第373話 求められた助けには手を差し伸べよう
ブックマーク追加、★評価、誤字脱字報告等誠にありがとうございます!
大変励みになります。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!
「ふふふ・・・今宵の月は美しい」
夜遅く、俺は自室の窓辺に立つと窓を開けて満天の夜空を見上げる。
今日は雲一つない夜空で、きらめく星々がはっきりと見える。
見たこともない星座(?)というか、星の位置が不明だけど、大気が澄んでいるのか、夜空に満天の星空が広がる光景は圧巻だ。
「やっぱこーいう日も大事だよな!」
俺の言う「こういう日」とは、俺が一人で寝る日のことだ。
一か月に一日だけ、俺が一人で寝る日が与えられている。
・・・与えられているってのもおかしな話なんだが。
まあ、奥さんズの面々がぐいぐい来るので、とにかく反省し、自分を見つめなおす時間が必要という素晴らしい建前を前面に押し出し、なんとかこの日を確保したというのが現状だ。
それでも最初のうちは普通にリーナがベッドに忍び込んできていたが、最近はカッシーナやフィレオンティーナの抱き枕と化しているらしく、夜中に抜け出してこない。
がっちり抱きしめられて寝ているようだしな。
「ご主人だば――――!! ご主人だば――――!!」
と連れていかれる時にいつも号泣していたリーナも、今では俺が一人で寝る日だけはおとなしくみんなで寝ているようだ。
その代わり翌日はめっちゃ朝早くおこしに来るけどな! ベッドダイブで。
そして、今日なんと王都警備隊隊長のクレリア・スペルシオさんが屋敷に正式にやって来た。
顔を真っ赤にして、少しばかりの自分の荷物を小さなバッグに詰め込んで。
「こ、こここっ・・・これからよろしくお願いします!」
うん、なんていうか、もうね、なんも言えねぇ。
「それでは、こちらへどうぞ。屋敷内のしきたりについて説明させていただきます」
そう言ってカッシーナが連れて行った。
うん、任せる。
なんか、お風呂で綺麗にしてから寝室に伺わせていただきます的な話もあった気がするけど、それは明日以降でお願いします。
「さてと・・・」
星空を満喫した俺だが、寝室のベッドには戻らず、屋敷の裏庭の芝生
に直に座って座禅を組む。
「ふうう~~~」
俺は自身の魔力を高めながら体の中を巡回させる。
魔力を体内で巡回させながら練り上げていくイメージだ。
昔魔力のことを<ぐるぐるパワー>と呼んでいたのも、この体内循環による高め方を無意識に実践していたからなんだよな。
ま、最終的には精霊たちに「ぐるぐるパワーってなに!?」ってめっちゃツッコまれたので、魔力と呼ぶようになったが。
ちなみにこの裏庭には先に魔力結界を施した。
そうでないと結界もなしに俺が魔力を高めていったら王都中の魔術師が飛び上がってしまう。
俺の魔力をこの裏庭から漏らさないための魔力結界だ。
魔力量が膨大になるとトレーニング一つとっても周りに気を遣わねばならない。
・・・ベルヒアねーさんたちに昔怒られたし。
それにしても、結婚してからというもの、奥さん達と夜一緒に寝ることがほとんどだから、自主トレーニングに使う時間が減っている。
・・・ええ、夜一緒に寝ていますよ? 寝ているだけじゃないだろうって? ええ、寝ているだけじゃないですけど何か?
