第381話 勇者とはッッッと熱く語るリーナを温かく見守ろう
2018年7月7日より投稿を始めましたこの「まさスラ」もなんと3周年を迎えることができました。そして4年目に突入することができました。
これも一重にお読みいただいている皆様のおかげです・・・え? 何をいけしゃあしゃあと挨拶していると? ひと月以上も更新をストップしておきながら何を抜かすかと?
あ、いけません、モノを投げないでください(汗)
とにもかくにも、本編をお楽しみください。
面倒なご挨拶(大汗)は後書きにて・・・。
抜いた剣を掲げたまま、首を捻る自称勇者(笑)。
コイツ、マジか。
何のために異世界召喚されたのか忘れたのか?
毎日のゴブリン狩りで頭おかしくなったのか?
「魔王だよ、ま・お・う!」
「ま・お・う?」
ズドムッッッ!!
思わずコータの顔面に真空飛び膝蹴りを決めてしまった。
「ブボッ!?」
ププ――――ッと鼻血を噴きながらもんどりうって倒れる自称勇者(笑)。
「キャー! 何しますの!?」
自称賢者のレイが騒ぐが、ホットケーキが刺さったフォークは右手から離さない。もうここまでくるとあっぱれだ。
「は、早くセフィリアさん回復魔法をコータに!」
「は、はいっ! 神の慈悲よ、我が願いを聞き届け、この者を癒し給え<癒し>!」
セフィリアの手からパアアッ!と柔らかな光があふれ、コータの鼻血が止まる。
「なにするんだっ!」
元気になったコータが俺に文句を言ってきた。
「お前の役目はなんだ? 何のために異世界召喚されたんだ? お前は勇者として魔王を倒すという役目があったんじゃなかったのか?」
俺の問いかけに首をかしげていたコータの顔がみるみる青ざめていく。
「ま、魔王って!? 一体ゴブリン何匹分の強さなんだよっ!? そんな化け物みたいなヤツと戦うなんて・・・」
いや、魔王がどれだけ強いかなんて知らんが、さすがにゴブリン何匹分かで測れるような強さじゃないと思うが。
「ゴ、ゴブリンなら何匹出てこようと俺の敵じゃないさっ! でも、いきなり魔王と戦うなんて言われても・・・」
いや、お前ゴブリンナメんなよ? そういうゴブリンならイケる、みたいな駆け出しにありがちなノリで死ぬ冒険者多いんだからな。ラノベの名作ゴブリ〇スレイヤー読んで勉強して来いよ。マジゴブリンヤベーって思うから。
「しぇからしかっ!でしゅ!」
ズドムッッッ!!
「グボアッ!!」
「きゃああ! コータ!」
ぐだぐだ言いながらビビッて立ち上がらないコータに、まさかリーナが電光石火で真空飛び膝蹴りを決めるとは。
後、いつ博多弁覚えたんですかね? 俺は教えた記憶ないけど。
そして再び鼻血を吹き出しながらもんどりうって倒れるコータ。
コータと名を呼ぶレイの右手にはいまだにホットケーキが刺さったフォークが。
まだ食べとんのかい。
それにしても、真空飛び膝蹴りはさっき俺が見せたばかりだというのに。
一度見ただけで技を覚えるとは・・・リーナの戦闘センス半端ないな。
オトーサンは嬉しいよ、うんうん。
「セフィリアさん! コータがまた大変ですの! 回復魔法をお願いですわ!」
「はいはい・・・モグモグ・・・フィールフィール」
セフィリアちゃん、それヒールだよね? そして口の中ホットケーキでいっぱいだよね?
