第364話 名代カッシーナにお任せしよう
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王城では王太子の生誕祭が始まった。
アフタヌーンティーを楽しもうと多くの参加女性が王城の中庭に繰り出す。
王太子の生誕祭であるからして当然既婚者の参加もある。
だが、それ以上に王太子との縁を結びたい娘たち、そして、王太子は無理でもより良い嫁ぎ先の独身男子を見定めたい女性が多く参加していた。
男性側も王太子の生誕祭に参加する女性を見定めて良縁を結びたいと思っていた。
いわばこの王太子の生誕祭はバルバロイ王国最大の婚活パーティといっても過言ではない。
ちなみにヤーベはそんな理由からカルセル王太子あてに直接不参加を伝えていた。
その代わりカルセル王太子には特別なスイーツを使ってリューナに作ってもらったケーキをプレゼントしていた。
(ヤーベ殿は何も言わなかったが、主役の私に女性の目が集まるようにしてくれたのだろう・・・)
カルセル王太子はふと溜息をつく。
ヤーベ卿がここへ来ていれば、きっとさらに妻に妾にと上級貴族からの売り込みがすごかっただろうことは想像に難くない。
カルセル王太子の立場を慮っての配慮とカルセル自身は感激していたのだが、当のヤーベは寄ってたかって女性を押し付けられるのが面倒と思っていただけだったりもする。
そのヤーベの名代として妹のカッシーナが来ていた。
「お兄様、お誕生日おめでとうございます」
「ああ、ありがとうカッシーナ」
美しく着飾ったドレス。言われなければパーティの主役はカッシーナではと思ってしまうような輝きを放っていた。
「随分と女性から声がかかっていたようだけど?」
「ええ・・・旦那様・・・スライム辺境伯様の人となりやら、出会いの話やらを聞かれるのはまだしも・・・夜の生活や、まだ奥さん娶る気がないかとか、
妾はあと何人募集しているのかとか・・・いつ旦那様が妾を募集しましたか!」
話しながら徐々にボルテージが上がってきたカッシーナは、最後ぷりぷりと怒っていた。
そんな妹を見ながら、半身をやけどで損傷し、塔に閉じこもっていたころの面影などなく、今が幸せいっぱいと全身で表現するカッシーナを本当に幸せそうな目でカルセル王太子は見つめていた。
そんなカッシーナを押しのけるようにカルセル王太子の前に化粧のドギツいババ・・・いや、ドムラン商会会頭ゴドルフの妻であるルベイラ夫人が姿を見せる。
「まあ~、王太子様ご機嫌麗しゅう! すっかり男らしくなられまして」
カルセル王太子はこのババ・・・女性が誰だったか頭の中で検索する。
この化粧のドギツいババ・・・いや女性がドムラン商会の会頭の妻であったことを思い出すのに数秒の時間がかかった。
「実は今日、私自慢の娘たちを連れてまいったのですわ! よろしければこの中からぜひカルセル王太子の妃に選んでいただければ」
その言葉に周りがザワッとした。
当たり前である。王太子生誕祭は公然とした婚活ではあるものの、対面は重視される。何事も建前は大事なのである。
挨拶やたわいもない会話から情報をやり取りし、お互い気になれば次の約束をするのが常識であった。
まして、この中から妃を選べなど、どういう了見かと周りの連中がざわつくのは至極当然であった。
「長女のスーザンでございわすわ」
「次女のマリエッタでございます」
「三女のソルボンヌと申します」
「はは・・・どうも」
明らかに苦笑いを浮かべているカルセルだが、それに気づかないのかただ図太いのかぐいぐい来る三姉妹。
いい加減助け舟が必要かと思いカッシーナが口を開こうとしたのだが、それより早く救助艇が到着した。
「カルセルよ。ちょっとこっちに来い。紹介したい者がおるのだ」
そう言ってカルセル王太子を呼んだのはワーレンハイド国王であった。
「ええ、今行きます。すみません、ちょっと失礼」
「「「ああ・・・」」」
ひどく残念な声を出してカルセル王太子を見送る三姉妹。
(残念なのは声ではなくてその存在そのものですわね・・・)
カッシーナは横目で見ながら、この三姉妹が人として見るべきところがないと瞬時に判断した。
「あら、カッシーナ元王女様では?」
唐突に後ろから声をかけられる。
「ええ、そうですが」
一応様はつけたものの、横柄な態度と声から好意的に声をかけられたわけではないと認識したカッシーナは振り返って声をかけてきたババ・・・女性を見る。
「私、ドムラン商会会頭の正妻でルベイラと申しますわ」
「・・・どうも」
明らかに会話したくない、そんな雰囲気をはっきりと出して返事をするカッシーナ。
「王家が一商会に肩入れしすぎるのはどうかと思うのですが、その所はいかがなのでしょう?」
睨むような視線で言葉を投げかける鬼バ・・・女性にカッシーナは首を傾げた。
「何のことでしょうか?」
「とぼけないでくださいまし! スペルシオ商会のことですわ! 王家が肩入れしたせいでウチの商会はバルバロイ王国ナンバーワンの座から落とされてしまったのですから! やり口が汚いのではありませんか?」
後ろの娘たちからもそうだそうだと声が上がる。
一体何を言っているのだろうか? アローベ商会立ち上げ時にスペルシオ商会が挨拶に来てぜひ取引をという話だったはず。
この流れで王家の力はどこにも働いていないことが明白のような気がするカッシーナには鬼バ・・・女性の言っている意味が分からなかった。
しかも王家のせい、とは言ってくれる。
「旦那様の商会は私と結婚する前から立ち上げられており、その過程でスペルシオ商会と取引を行い、懇意になっただけのことでは?」
「何をいけしゃあしゃあと!」
その反応を見て、ああ、自分の都合のいいことしか信じようとしないタイプか・・・とカッシーナはため息をついた。
この手の輩と議論しても時間の無駄にしかならないことはカッシーナも理解していた。
「ドムラン商会は顔の広い会頭が手広く商いをやっている王都でも有数の商会とお伺いしておりますが。浪費しかしないような身内に足を引っ張られて苦労されておられなければよいのですが」
ニヤリと笑ってすさまじい嫌味をぶっ込むカッシーナ。随分と肝が据わっていた。
そのカッシーナの言葉にあっさりとルベリア夫人は激昂した。
「このっ! 王族から成り上がりに払い下げられた分際で!」
「「「!!!」」」
さすがに元王族とはいえ、この国の第二王女であった、しかも現在は辺境伯第一夫人であるカッシーナへの暴言としては明らかに見過ごせないレベルのものであった。
警備についていた騎士や給仕の中でも上位の立場の者が鬼バ・・・夫人を捕まえようと数人やってきた。
だが、サッとカッシーナが手を振った。
「このような些細な言動にあまり目くじらを立てても仕方のないことですわ」
カッシーナの言葉に、カッシーナ様がそうおっしゃるなら・・・といった雰囲気で騎士や執事たちが下がっていく。
その雰囲気をさすがに察した鬼バ・・・夫人は顔色を青くする。
「良縁があるといいですわねぇ・・・ふふふ」
カッシーナは懐から取り出した扇子をパンッといい音を立てて広げ、口元を隠す。
それは、こんな大事なパーティでそんな醜態をさらしていると自分の娘たちの貰い手かなくなるぞというカッシーナからの忠告でもあった。
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