第386話 もうメンドーだからクズ勇者は全員ぶちのめそう(前編)
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「まったく、冗談じゃないっつーの!」
俺はぷりぷりしながら王城を抜け出した。
元々昼過ぎにイカン=セカイショー王国に到着した俺たちだが、トルイーヌ王様と宰相さんと会談し、その後バカ王太子の誕生パーティーとやらに巻き込まれてしまい無駄な時間を取られてしまったというのに、さらにお詫びの歓迎パーティだの、王城で宿泊だの、もはや有難迷惑千万万歳って感じだぞ。
とりあえず偉い人の相手はカッシーナにお任せして、俺様は王城を脱出してきたというわけだ。
歓迎パーティーとやらでモテるといいな、レッドよ。そろそろお前さんも彼女が欲しい今日この頃だろう。つい最近までお姉さんのいる店にいつ行くのかとしつこかったゲルドンも結婚して多少なりともおとなしくなったものだが、給金が溜まる一方のレッドは夜の街に繰り出したくて仕方がないだろうからな。
そういう意味では、このイカン=セカイショー王国の夜の街がいかほどのものか、調査せねばならぬな。バルバロイ王国辺境伯の責任において!
・・・・いや、そんな目で俺を見ないでほしい。
「いやぁぁぁぁ! やめてぇ!」
「オ、オラのドロシーになにするだ!」
いきなり大通りでなにやらモメている声が聞こえてきた。
もう嫌な予感しかしないが、スルーするわけにもいかないか。
「うるせぇ、ばーか!」
ボカッ!
「ぎゃあ!」
「トニー! いやぁぁぁ!」
「弱ぇやつは何されても文句言えねーんだよ!」
「そーそー、俺たちゃ勇者様だぜぇ? お前たちを守ってやってんだからなぁ!」
下品に笑い、縋りつく男を殴り飛ばす二人組。
その二人組は男の恋人らしき女性を捕まえて服を破り裸にしようとしていた。
大勢の人々が見ているこの大通りで。
バカで節操無しの上変態ときているな。救いようがないぞ。
「今から裸にひん剥いてお前を犯してやるよ! お前たちが誰のモンかってことをわからせてやるぜぇ!」
「いやぁぁぁぁ!!」
ガシッ!
俺は後ろから近づき、こちらを強引に向かせると、左手で胸倉をつかむ。
「おおっ!? なんだテメーは? チョーシにのった正義の味方気取りか? あんまチョーシにのってっとぶっ殺・・・」
ボゴォッ!!
「げはあっ!?」
掴んだ胸倉を放さずにバカの顎めがけて右ストレートを打ち抜く。
ものの見事に顎を粉砕され、おびただしい血を垂れ流す男。
俺は左手でつかんでいた胸倉を放り投げるように放す。
顎が砕けた男は大通りにしりもちをついた。
「ギ、ギザマ! ヨグモオレザマニゴンナゴド!」
「さ、お嬢さん、彼と早くこの場を離れなさい」
「は、はいっ!」
男と二人、走って逃げる少女を見送ると、俺はあの砕けた男を振り返った。
「ジネェェェェ!」
右手で殴り掛かってくる男の拳を受け止めると、そのまま手首をつかんで、右ひじから逆に思いっきりへし折ってやる。
「ウギャア!」
「なんだ? 弱ぇヤツは何をされてもしょうがないんだったか?」
ドコッ! ドコッ! ドコッ!
俺はボディにパンチを入れながら問いかける。
「ギャッ! ヤメッ! ゆるじで!」
「お前はさっきの女性がやめてって叫んでもやめなかったじゃないか。だから自分がやめてもらえなくても仕方ないよな? 自分がそうだったんだから」
ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ!
「ゲハッ! ウゴッ! ず、ずびばぜんでじだ・・・もうじまぜんがらゆるじでぐだざい・・・」
右手をへし折られボコボコにされた男が懇願する。
俺はとりあえず無理やり立たせるためにつかんでいた胸倉を放す。
大通りに両膝をつき、土下座体勢で泣く男。
その時、男の目がギラリと光った。
「ばがめっ! スキル『金剛膂力』!!」
男が何やらスキルを使用し、俺につかみかかってきた。
よくはわからんが、多分握力が強くなってなんでも握りつぶせるくらいの力が出る感じ?だろうか?
ふわり。
「はれっ?」
だが男が掴みかかったそこに、俺はすでにいない。
ふわりと舞い上がると前回転で空中一回転を決める。
つまり、掴みかかってきた男の真上には、回転した俺の踵が。
ドゴオッ!!
