第390話 『歌姫』の歌を聞いてみよう
秋のまさスラ祭り、第三夜をお届けします!
秋の夜長は~って、もうすぐ朝だぞ!というツッコミは甘んじてお受けします。
遅くなってスミマセン。
「それはそうと、ボク以外にも召喚に巻き込まれた女の子がいたんだよ」
「それはそうとできない。なんとかコ〇・コーラの完成を・・・」
「いや、ヤーベ待つだよ。ユタカの他にまだ異世界召喚者がどこかにいるだか?」
俺の肩を抑えてゲルドンが話を進めようとする。
俺のコ〇・コーラ・・・。
「うん。ボクと同じくらいの年の女の子だったはず。彼女も戦闘スキルが全くなくて、ハズレって呼ばれてたから」
勝手に呼んどいてハズレとか、本当にヒデーな。
でも、この国の王様や宰相はそれほどひどい人物じゃなかったんだよな。
魔王対策で勇者呼び出しのための異世界召喚許可を出していただけのような感じだ。
となると、それを執り行っていたヤツがいるか。
・・・ま、それは後回しだな。さっさと王都を出発してリーナの村にたどり着いて魔王対策せねば。
翌日。
いらないと言ったのだが、王様よりイカン=セカイショー王国騎士団の護衛がつけられた。
1日移動したところに第二の街ジャレドがあるとのこと。
山からとれる鉄鉱石で製鉄を行っているため、それなりに賑わっているらしい。
ちなみにイカン=セカイショー王国の大きな町は王都と第二の街ジャレドの二つだけらしい。田舎だな。
「ジャレドへの行軍なんて、チョーラッキーだよな!」
「ああ、噂の歌姫の歌が聞けるかも!」
「てか、俺は絶対に歌姫の歌を聞きに行くぜ!」
・・・なんだろう、とても仕事熱心な騎士達には見えないんだが。大丈夫だろうか、この国。
「それにしても、王城や城下町にはいなかっただな、もう一人の召喚された女の子」
ゲルドンが心配そうにつぶやく。
一応王様に事情を話し、そんな少女がいなかったか確認してもらったのだが、あまり時間もなかったこともあり、その所在はわからなかった。どこかで無事でいてくれたらいいのだが。
まあ、イカレ勇者たちみたいに暴れていたらもっと情報が上がっているだろう・・・悪い意味で。
騎士団の連中に囲まれながら馬車で出発する。
予定では日が暮れる前にはジャレドの街に到着するとのこと。
「・・・まわりの連中、いない方が早く着くのではないべか?」
レッドが俺に問いかけて来る。
その通りだが、無下に断れない、というか、断ったのにトルイーヌ国王にぜひにと押し付けられたのだから仕方がない。
後、カトリーナ公爵令嬢にめっちゃお見送りされた。
手作りクッキーなんか差し入れてもらってしまった。
途中でお腹がすいたら召し上がってくださいね、だって。
かわいいけど、遠足かな? これから魔王対策に出かけるんだけどね。
途中、猪や兎の襲撃に騎士団がわちゃわちゃやってたけど、なんとか予定通りに第二の街ジャレドに到着した。
「さあ歌姫の歌を聞きに行くぞー!」
「俺、歌姫ちゃんに花束プレゼントするんだ」
「あ、お前抜け駆けっ!」
いや、いいんだけどね。最初にいらないって言ったの俺の方だし。
だけど、ぜひにって押し付けられて護衛、案内しているはずなのに、メッチャ俺たちより歌姫なんだけど。
町の中心部にある宿に向かって進んでいると、中心部の大広場に大勢の人が集まっているのが見えた。
「あ、歌姫アンナちゃんだ!」
「アンナちゃ~ん!」
「アンナちゃん最高!」
騎士団の連中が大広場に向かって走って行く。
・・・まだ宿に到着してないんだが。
「おー、元気な連中だでな」
「そんなにアイドルがいいだべな?」
ゲルドンにレッドが騎士団に寛容だな。
もしかして地球時代にアイドル追っかけとかしてたかな?
俺は後続の馬車の方に向かうため、馬車を降りる。
後ろの馬車は奥さんズの面々が占拠している。
なんでも女子会トークで盛り上がるらしい。たまにはいいよね。
馬車の扉を開けてステップを降りた時、歌姫とやらの歌う声が聞こえて来た。
「世界に~二つだけの~」
ズドドッ!
