ食べつくしに行きたいわ~」
「惰弱な連中など相手をするまでもないだろう? さっさと殲滅してより良い環境下で我らの王国を復興させねば」
そんな気苦労している執事セバスさんの横でブツクサ文句を言う3人。
誰かしらん。まだ挨拶もないし。
(お前らいい加減にしとけよ! マジでぶっ殺されるぞ! 比喩でもたとえでもなく、マジで塵芥にされかねんのだぞ! 命が惜しかったらちょっと黙っとけ!!)
ソッコーで3人の胸倉をつかみ小声で何かを話している執事セバスさん。
なんだか人の管理も大変だな。
俺は先ほどの事を思い出す。
時は少し遡る――――
デスベアーに指示を出して次元の扉がこれ以上開かないように止めたのだが、魔王を自称するお子様が出てきた後に出て来ようとしたダンディーな執事さん風の老人が途中で挟まってしまった。なんだがアナスタシアに忠誠を誓うとか臣従するとか、そんなことを言ったような気もするが。
「それはそうと、ちょっと挟まって抜けない状態でして・・・すこーしだけ次元の穴を広げていただけると助かるのですが・・・」
「え~~~、広げたら魔界から666種の部下が押し寄せてくるんでしょ? 面倒だから、逆に穴をふさいじゃったほうがいいんじゃないかなぁ」
俺は顎に手を当てて考える。
「いや、そうすると私の体が真っ二つになってしまうわけで・・・」
「そこはしょうがないってことで」
「しょうがなくないですよっ!?」
涙目、というよりはもう泣いているように見える執事さん。
「後続の仲間たちには私の方からよーく言い聞かせますから! ねっ! お願いしますよ!」
必死だなぁ、執事さん。
「仕方ない、デスベ・・・シリよ。次元の穴をちょっとだけ広げてやれ」
「誰がシリじゃ! 後言い直したがデスベアーでもないわ!」
「いいからはよやれ」
デスベアーが両手をぶん回して文句を言ってくるがスルーの一択だ。
「わらわはシルヴァリーじゃ! いい加減覚えぬか!」
ブツブツ言いながらもシルヴァリーが両手を次元の穴に向ける。
大量に魔力を補充してやったからな、シルヴァリー単独でも次元の穴をコントロールできるようだ。
「おおっ! 助かりましたぞ!」
次元の穴から落っこちて地面で腰を打ち付けたのか、腰をさすりながら執事セバスさんがお礼を言ってくるのだが。
「やっとこっちに出られたぜ、何やってたんだよ」
「スイーツ~! スイーツどこ~~~?」
「悲願である我らの王国を築く第一歩だな」
2本の角が生えた浅黒い長髪のイケメンと、なんだが艶めかしい緑のロングヘアーな女性、そして一番背が高く、少し赤系の肌の色をした身長2m以上ありそうな大柄な赤い髪で額に小さめの角が1本ある女性。そんな3人が次々と次元の穴から出て来る。
さらに明らかに魔物?系の大柄な生物が次元の穴から顔を見せた。
「しまった!!」
執事セバスさんはばね仕掛けのおもちゃの様に跳ね起きると、その魔物に思いっきりパンチを食らわせ、次元の穴の向こうへ押し返した。
そのまま上半身を突っ込んでなにやら大声で怒鳴っている。
怒鳴っているようなのだが、次元の向こうなせいか何を言っているかは聞き取れない。
やがて次元の穴から上半身を戻して、俺たちの前に戻って来る執事セバスさん。
「お恥ずかしいところをお見せしました・・・それではアナスタシア様への従属の件、詳細を詰めさせていただきたく・・・」
まだ二段にできたたんこぶをさすりながら涙目の魔王アレーシアを連れて話し合いがしたいと執事セバスさんが説明し始めたのだが、新しく出てきた3人は当然その話を聞いていないため、それぞれが勝手に行動し始めようとした。
「お、なんだ? 人間いるじゃん。とりあえず殺しとくか?」
「スイーツ~、スイーツどこよ~?」
「ふむ、ずいぶん山の中だな? もっと広い場所でないと王都の建設なぞままならんな」
ドカッ! バギッ! ベシッ!
