第384話 メンドーなので即刻断罪してみよう(ざまぁストーリーは始まらない)
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「失礼」
いまだにネチネチと文句を続ける王太子と、その右腕にコアラのように抱き着いてこの女にひどいことをされました・・・とさめざめ泣くマネをしているビッチ。そして乱暴に侯爵令嬢の頭を床に押し付けている無礼な男と、それを平然と見続ける男が二人。そんな連中の前まで歩いてきた俺は声を掛けた。
「なんだ貴様!」
「王太子様の前で失礼ですわよッ!」
王太子の口のきき方もさることながら、ビッチもすぐに泣きマネをやめて俺を睨んでくる。やっぱウソ泣きじゃねーか。
俺はコイツらを無視して、持っていたハンカチを水の精霊ウィンティの力を借りて冷やすと、侯爵令嬢の頭を抑えている男を突き飛ばして拘束を解除する。そのまま倒れている公爵令嬢の前に膝をついてしゃがみ、冷やしたハンカチを殴られた頬に当ててやる。
「あ・・・ひんやりとして冷たいです・・・」
ハンカチが思ったより冷たかったのだろう、顔を上げた公爵令嬢が少し驚いたように声を出した。ヤベ、めっちゃかわいいな、この娘。
「叩かれたようなので、腫れるといけないから。少し冷やすといい」
俺がハンカチを頬に当て続けながら説明すると、驚いたような目を俺に向けてくる公爵令嬢。やっぱりだれも味方になんてなってくれないと絶望していたかな?
ツラいよね、こういう時。
俺はそのまま公爵令嬢を抱きかかえて立ち上がった。
「あっ・・・!?」
突然の御姫様抱っこに驚いたようだ。
だが、いつまでもこんな茶番劇の舞台に彼女をそのままにしておくのはあまりにもかわいそうだ。
俺はそのまま彼女を抱きかかえて踵を返した。
「ちょっと待て貴様!」
「貴様! 何を勝手な真似をしている!」
「そうだ! 義姉さんの断罪はまだこれから・・・」
「よくも俺を突き飛ばしてくれたなっ! お前も床に這いつくばらせてやる!!」
俺が突き飛ばした男がいきなり俺に殴りかかってきた。
この大勢偉い人がいるパーティ会場で、速攻暴力沙汰。しかも、コイツ、お前もって言ったか?
俺は公爵令嬢をお姫様抱っこしたまま、襲い掛かって来た男のパンチをひょいっと躱すと、思いっきりコイツの腹をけり上げる。
「ゲホォ!」
そのまま足を頭より高く上げると、前かがみになってがら空きになった後頭部にかかと落としを喰らわせる。
ズドンッ!
床にめり込むように踏みつけた蹴りは、ヒットした後頭部から少しずらし、見事に横顔を粉砕した。
鼻血だけでなく、歯もけっこうな本数イッてるだろうよ。
「き、貴様ッ!」
「衛兵! 出会え! 出会え! 曲者を捕らえろ!」
喚く王太子に曲者を捕らえろと指示を出す男。
その隣が公爵令嬢を義姉さん、と呼んでいたから、コイツが宰相の息子なんだろうな。
となると床にめり込んでいるのは騎士団長の息子か。
わらわらと衛兵が集まって来る。
「あ、あの、私を置いてすぐこの場をお逃げください!」
俺の胸に手を当てて逃げるように進言してくれる令嬢さん。かわいいねぇ。
「賊めが! 貴様は死刑にしてやるわ!」
「そうよっ! 民衆の前で首を刎ねてやるといいわっ!」
王太子とビッチが喚いている。
「ふははっ! そろいもそろってこの国のガキどもは無能ばかりか?」
俺は強烈に口角を上げて笑ってやった。
「なんだとっ!?」
「まず貴様」
「!?」
俺は公爵令嬢さんの義理の弟とやらを睨む。
「貴様はこの令嬢の義理の弟だと聞いたが?」
「そうだ! 義姉は公爵家の権力を振りかざしてこのメグミに不当な罠を仕掛けていたんだ! 卑劣な義姉を断罪するのは当然のことだ!」
「この無能がっ!!」
「な、なんだとっ!?」
「貴様は少なくとも後から公爵家に呼ばれた人間だ。彼女とそのご両親とも血のつながりが薄い中、たとえ義姉がはかりごとを企んでいたとしたら、こうなる前に貴様が止めたり防いだりすることがなぜできなかった!」
「そ、それは・・・」
「お前は義姉を守ることすらできず、大恩ある公爵家に泥を塗り、お前を引き取ってくれたご両親にも悲しみを与えた。貴様は無能、愚物以外の何物でもない! 今この場で姉をかばえぬ貴様が何よりの無能の証拠! 泥を塗った公爵家をお前が引き継ぐ? 笑わせるな! 身内を守ることすらできぬ愚か者が領地の領民を守ることなどできるものか! 貴様に貴族が務まるとは思わぬことだ!」
「なっ・・・!?」
呆然とする義弟とやら。無能めが。
「そこの宰相の息子も無能だ!」
「なぜ、私が無能だと?」
「簡単だ。彼女が本当に悪事を働いたのならば、このような状態になるまで放置した貴様が無能なのだ」
「なんだと・・・?」
「宰相たるもの、国の隅々までその目を届かせ、問題点を洗い出し、国に影響が出る前に対処する必要がある。実際に彼女が謀った事かは知らぬが、公爵令嬢一人のわがまま一つ影響が出る前に収束できなかった貴様に国という大きな組織を纏める力などあるはずがない。そんなこともわからぬから無能なのだ」