「ありがたみ薄ッ!?」
花は世界に一つであれ!
俺は慌てて大広場の方に視線を向ける。
ゲルドンやレッドも歌詞に気づいたのか馬車から身を乗り出して様子を伺おうとしている。
「マリ~シルバ~」
「金より銀!?」
「カンシャ!カンゲキ!アメ!アラレ!」
「別に普通だった!?」
「あし~たもある~さ、明日もある~」
「『も』って言っちゃったよ!?」
「ヤーベ、メッチャクチャでねぇだか?」
「人これを丸パクリと言う」
「まあ、丸というか、一部改ざんというべか・・・」
俺とゲルドン、レッドがため息交じりに見つめあう。
「ああ、彼女がボクと一緒に召喚された女の子だね」
「あ、やっぱり?」
俺たちと一緒に行きたいと同行を申し出たユタカが歌姫を見て確認する。
まあ歌ってる歌詞からして間違いなく地球から来た日本人だろうけどさ。
「牧原アンナ、17歳です!」
なんかマネージャーみたいな宿の親父を説得して歌姫と会談の場を持ったのだが、のっけから間違いない自己紹介をもらった。
「新曲聞いてください! 愛の歌探して、勇者たちへのメッセージ!」
「いや、歌はいいです」
「え~~~、何でですかぁ!?」
不服そうなアンナちゃんをとりあえず止める。
「率直に言おう。俺たちは君と同じ地球、日本からやって来た所謂異世界人だ」
「え~~~、なんですかぁそれ?」
「とりあえず世界に二つだけの花はありがたみが薄いから」
「うっ!?」
どうも俺たちが王城から連れ戻しに来た連中なのかと疑っているのか。それでとぼけているのか。王都の騎士団に案内してきてもらったのもイメージが悪くなったか。
「俺たちは君を王都に連れ戻しに来たわけではない。ここからさらに北の山に入り、魔王襲来のための対策を行うために来た」
「え~~~、魔王怖~~~い」
両手でゲンコツを握って口に当てるあざとさ。腹立ってくるな。
あくまでも普通の村娘を演じるつもりか。
「なんだかおひねりもたくさんもらっていたようだし。君がこの村で歌姫として生活していくなら勝手にするといい。我々が君に干渉することはない」
そう言って俺は席を立つ。
「ヤーベ、いいだか?」
ゲルドンが俺に問いかけるが、まあ正直どうでもいいしな。
「いいも何もない。本人がいいならそれでいいだろう。俺たちが何か言う事はない。元々王都を脱出して生活に苦しんでひもじい思いをしていないか心配した程度だ。自分がここで生活したいと思っているなら俺たちが無理にどうこうする必要もないだろう」
そう言って俺はあてがってもらった部屋を出ようとする。
「・・・ねえ、あの人魔王を倒すくらい強い人なの? 勇者?」
「ん? ヤーベは勇者ではねぇだな。だけども世界で一番強いんでねぇかな?」
「そうだべな。バルバロイ王国の辺境伯様という、よく考えたら超偉い立場なんだべな」
「そうだで。ヤーベがあんなだから、おでたちも楽させてもらってるし、ヤーベの立場があるからバルバロイ王国の他の貴族たちからもおでたち自身も一目置かれてるだが、他の国で貴族にあんな態度取っていたら殺されかねんだで」
「そういや、ゲルドンは正式に男爵になってただべな」
「普段は意識しないからすっかり忘れていただで」
ゲルドンとレッドが苦笑しながら話し合う。
「あの・・・もしかしてあなたたちすごくお金持ち・・・?」
おずおずと歌姫アンナが質問してきた。
「金だか? おでやレッドはヤーベから給料をもらっている身だが、ヤーベは金持ちだで。それも生半可な金持ちではないだで」
「そうだべな。一生使いきれないレベルの金持ちだべな、ヤーベ殿は」
「雇って~~~~! 私を連れて行って~~~~! なんでもはしないけど、メッチャ歌を歌うから~~~~!」
「うおおっ!?」
ゲルドンとレッドの話を聞いた牧原アンナは超速で後ろからヤーベに悪質タックルを決めていた。
明日の深夜はまさスラ祭りエクストラ。閑話をお届けします。
(ホントは8月下旬に投稿予定だった残暑のお話)
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