第360話 俺の行動理念を伝えておこう
ブックマーク追加、★評価、誤字脱字報告等誠にありがとうございます!
大変励みになります。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!
「それで? 闇の公爵ダカ―リスとやらは、なんて言ったんだ?」
「あなた、魔界の魔族たちは魔王の元に人間界に侵攻を開始すると」
俺の質問に真剣な表情でカッシーナが答えた。
「魔王が魔族を束ね、人間界に侵攻ね・・・」
「ヤーベ様」
現在の事象を整理すべく頭の中を整理しようとしたのだが、アナスタシアが俺の名を呼ぶ。
「もともとわたくしも父も人間界への侵攻は反対でした。所謂穏健派、と呼ばれている派閥で、人間界とは一部の交流にとどめて、お互いの状況を見ながら情報交換をしていく
ことで少しずつ歩み寄れればいいと考えていました」
「ふむ・・・人間側とすれば理想の魔王像だね」
「はい、数百年前はお互い侵略戦争ばかりで疲弊しきり、その上人間界側は神の力を頼り、異世界から神の能力を与えられた者たちを呼び出すようになりました」
「それが『勇者』か・・・?」
「はい。今では勇者に限らず、異世界から呼ばれてこの地に降り立った者たちには様々な恩恵が与えられていると聞きます」
「俺は一切なかったけどね! 完全無欠のノーチート野郎だからね!」
「その・・・ヤーベ様の事はわかりませんが、私のおじい様・・・先代魔王が意図的に軍を引き戦争をいったん終了させたのです」
「そうだったんだ」
「しかし、これ幸いと見たのか、人間界側が魔界に侵攻しようとしてきました」
「バカだな、人間」
俺は思いっきり肩を落としてため息を吐く。カッシーナたちも困惑気味だ。
「はい、まさしく。魔王軍は人間界側からアクセスされた異界の門の出口で待ち受け、これを迎撃、殲滅しました」
「まさしく、ざまぁと言いたい。人間側からすると不謹慎な気もするが、侵略戦争を仕掛けたのは人間側だしな。魔王軍の魔界防衛の観点からすれば、当然の対応だろう」
「え~、ヤーベさん、どっちの味方なの?」
人間側が殲滅されても仕方なし、そんな言い方をしたせいか、サリーナが俺にストレートに疑問をぶつけた。
「・・・いい機会だから、俺の考え方、スタンスを説明しておこうか」
些か俺が真面目な顔を作ってみんなを見回したせいか、奥さんズを始めとしたこの場の全員が緊張の面持ちで俺を見る。
「俺は人間たちの守護者気取りではない」
「えっ・・・」
カッシーナが驚いた表情を見せた。
「だが、だからと言って魔族の肩を持つつもりもない」
俺の説明に緊張していたアナスタシアが俯いてしまう。
「みんな、人間だの、魔族だの、亜人だの、神だの悪魔だの、種族的なものにとらわれすぎだ」
「・・・と、いいますと・・・」
カッシーナが少し首を傾げながら俺に尋ねる。
「俺はお前たちを愛している」
「ひゃう!」
サリーナがぴょんと椅子の上で飛び跳ねる。
「屋敷で働いてくれているみんなも家族のようなものだ。大切な人たちだ」
一呼吸置いてみんなを見る。
「だから、俺の大切な人たちが傷つかず、楽しく笑って暮らせる世の中にしたい」
「・・・素敵ですわ、旦那様」
「そんな御屋形様だからついていきたいのです」
フィレオンティーナにロザリーナが賛同してくれる。
「だから、種族なんて関係ない。だって考えてもごらん。人間とひとくくりにしたって、カッシーナを始めとした奥さんたちと、同じ人間でも盗賊のような悪党を一緒になんて絶対にしないだろ?」
「そ、それはもちろんそうです!」
ルシーナが力を込めて断言した。
「同じことだ。たとえ多くの魔族がこの人間界に攻めて来ようと、魔族をひとくくりにして滅ぼせ、なんて俺は言うつもりもない。アナスタシアの様に飛び切り素敵な女性だって魔族という種族じゃないか。だから、種族にこだわるのは非常に愚かなことだと俺は考える」
「種族に捕らわれることが、愚か・・・」
「少し言葉が過ぎる気がするが、端的に言ってしまえばそう言うことだ。例えば亜人のみんなは種族の絆が深いようだが、だからと言って同じ種族内で争いが全くないかといえば決してそんなことはないはずだ」
「ああ、そうだな。俺たちの村は人数が少なかったし、力を合わせないと生きていけなかったから、喧嘩しても争い自体はなかった。でもあそこに落ち着く前まではいろんな場所で迫害を受けたよ。人間からもそうだし、ミノタウロスにも襲われた。まあ、同族ってよりはオレたちが半端ものってことが原因だったのかもしれねーけどさ」
そう話して俯くチェーダに俺は優しく声をかける。
「なあ、チェーダ」
「なんだよ?」
「俺はチェーダが好きだぞ?」
「はうあっ!?」