あっという間に3人が叩きのめされ、殴られた額から煙が噴いていた。
「本当に部下の教育が鳴っておらず恥ずかしい限りです・・・」
恐縮する執事セバスさんに俺はとりあえず場所を変えてお茶でも飲みながら話そうかと提案したのだった。
そんなわけで、3人の胸倉をつかんでいた執事セバスさんが再度俺の正面に座りなおす。
ちなみに、俺の隣にはアナスタシア。反対側にはカッシーナが座っている。
他の奥さんズのメンバーも同席したがったが、一応リーナの面倒を見てもらうという建前で別の部屋で待機してもらっている。
そして俺の座るソファーの後ろにはゲルドンとレッドが立っている。
(おでたちにはソファーどころか椅子も与えられんだて)
(オラたちも座りたいだよ)
後ろに立つ二人がブツクサと文句を言っている。
(お前ら、俺たちの護衛役だってこと忘れてないか? 文句あるなら給料差っ引くぞ?)
((Sir! Yes! Sir!))
急にビシッと背筋を伸ばして敬礼する二人。
何せこの二人は雇われだからな。
俺の事をビッグボスと呼ぶがいい。
「だけどよ~、ソイツの力もわからね~のに絶対服従とかさすがにねーだろ~?」
「スイーツ~」
「我らが王国の復興に必要な王たる資質を証明するがいい」
「お前ら~」
執事セバスさんが横に控える3人を睨む。
「ところでそちら誰?」
話がすすまなそうなんで、俺から聞いてみた。
「ああ、この者たちはですね・・・」
ドカリッ!
「俺様は魔王軍戦士団長エギゼグル! 気に入らねーヤツはぶっ潰す!」
いきなりテーブルに右足を乱暴にのっけて中指立ててまくし立てるバカを俺は触手でぐるぐる巻きにする。
「モガッ! モガッ!」
「で? そちらさんたちは?」
即触手でぐるぐる巻きにされた後後ろで転がされている同僚を唖然と見つめていた二人が慌ててこちらを向く。
「魔王国魔導師団団長のトゥルーフィアを申します~、こちらには美味しいスイーツを食べに来ました~」
「魔王軍亜人装甲師団隊長マイラ・アドモスフィアだ。こちらには我らの王国建設を目指してやってきた」
魔導士風のエロチックお姉さんと、赤膚の大柄なお嬢さんはそれぞれ目的があったんだなぁ。
「じゃあとりあえずオススメスイーツ食べる?」
そう言って俺は亜空間圧縮収納から出来立てほやほやのホットケーキ3段を取り出し、テーブルに置いた。
「ふああっ!? なにこれすっごく甘い香りがする! それにあったかい!?」
「されにこれをかけるとうまさ倍増」
そう言って再び亜空間圧縮収納から取り出したのはもちろん蜂蜜のビン。
俺はビンの蓋を取ると蜂蜜をたっぷりホットケーキの上にかけてやる。
そしてナイフとフォークを並べてやった。
「食べていーの!?」
「どうぞどうぞ」
「はむっ!!」
どうぞと進めてやると、待ちきれないとばかりにナイフで切り分けフォークで突き刺したホットケーキを一切れ口に運ぶ。
「おいしぃぃぃぃぃぃぃ!! あま~~~~い!!」
フォークを口に咥えたまま恍惚の表情で絶叫するトゥルーフィアさん。お気に召して何より。
「ずるいのじゃあ! わらわも食べたいのじゃ!!」
ホットケーキを出してからずっと指をくわえて涎を垂らしていたお子ちゃま魔王が騒ぎ出す。
うーむ、とりあえずホットケーキで世界の平和が守れそうだな。
体調不良でパソコンの前にしばらく座ることができませんでした。
(座れないと言っても痔ではありませんが(^^;))
季節はもう冬の到来といったところでしょうか。コロナは収まりつつあるようですが、皆様も体調には十分ご留意ください。
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