めちゃめちゃ雑にしかも詠唱破棄ですか。
そしてお前もホットケーキの虜かよ。
でもさすが聖女なのか、ホットケーキでいっぱいの口なのに、ちゃんと呪文を唱えているようで<治癒>の効果があるよ、それなりに。
「勇者とは! 勇気ある者ッッッ!!でしゅ!!」
起き上がってきたコータの前に両手を腰に当てて胸を反らし仁王立ちするリーナが語る。
「相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本物の勇気じゃなぁぁぁぁぁいッッッッッ!!!でしゅ!!!」
おおう、リーナさん激おこぷんすこモードですな。
後、セリフが若干ニセ勇者パーティの魔法使いまぞっ〇みたいなのはなんでだろう?
誰だよ、リーナにダイの大〇険語ったのは?
・・・俺だよチクショー!
桃太郎や金太郎に飽きたリーナの寝物語にダイの大〇険全37巻語りつくしてやったよ!
「ふおおっ!? それでじゅうおーしゃんはどうなってしまうのでしゅか!?」
「ううう・・・かれこしょが勇気を司る者だったなんて・・・」
「ふおおっ!? この剣士は不死身でしゅか!?」
と話の次を欲しがるリーナに、寝物語としては逆効果だったと反省しきりだが。
「リーナちゃん、一応こんなでも女神さまから力をもらった勇者だから。きっとピンチの時には役に立ってくれると思うよ?」
アスカちゃんがリーナの頭を撫でながらコータのフォローをしている。
アスカちゃんの優しさはわかるが、コータだしなぁ。効果は薄いと思われるけど。
「ふみゅう・・・、女神にチートをもらった勇者の約8割はロクでもない連中でしゅ! チートをもらったことをいいことに女性に乱暴したり、世界をわがものにしようとするクズヤローばかりなのでしゅ! そんな悪党勇者は俵積みに処すのでしゅ!」
ふんすっ!と鼻息荒くどこからか取り出したロープを振り回すリーナ。
危ないから食堂でロープを振り回すのはやめなさい。
「そうよねー。勇者ってあの白長洲とかでしょ? クズよねー」
「うむ。クズだな」
「そうですね、勇者はクズ以外の何物でもないですね」
「ボクは勇者=盗賊だと言っても過言ではないと思うな!」
「右に同じく」
うん、奥さんたちの勇者論が半端ないことになってる。
「後、勇者は勘違いヤローで人の話をぜーんぜん聞かない迷惑な存在なのでしゅ! 見つけたら容赦なく駆逐するのでしゅ!」
うん、だれだ? リーナにラノベ読ませたのは。
・・・俺じゃねーぞ? 言っとくけど。
まあ、最近リーナが読み書きの勉強にすごい熱心だったから、ちょっとおかしいなって思っていたけども。まさかあのヤローの書いたパクリラノベ読むためだったとは。
アノヤロー、ってガーデンバール王国の伯爵加藤君だよ。
こちらの世界ではアビィ・フォン・スゲート伯爵らしいけど。
あいつの丸パクリラノベはすべて破り捨てたはずなのに。
リーナの教育に悪いから、今度リーナの部屋をくまなく調べてパクリラノベを抹消しなければ。リーナが変な方向に染まってしまってからでは遅いからな、うん。
「とにかく、魔王が出たらトッコーしてもらうでしゅ」
「なんでだよっ!?」
おお、もうリーナさんが作戦指揮官に!? 子供の成長って早いのね。
「なんでアンタいい顔して見つめてるのよ、キモイんだけど」
レイよ、うるさいわ。リーナの成長に感激しているだけですぅ。
「それで、どこへ向かうのでしょうか? 魔王が次元の扉を開く場所がわかったのですか?」
少しまじめな表情でカッシーナが俺に問いかける。
やはり魔王が来るとなれば、心配もするよな。
「うん、ヒヨコたちの調査では、ラードスリブ王国のさらに北東にある小さな国、イカン=セカイショー王国の北の山奥にある村がリーナの故郷だとわかったんだ。そこに次元の扉が現れるとこのデスベ・・・プリティベアーが言っている」