「だから、お前がミノタウロスハーフとして、生まれて来てくれたことに感謝しているよ。だって、お前が生まれて来てくれたからこうして今お前と会えて一緒に生活できるようになったんじゃないか」
「はわわわわ・・・」
顔を真っ赤にして俯き、あわあわするチェーダ。かわゆし。
「パナメーラやマカン、エイカたちももちろん好きだ。お前たちの種族がミノタウロスハーフだからどうだと言うつもりは全くない。お前たちの存在そのものが愛しく思えるよ」
「「「はわわわわ・・・」」」
チェーダに続いてあわあわ組が増えてしまった。
「奥さんズのみんなもそう。人間だって、魔族だって、竜人族だって、ダークエルフだって、古代竜だって、みんな好きさ。種族なんて関係なく、君たちが好きなんだ」
「「「「はわわわわ・・・」」」」
みんなで仲良くはわわわわ。仲良きことは美しきかな。
「全く逆も言える」
「逆・・・?」
イリーナが首を傾げる。
「そう、逆。多くの人間を屠ってきた。主に盗賊や、貴族の悪党とか」
「それは当然の事ですわ」
凛とした表情でカッシーナが俺の行動を肯定する。
「街を混乱に陥れようとした魔族や悪魔も仕留めた。敵対的だった狼人族にキツく当たったりもした」
「それも当然だよね・・・必要な事だね」
サリーナがうんうんと頷いている。
「つまりは、俺は俺の判断で敵と味方を判別し、自分の生活や大切な人の生活が脅かされると思ったときには、相手に容赦しないつもりだ。だから、侵略戦争の防衛にも手を貸した。人類の守護者と言われた勇者も俺たちに敵対したから排除した」
「・・・あのクズ勇者の排除はとうぜんですわ」
フィレオンティーナの顔が険しくなる。嫌な事思い出させちゃったか。
「まあ、俺の心はシンプルだよ。敵対には敵対を、友好には友好を。そんなに簡単なものではないけど“鏡よ、鏡”、まるで鏡に映ったそのものの様に相手に接して来たつもりだ。そしてこれからもそうするつもりだ」
「では、進行してくる魔王軍は・・・」
「もちろん全力で叩く。魔界に攻め入るつもりも、魔族を根絶やしにするつもりも全くないが、今この人間界で平和に生活している人たちを脅かすのであれば、その存在を敵として認め、排除する。できれば対話したいんだけどね」
「対話・・・ですか」
アナスタシアが少し驚いたような表情を浮かべる。今まで常に俺の説明は悪・即・斬だったからな。
「そう、対話。相手に聞く耳があれば、しゃべる口があればお互い意思疎通ができる。相容れないことはあれども、落としどころを探ったり、お互いの要求から妥協点を検討できるかもしれない」
「なるほど・・・」
「逆に、人間でもこの前のリセル・ローフィリア神聖国のクソッタレどもの様に、自分たちの都合のいい神をでっち上げ、自分たちの意にそぐわない人々を勝手に悪のレッテルを貼り殺してきたあんな連中はまさしく殲滅していい対象だ」
「あの連中はひどかった!」
「まあ、あんな国でも少しはまともな人間がいたから全部が全部ではなかったのが救いだったけど、ああいった自分たちの都合だけで判断し、相手の言い分を聞かずにこちらを一方的に蹂躙しようとする輩には徹底して対抗する。具体的には殲滅」
「わお、殲滅しちゃうんだ」
「そういった連中は一度交戦するとなかなか引き下がらないから、後顧の憂いを断つためには殲滅が一番。キミたちより大切な命なんて、この世にはない。だから敵は殲滅」
テレテレの奥さんズ。なぜセバスまでテレる。解せぬ。
「大事なのは『見極める』ことだ」
「見極める・・・」
「そう、この人物が、連中が、存在が、『良い』のか、『悪い』のか。できるだけ思い込まず、正しい情報を探り出し、目で見て話して耳で聞く。魔族だから悪、人間だから全部助ける、そんな大雑把な括りで行動はしない。魔族だろうと、亜人だろうと人間だろうと、頑張って生きているヤツ、一生懸命生活している奴が幸せになれない世の中なんて間違ってる。俺にもし何かを救える力があるのならば、そんな人たちを守っていきたい。人間でも、亜人でも、ハーフでも、魔族でも、そんなの関係ない。一生懸命、幸せを目指して頑張って生きていこうとする奴が幸せになる世の中にしたいし、そんな世の中を守りたい」
俺の真剣な眼差しに奥さんズの面々や屋敷の仲間たちも大きく頷く。
「みんな、力を貸してくれ!」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
魔王軍侵攻の対応の前に俺は家族のみんなと心を一つにすることができた。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。
下の5つの☆を★にしていただくと、西園寺にエネルギーチャージできますv(^0^)v