閑話休題。
そう、自身のトレーニングだ。
今は隙を見ては鉱山都市マーロの山奥や、神都ヴィレーベの奥、未開の森に転移で移動してトレーニングに励んでいる。
転移先に俺のスライム細胞がないと移動できないから、どちらもスライム神像を作って森に放置している。
誰かに見られたら相当驚くと思うが、かなり森の奥だしな、大丈夫だろう。
トレーニングは俺自身のパワーアップのためが主目的だが、副産物もある。
<スライム的大回転>のトレーニングではミスリル鉱床を発見してしまった。その後土の精霊ベルヒアねーさんに聞いたら、ミスリル鉱床があっちこっちにあることが判明、掘りまくってミスリル坑道の基礎を準備することができたのだ。
<スライム的切断刃>の練習でも土の精霊ベルヒアねーさんに伐採していい木々の選定をしてもらってからトレーニングに励み、伐採した材木は領地で出荷するという俺のトレーニング、森の管理、売却代金で儲かると一石二鳥どころか一石三鳥という具合である。
そんなこんなで、結構大事な夜の個人トレーニングは今や月一がいいところなのだ。
だから今日という日を大事にしなければ。
そう思っていた矢先、
「お、お助けください! お願いでございます! 伯爵様!」
かすかに声が聞こえてくる。どうやらこんな夜更けに屋敷の門に誰かが来て助けを求めているようだ。
だが、正直有象無象の輩がかなり多く、現在は屋敷の門には二名の門番と騎士が一名常駐している。
正直盗賊対策なら狼牙族とひよこ隊で巡回、屋敷の護衛を行っているのでめったなことはないのだが、訪問者の対応を狼牙族やひよこたちに任せるわけにもいかんしな。
「こんな夜更けに大声をだすな! 迷惑だろう!」
「先振れのない訪問は基本的にとりつげない」
「それに今はスライム伯爵様ではなく辺境伯様だぞ」
いや、それはどうでもいいけど。<スライム的地獄耳>で聞き耳を立てていると、結構杓子定規な対応をしているのがわかる。
まあ、臨機応変にって言っても、その判断を門番や担当騎士にさせるのはさすがに荷が重いか。
ヘタな判断が俺の不興を買うかもしれないと思うと、杓子定規の対応以外は二の足を踏んでしまうだろうしな。
俺は裏庭の結界を解除すると、空中に浮かびそのまま空を飛んで屋敷の門へ向かった。
「お、お願いです! 私ならなんでも致します! どうか・・・どうか伯爵様にお取次ぎを!店の子たちが襲われて大けがを!」
「だから、伯爵ではなく辺境伯様だと言っているだろう!」
「大けがって、教会や治療院に行くべきではないのか?」
「なぜスライム辺境伯様のお屋敷にきたのだ?」
俺は門の上空から様子を見る。
見れば少し年のいった女性のようだ。身なりはそれほど良くないが、多少なりとも気を使っている様子がうかがえる。少し扇情的な衣装を身にまとっている。
足は裸足だ。遠くから走ってきたのだろうか? 玉のような汗をかき、息も絶え絶え、足の裏は血で染まっている。
店の子たちが襲われて大けが・・・。まあ、夜の接客業を営むお店の女将だろうか。
教会や治療院に行けないのは金の問題か、非合法な営業、無許可エリアでの店舗という立地条件などが考えられるか。
神都ヴィレーベや鉱山都市マーロなどはスラムを絶対形成させないよう狼牙族やひよこたちの巡回を徹底していて、闇の組織などが裏家業を牛耳ろうとその手の組織が来たりできたりするのを徹底的に取り締まっている。
必要悪という言葉は理解できるが、好きではない。
悪は誤解を恐れず言い切ってしまうならしょせん悪なのだ。無いに越したことはない。たとえそれが現実には夢物語であったとしても。
そして俺のところへ来たのは、「救国の英雄」なんて呼ばれている俺だから、無料で人助けしてくれるだろうという判断か、もしくは城塞都市フェルベーンで顔を隠して病気を治療したのが俺という噂を信じてやってきたのかもしれない。
「やあ、お勤めご苦労さん」
俺は上空から地上へ着地すると。門番や騎士にあいさつした。
「こ、これはスライム辺境伯様!」
騎士が慌てて膝をつき、門番もそれに倣う。
「ああ、いやいや。かしこまらなくてもいいよ。それより、どうしたんだい?」
「はっ! この怪しい女がいきなり訪ねてきて辺境伯様に取り次げと・・・」
「お願いです! 店の女の子たちが客に暴力を振るわれて大けがを・・・どうか、どうかお慈悲を・・・」
泣きながら俺に拝んで来る女将さん。
「お店、どの辺にあるの?」
「お店なら・・・」
女性の説明を聞くと、その場所が貴族街から随分離れている下町だという事が分かった。
「え、めっちゃ遠いじゃん」
そう言うと俺は女将を横抱きにして宙に浮かぶ。
「ひえっ!」
「<高速飛翔>」
王都の夜空を切り裂くように俺は王都の空に舞い上がった。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。
下の5つの☆を★にしていただくと、西園寺にエネルギーチャージできますv(^0^)v