「ぐ・・・」
「もちろん、この足元で寝ている無能など、無能なだけでなく愚劣極まりない。騎士団長の息子? 笑わせるわ! 殴れるのはか弱い令嬢だけのようだな。男の俺には殴れずに床で寝ているようなありさまだしな」
俺は鼻で笑ってやる。フフン。
「・・・俺も無能だと言うつもりか」
王太子が俺を睨みつけながら問いかける。
「ははっ」
「?」
「言うまでもないだろうが、この極大無能が」
「き、貴様ァァァァァァ!! この俺様のどこが無能だというんだっ!!」
「こんな可憐な公爵令嬢を捨てて、そんなクソビッチ選んでいる時点でもう救いようのない無能だよ、お前は」
「な、なんだとぉぉぉぉ!!」
だが、王太子よりもっとクソビッチがキレた。
「誰がクソビッチだ! 黙って聞いてりゃテメェ! 横からしゃしゃり出てきてなんなんだよぉ! どこの誰なんだテメェは!!」
メグミとやらの顔がだいぶかわいそうなことになっている。
化けの皮が剥がれるってまさにこのことだな。
「おーおー、ボロボロと折角の仮面が剥がれて行くなぁ。クソビッチであるお前の正体が国のお偉方にも丸わかりになってるぞ?」
俺はパーティ会場をぐるりと見回す。
そこには王太子やクソビッチを胡乱な目で見つめたり、こそこそと言葉を交わしあっている貴族たちの姿があった。
「クソがぁぁぁぁっ! テメェらオレの前に跪きやがれぇぇぇぇ!! <魅了領域>!!」
ふむ、コレがコイツのチート能力か?
クソビッチの魔力が会場内を包んでいく。
「<魔法障害>」
「なっ!? バ、バカなっ!?」
クソビッチの展開した魔法が維持できずに雲散霧消する。
この魔法が多少なりとも王太子たちに影響を及ぼしていたとなると、<魔法障害>を展開したことにより、永続効果でない限り魔力影響は解除されるような気がするな。
「むっ・・・オレはどうして・・・」
「あれ・・・義姉さん? ボクは・・・どうして・・・」
宰相の息子と義弟君はぼんやりとだが目を覚ましそうじゃないか。
だが、王太子はどうやらそれなりにビッチにひかれていたようだな。
まあ、個人の趣味にあれこれいう事は無いが、あまりに趣味が悪い。
後、足元のコレは知らん。
「な、ななな・・・なんなんだテメェはよォォォォ!!」
「お前、ボキャブラリーが少ないな。頭の悪いヤツとは会話もできんな」
もう可愛さのかけらも残っていない、完全に化けの皮が剥がれたブス面を晒してクソビッチが同じセリフを繰り返す。
「あの・・・これは一体・・・」
「できれば説明頂けますと・・・」
囲む衛兵のわきから、王様と宰相さんがやってきて俺に説明を求める。
いや、なんで俺に聞く?
先に無能な王太子君に聞いたらいいじゃないの。
「テメェらァァァァ! いい気になってんじゃねーよォォォ!」
クソビッチがさらに壊れた。こらえ性なさすぎでないか?
「これで死ねぇ! タケシに貰った魔獣環だ! 出てこい魔獣! こいつらを皆殺しにしなッッッ!!」
クソビッチが黒い腕輪を前に掲げると、腕輪が光り砕け散った。
そしてその場にオーガが2体出現した。
「「グオオオオオオッッッ!!」」
「キャ―――――!!」
大勢の人々が逃げ惑う中、体長3メートル以上ありそうなオーガがこちらにむけて動き出した。
「殺せェ! 皆殺しにしろォォォ!!」
あー、精神がイッちゃってるっぽいねぇ・・・。
「あ、あの!」
「はい?」
御姫様抱っこしっぱなしの公爵令嬢さんから呼びかけられた。
「お逃げになりませんと・・・危険では?」
「ふっ」
少し笑ってしまった。目の前に体長3メートルを超えるオーガが2匹いきなり現れたのだ。俺を振り払って逃げてもいいはずなのに、なぜか俺の腕の中にちょこんと収まったままだ。
不思議な娘だな。
「スケサン、カクサン、やっておしまいなさい」
「「アラホラサッサー!」」
素早く俺の後ろにやってきたのはゲルドンとレッドだ。
アラホラサッサーって、おまいらよぅ。
どちらもオーガの突進を受け止めるように組むと、ゲルドンはそのまま一本背負いで投げ飛ばし、頭から落としてその首をへし折り仕留める。レッドもオーガの右パンチを受け止め、関節をキメて右手を破壊した後、エルボーを後頭部に落として床に打ち付け、仕留めた。
これ、人はオーガを瞬殺と言う。
「バ、バカな・・・」
ボーゼンとするクソビッチ。
どんなけチョーシに乗っていたかは知らないけど、ここまでやっちゃ誰も庇えまい。
「さて、もう証拠も減ったくれもないな。無差別殺人計画実行犯の現行犯逮捕だ。衛兵さん、その悪党クソビッチを捕えたら?」
「はっ!? そ、そうじゃ! その者を捕えよ!」
宰相さんより王様が先に正気に戻ったようだね。
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