第371話 ドムラン商会の立て直し方法を説明しよう
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「と、いうわけで無事ドムラン商会の立て直しに力を貸せそうですよ」
そう俺が報告した相手はワーレンハイド国王、リヴァンダ王妃、カルセル王太子、そして宰相ルベルクの四人である。
一応ドムラン商会の立て直しに目途が立ったのでカルセル王太子に報告しようと王城へ来たのだが、ワーレンハイド国王への話もあるので、まとめて集まってもらったのだ。
・・・とーとつに来て時間を空けてくれる王国のトップフォー。逆にいいのかと心配になったりもしなくもない今日この頃。
「・・・すまんの、カルセルのわがままを聞いてもらって」
事前にカルセル王太子からの相談がなかったことにジロッと睨みを効かせるが、言葉にはしないワーレンハイド国王。内心オコですな。
まあ、自分の嫁の実家に有利になるように取り計らえ、と王家から圧力かけたようなもんだし? 俺に圧力が効くかどうかは別だけど。というか、情に訴えらて負けた感じだけど。
「本当にありがとうございます・・・」
幾分肩を縮こまらせながら頭を下げるカルセル王太子。
この人、本当に弱弱しさをアピールして情に訴えるのが上手。なんとなくほっとけなくて助けたくなる感じ。トクする人だよね、うらやましい。
「それで? どのように立て直しを?」
ルベルク宰相の問いかけに俺は一つ一つ説明していく。
ドムラン商会に『化粧品』を卸すこと。
その『化粧品』はドムラン商会専売となること。
専売の期間は一年間とすること。
『化粧品』の種類は『ノービス』シリーズと名付けた化粧水、乳液のようなもの。
そして特別効果のあるものを『ライラック』と名付けてブランド化して販売すること。
専売期間が終了したらドムラン商会以外からも買えるようになること。
実際、スライム汁以外を使った基本ベースの化粧水、乳液はまだ研究中だけどね。大至急治験と量産化を進めねば。
もし開発がダメなら、スライム汁を薄めるとかして対応しなければならなくなってしまう。
スライム汁は効果ありすぎるから・・・。
「なるほど・・・この一年間でしっかり建て直せよ、ということですな?」
「まあ、そうですね」
一年限定の理由を頭に浮かべたのか、ルベルク宰相の言葉に俺はうなずく。
「ですが、それとは別にお願いしたい事があります」
「お願い? なんだろうか?」
ワーレンハイド国王が俺の言葉に姿勢を伸ばしてまっすぐ俺を見つめてきた。
「今、巷で流行っている『美白白粉』『超絶白粉』『真っ白な白粉』の三種類の化粧品を販売禁止にしていただきたい」
俺の言葉に珍しく四人が驚いた。
「いや、化粧品の販売でドムラン商会を儲けさせたいのはわかるが・・・」
「既存商品の販売禁止はいささかやりすぎでは・・・」
ワーレンハイド国王、ルベルク宰相が顔をしかめる。そりゃ利益独り占めしたいから今市場で流行ってる既存商品を禁止しろとか、そんなヤバイこと言ってると思われれば顔もしかめたくなるだろうけど。
「いえ、儲けを独占したいわけじゃないんです。今巷で流行っている『美白白粉』『超絶白粉』『真っ白な白粉』は確かに塗れば真っ白になりますが、その成分には人体に有毒な水銀や鉛が含まれているんですよ」
「な、なんじゃと!?」
「水銀・・・鉛・・・ですか?」
「まあ怖い、あれ取り寄せて使わなくてよかったわ~」
リヴァンダ王妃だけが呑気なことを言っているが。水銀や鉛といっても伝わらないのか。
「水銀は常温で液体形状の金属元素です。金属なのに銀色の液体で非常に不思議に見えるため、錬金術やさまざまな実験の触媒に用いられているようですが、揮発した気体を体内に取り込むと、中毒症状を起こします。特に子供や妊婦には多大なダメージを与えるでしょう。同様に鉛も長期にわたって体内に入れば中毒症状を起こし最悪死に至ります」
「なんと・・・そんなものが」