思いっきり踵を落とし、大通りの石畳に男の顔面を埋める。
石畳に埋め込んだ男の後頭部を踏みつけたまま俺はぼやく。
「勇者・・・クズだな」
「こっち! こっちだよっ! タケシがやられてるんだ!」
見ればさっきこの男と一緒にいたチビが仲間を連れて戻ってきたらしい。
似非イケメンとひょろ長い男、ビッチくらい女だな。
「あら、タケシがやられたってホントだったのね」
「なっさけねーなー、この世界のヤツにやられるなんて」
「ふっ、仕方があるまい、タケシは俺たち勇者の中でも最弱だ」
「グフッ!」
思わず俺は笑ってしまった。
まさか、ヤツは四天王の中でも最辱・・・みたいなセリフがマジモンで聴けるとは・・・。
「なんだ? 何かおかしいのか?」
このかなではリーダー格のような切れ長の目をした冷たい表情のエセイケメンが俺を睨む。
「いや、別に」
つとめて平静を装う俺。右手をピラピラと振ってかまわないでくれとアピールしてみる。油断すると爆笑してしまいそうだ。
「まあいい、貴様は俺たち勇者に手を出したんだ・・・その罪は重い」
「そうそう、というわけでお前は死刑けってーい!」
「じゃあアタシが丸焼きにしてあげるわ~」
・・・なんだろう、この軽い感じ。この感じでこの世界の人たちを彼らは害して来たのだろうか? 一応殺さずに仕留めようと思っていた俺の心を揺らがせやがるぜ。
ミシミシミシッ!
「うぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
おっと、踏んでいた足に力が入ってしまったようだ。
「バカめ! タケシを人質にとったつもりか? そんな雑魚が人質になるかよっ!」
ひょろ長の男の爪から何かが垂れて石畳に落ちると煙が上がる。
「俺様のスキル『猛毒の爪』だ。苦しんで死ね!」
「アタシのスキル『無限魔力』で丸焼きにしてもいいわよ?」
「オレのスキル『切り裂く者』は出番なしか・・・」
なにやらコイツらはチートっぽいスキルがあるため、強いからと好き放題しているのか。
俺なんかノーチートでこの異世界を生き抜くのにどれだけ努力したことか。なのに神とやらからチートな能力をもらってこの世界の人に迷惑をかける・・・それこそ死刑では?と思ってしまうのだが。
「死ねぇ!」
突っ込んできたひょろ長の爪男に、俺は足元で伸びている男を拾うと思いっきり投げつける。
「なっ!?」
ドカッ!
まるでカウンターのごとく顔面に直撃し、もんどりうってひょろ長男が吹っ飛ぶ。
「コイツ、死になさい!」
なにやらださくて意味不明な長い詠唱を唱えると、大きな火球が俺に向かってきた。
ドオオオオン!
着弾し、大きな炎が上がる。
「やったわ! 丸焼きよ・・・えっ、ウソッ!?」
炎の中から平然と俺が歩いて出てきたことに驚く女。
「ホウ・・・ただの道化ではないということか・・・」
「お前たちはただの道化だろ?」
「調子にのるな! 道化! 『切り裂く者』!!」
俺の返しにあっさりと激高するエセイケメン。
右手の手刀を二度着るように振るうと、真空刃が発生して俺に向かってきた。
これがなんでも切り裂く『切り裂く者』かねぇ。
「細胞防御」
キャウンキャウン!
手のひらから広げたスライム細胞で盾のような防御幕を広げると、甲高い音を立ててあっさりと防御できた。
「ば、ばかな!? オレの『切り裂く者』が!?
コイツら、その能力におぼれて能力の理解を深めようとしていないな。
世の中の理、道理、なぜ、どうしてそうなるのか、なにが根源の力なのか。
そういったことを全く考えずに、ただただ手に入れた力をふるっているのか。
コイツの『切り裂く者』とかいうスキルは、特別でもないんでもない。風属性のエアカッターみたいなもんだな。空間属性すらない。食らった瞬間にスライム細胞で解析したらあっさりわかった。少ない魔力で発動が早く、比較的威力が高めで効率がいい、そんな程度のスキルだな。こういった解析、検討を一切行っていないようだな。
その力が通じなくなる時が来るとか、その力を封じられるかもしれないとか、その力を上回る相手が来るとか、考えないのかね。
もう面倒だ。確か、国王からの情報では、召喚した勇者は15名だったな。
居場所を吐かせて全員ぶちのめそう。どうせロクなヤツいないだろうし。
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