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第353話 邪竜の討伐にはすぐ行こう

ブックマーク追加、★評価等誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


八輪の超大型馬車が街道を疾走していた。

皆が驚きを持って見送るのは、その見た目の大きさ、豪華さだけが理由ではない。

大型の馬車なのにやけに静かで揺れの少ない走行姿勢。その馬車を立派な狼牙四頭が牽くというその迫力。そしてその疾走するスピード。何もかもが規格外であった。


「思った以上に揺れないのだな、この馬車は」


馬車の中では大型ソファに身を沈めて寛ぐイリーナが感想を述べる。


「なんでも最新鋭の技術を用いたとか」


「それもヤーベさんのアイデアなんだよね!」


「馬車のフレームとか、サスペンショ?とかいうのも全てミスリルで出来ているらしいですわ」


ルシーナ、サリーナ、フィレオンティーナが聞きかじった情報を持ち寄った。

実のところ、彼女たちの言う通りヤーベは馬車のさらなる改造のため、ゴルディンと何度も打ち合わせを行っていた。


サスペンションは独立懸架のダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。馬車のフレームと合わせて全てミスリルを材料として製作させている。この辺りはヤーベが大人になっても趣味でラジコンカーを楽しんでいた経験が存分に生かされることになった。

また、ミスリルは鉱山都市マーロで現在豊富に採掘が進んでいることもあり、自重無しにつぎ込んだ結果足回りや骨格部分は総ミスリル製という超豪華な馬車が出来上がった。

その上、馬車の本体はなんとキングトレントの木材を使用して製作されている。<火球>(ファイアボール)程度では傷すらつかない防御力を誇るボディが出来上がっている。

その上風の精霊魔術が施され軽量化、風圧減少などの効力が付与されている。

ぶっちゃけ、世界最強の馬車が出来上がっていた。


「いや、実に軽いな」

「牽いていないくらいだな」

「これなら負担も少ないですな」

「楽でいいでがんすな」


馬車を牽いている狼牙族。なんと四天王勢ぞろいであった。

氷牙、雷牙、風牙、ガルボの四頭が牽く大型馬車はまさしく街道を疾風のごとく突き進んでいった。


「あ、そろそろ街道から離れて草原の方へ移動しましょう」


「どうしてですの~」


「この馬車最大の秘密兵器を使用するためですわ!」


カッシーナがふんすと両手でゲンコツを握る。


「どんな秘密兵器なのですか?」


ロザリーナが興味津々で前のめりに聞いてくる。


「お見せしましょう!この馬車の真の力を!」


そう言ってカッシーナが先頭部分の窓の下についているスイッチをポチッと押す。


ガコンガコン!


馬車の後方部左右に収納されていたロケットエンジン(?)が飛び出てくる。


「アフターバーナー点火!」


ドウンッ!!


ロケットエンジンが火を噴いて馬車が猛加速していく。


「「「「ぬおおおおおおっっっっっ!!!!!」」」」


馬車が浮かび上がりロケット加速した馬車はまさしく砲弾のごとく草原をかっ飛ばしていく。狼牙四天王たちの足元も浮き上がり、四頭はまるでスーパーマンが空を飛ぶがごとく四肢を伸ばして空を飛んでいた。