ワーレンハイド国王、ルベルク宰相、カルセル王太子が声もなく驚いている。
リヴァンダ王妃だけがセーフセーフとホッとしていた。
「製作している現場に行けば水銀や鉛の使用状況を押さえられると思います。水銀や鉛の有毒性について確認が必要だというのなら、小動物を捕まえて水銀の蒸気を吸わせる実験をすればわかりますよ。多量に吸えば中毒症状が出るでしょう。粉末の鉛を混ぜたエサを小動物に食べさせても影響が確認できますよ」
「なんと・・・ルベルク、すぐ手配してくれ」
「わかりました」
「水銀や鉛の危険性が確認できた場合、白粉を販売禁止にすると水銀や鉛抜きで製作できるようになるまで、白粉を製作、販売している業者が販売できなくなって困窮しますよね?」
「む・・・まあそうじゃな。だが人体に有害だと分かれば放置はできん」
「そこで、ドムラン商会から販売する化粧品に通常とは別に追加で税金を少しかけて、その分を白粉製作、販売業者に禁止に対する補填としてはいかがでしょうか。補填期間は一年です」
俺は白粉制作、販売業者への救済案を提示した。
「おお、なるほど。白粉を禁止されて困っている者たちへ、化粧水がたくさん売れた分から補填するのか。さすがヤーベ卿、うまいことを考える」
ワーレンハイド国王が破顔して手をポンと打ってくれるが、ルベルク宰相は顎髭を手で撫でながら首を少し傾げた。
「・・・補填期間は一年ですか」
「ええ、未来永劫に補填する必要もありませんし、一年経っても有毒物質抜きで白粉が制作できなければそれは製作、販売側の問題としてしまってもよいかと。それだけの期間は補填を設けたわけですから。」
「なるほど」
ルベルク宰相は俺の一年という言葉に当然意味があると気づいている。
実際、俺としてはライラックを苦しめたドムラン商会なぞ助けたくもないのがそもそもなのであるが、きっとライラックをぎりぎりのところで助けていた人たちだっていただろうし、ライラック自身があれこれ実家のことで言われるものかわいそうだから、少し手を貸してやるとするか。
ドムラン商会にとって爆発的に売れている化粧品を取り扱っている、という実績が目に見えればいいだろう、というのが俺の考える落としどころだな。
「わかりました。それで進めてください」
ルベルク宰相がそう結論付けたので、この話は終わりと席を立とうとした俺にリヴァンダ王妃が待ったをかける。
「ねえねえヤーベさん。この前のすごいヤツじゃないのよね? ドムラン商会から販売するのは」
リヴァンダ王妃の確認に呆気にとられる俺。そりゃそうでしょうよ。あんな瞬時に劇的効果をもたらすヤツなんか売れるわけないでしょーが。
「・・・ええ、違います。毎日使っていただければ少しずつ肌を改善できる、そんな化粧品です」
「じゃあ、何かあったらヤーベさんを呼べばいいのね?」
「・・・いえ呼ばないでください」
なんでまたあのスライム汁漬け希望してんのよ。
もうアンタは全身ツルッツルでしょうが。後は自分で維持してくださいよ。
「ええ~~~!? なんでなんで!? あの時、お腹のお肉もちょっと減ったのよね。気になってたところがすっきりしたし」
・・・わお。完璧な状態をイメージしたせいか、無駄な脂肪の吸収までやっちまってたか。
スライム細胞さんマジ便利。でもいつもいつもこんな劇的な効果をもたらしてたら、逆に体おかしくなっちゃわないかい? なんか副作用でも出たら責任もてねーよ。
「あれは特別です! なんども施術すると元の体にどう影響がでるかわかりませんから、今後はできる限り行いません」
俺がきっぱりそう告げるとなぜかリヴァンダ王妃は絶望したような表情になった。
「ええ~~~!! これでおいしいものいっぱい食べても無理にダイエットせずにヤーベさんに施術してもらえばいいと思ったのに~」
「何てこと考えてるんですか、この人は・・・」
俺は顔を右手で覆いながら顔を天井に向けて溜息をついた。
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