そういって俺はリーナが作ったぬいぐるみのクマをひょいと持ち上げる。
「わああっ!?」
「の、呪いのくまですぅ!」
「ヤーベさん、そのクマから禍々しいオーラが! ボクの錬金釜に入れて処分を!」
「時の狭間に封印する秘術がありますわ! 旦那様!」
イリーナ、ルシーナ、サリーナ、フィレオンティーナが好き勝手なことを言う。
クマを錬金釜に放り込んだり、時の狭間に封印するんじゃないよ。
「こいつはリーナの魂に張り付いていた残骸だな」
「誰が残骸じゃ! この世界を守る扉の番人!それがわらわシルヴァリーじゃ!」
「クマがしゃべった!」
「というか、さっきからこのクマのぬいぐるみ自分で動いてませんこと?」
サリーナとフィレオンティーナがクマのぬいぐるみを見ながらさらに騒ぎ立てる。
「まあ、リーナの故郷はコイツに案内させればいいだろう」
クマのぬいぐるみの首根っこをつかんでプランプランさせる。
「やめれ~! わらわを誰だと心得る!」
「クマ?」
「クマですわね」
「くまだな」
「くましゃんでしゅー!」
「わらわはクマではないわっ!!」
「はいはい、ぬいぐるみの戯言はここまでにして、サッサと移動準備をしようかね」
「ヒドイッ!?」
「そうはいっても、ラードスリブ王国の北など、はるかに遠いし、相当な移動時間がかかるぞ? 準備といっても・・・」
さめざめと泣く真似をするくまをスルーしてイリーナが首をかしげる。
「あ、イカン=セカイショー王国には明日到着するからって今日先振れの手紙をヒヨコに届けさせたから。急いでいるから歓待無用ってね」
「今日!?」
「明日!?」
カッシーナとロザリーナが顔を見合わせて驚いている。王族の二人には、訪問に対する準備時間というものが認識としてあるからだろう、あまりにも短いその設定時間に二人の空いた口がふさがらない。
「うん、転移で馬車ごと瞬間移動するからね。すぐ着くよ。今日でも行けるけど、明日まで一応準備も必要かなって」
「転移・・・」
「瞬間移動・・・」
「馬車ごと・・・」
カッシーナ、ロザリーナ、アナスタシアの王族コンビがポケッとしてる。
どうした?
「ヤーベ、転移は起点となる自分の細胞がないと無理だったのではなかっただか?」
ゲルドンがぼそぼそと俺に耳打ちする。
「そう。だからすでにヒヨコ軍団にスライム細胞の一部を運んでもらっているよ。今回は魔王がらみだから迅速に対応しないといけないからね。馬車でそのまま移動するとガーデンバール王国やラードスリブ王国で歓待を受けてさらに移動時間が余計にかかりそうだからね」
ゲルドンの転移に関する質問に答えながら、今回急ぐ理由をついでに説明する。
まあ帰りならのんびり馬車で帰ってきてもいいけどね。
「・・・それにしても、イカン=セカイショー王国って・・・」
「なんつー名前なんだ?」
ゲルドンとレッドがお互い顔を見合わせながら首をひねる。
「セカイのショーがイカンのだて・・・」
「とてつもなく嫌な予感がするぜ!」
なせかゲルドンとレッドが肩を抱き合いながら震えていた。
仲がいいな、お前ら。
更新がひと月以上も途絶えてしまい誠に恐縮です。
心身ともに一杯一杯な上に、この381話はなぜか8割近く書き上げた所で二度もセーブミス?で原稿が行方不明になるという状況に陥り、心がボキボキに折れておりました。
一体何の呪いかと・・・(汗×汗)
何はともあれ、4年目に突入しましたこの「まさスラ」。今後とも続けてまいります。それだけはお約束させていただきます。
その他3周年記念話として、本編とは別に特別なお話を用意する予定です。
今後ともどうぞ「まさスラ」よろしくお願い致します。