「いや、マジで驚いたな」


「すごい早かったですね!」


「でも馬車の中は全然揺れなかったね~」


イリーナ、ルシーナ、サリーナがのんきに喜んでいるが、フィレオンティーナはあまりにぶっ飛んだ馬車の性能に呆れかえっていた。


「ここが依頼のあった村ですか?」


きょろきょろと村の入口を見回すアナスタシア。そんな一同を見た村人が村長を呼んできたのか、村の奥から老人が小走りでやって来た。


「おお、あなた方は一体・・・」


絶世の美女軍団が超豪華な馬車から何人も降りて来たこの状況に全く理解が追い付いていない村長。


「我々は冒険者ギルドで邪竜シュバルツィングスターの討伐依頼を受けてきた冒険者ですわ」


ドヤ顔で説明するカッシーナ。だが、その後ろでふとイリーナが首を傾げた。


「そう言えば、パーティ名を決めていなかったな」


「ああ、そう言えば!」


サリーナがポンッと手を打つ。

ギルドで個々の登録とランクテストを行った後、七名全員でパーティ登録をしたのだが、パーティ名は後で決めればいいかとその場では検討しなかったのである。


「決めておかなかったから、貴方たちは一体・・・と聞かれても名乗れませんでした・・・」


アナスタシアは余程名乗りたかったのか、ものすごく肩を落としてしまった。


「お、お嬢さん方があの邪竜シュバルツィングスターの討伐を・・・?」


「うむ、我々に任せておくといい」


ドン、と胸を叩くロザリーナに村長は二の句が継げない。

その横に若い男がやって来た。


「親父、とりあえず村で一休みしてもらったら? ここから火竜山の河口までは一週間くらいかかるだろうし、きっと彼女たちも準備が必要だろうし」


村長の息子らしい男はカッシーナたちにとりあえず休んでもらえるよう村へ案内を買って出た。


「じゃが、あの邪竜はこの村の家畜をほとんど食い尽くしてしまっておる・・・。次は村人が犠牲になるかもしれんのじゃ、あまり悠長な事は言ってはおれん・・・」


肩を落とす村長にフィレオンティーナはにっこりと微笑みかけた。


「お気持ちはありがたいのですが、これからすぐ邪竜討伐に出かけますので、お気持ちだけ頂いておきますわ」


フィレオンティーナは笑顔のまま即討伐に出発すると村長に宣言する。


「ええっ!? すぐに火竜山へ向かわれるのですか? 火竜山の河口への道のりは相当険しいですし、日数もかかります。この村でしっかりご準備をなさった方が・・・」


「いえ、早く討伐して旦那様の元に帰らないといけませんので」


そう言うと奥さんズのメンバーがフィレオンティーナの周りに集まる。


「行きますわよ! <飛翔(フライト)>!」


フィレオンティーナの周りを空気の層が包んだかと思うと、七人全員が空中に浮かび上がる。


「火竜山の河口に向けてしゅっぱーつ!」


あっという間に空のかなたに消えていく美女七名をただ茫然と村長たちは見送ることしかできなかった。






「おい、どうする?」

「とうぜん護衛に出向かねばなるまい」

「だが馬車の番も必要であろう?」

「オ、オイラ留守番はもう嫌でがんす!」


誰かが馬車の番のために残らなければならない。

だが、今まで留守番率の高かったガルボが早速駄々をこねる。


「ならば私が馬車の番をしましょうか」


自発的に番を買って出たのは風牙であった。


「よいのか?」


「どちらかというと、私は今まで失態が多いので。今回は留守番しておきましょう。乗って帰る馬車を守るのも大事な役目でしょうし」


雷牙の問いに風牙は自嘲気味に答えた。

風牙の失態とは、スイーツ大会で護衛対象のイリーナが攫われてしまった件、ラードスリブ王国の王城での戦闘で奥さんズの護衛を任されたのに勇者に敗北し、フィレオンティーナが傷つけられてしまった件を指していた。

どちらも一歩間違えれば致命的な結果になりかねなかったとはいえ、相手はどちらも強大で、ローガ以外の誰が対応しても同じ結果だっただろうというのは共通した認識であり、風牙だけが劣っているというわけではない。

というか、ヤーベは情報収集及び陰からの護衛任務では最も風牙の能力を買っているのだが。


「では風牙よ、後は任せるぞ!」


氷牙達三頭が空を飛んでいった奥さんズの面々を追いかける様に火竜山へ向かう。


「たまにはゆっくりするのもよいか」


風牙は欠伸をしながら馬車の前にゆっくりと寝そべった。





どこにでも頭の悪い悪党というという者は存在するらしい。

村の入口に停められた誰が見ても豪華な馬車。

それは村を救いに来てくれた冒険者たちの持ち物だったのだが、そんなことは関係ないとばかりに馬車を狙う二人組の姿があった。


「すげぇ・・・あの馬車を盗んで王都で売ったら俺たちは大金持ちだぜ!」

「これで王都で好き放題できるな!」


短絡的な若者二人が馬車へ近づいていく。


(やれやれ・・・この風牙が馬車を守っているというのに、お前たちなんぞに盗ませるわけがないだろうが・・・)


目を閉じて休んでいた風牙だったが、その気配だけで近づいて来た二人組の素性を見破っていた。


(村の若者たちだろうし、食い殺すわけにもいかんしな。どうしたものか)


馬車を盗もうとする二人組の処理方法を検討し始めた風牙はチラリと片目を開ける。

二人の若者は馬車の扉を開けようと手をかける。


バリバリバリ!


「「アバババババッ!!」」


まさかの電撃によって二人はあっという間に黒い煙をプスプスと上げながらその場に倒れた。


「・・・馬車の防犯設備は万全なようだ・・・」


風牙はちょっと遠い目をしながら呟くと、再び昼寝に興じることにした。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 村人が奇声になるなんてとってもヤーベな展開ですね 帰省でも、寄生でもなく奇声ですから、皆さんプギャーですね 犠牲なきもしてきたけどキットこれは村人が奇声を上げて 踊り出したりする呪いが…
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