第347話 たとえテンプレが変化球だったとしても臆せずフルスイングしよう
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「なにごちゃごちゃ言ってんだよ!」
「早くこっち来て酌しろやぁ!」
「俺たちCランクパーティ<野蛮人>に逆らって王都で冒険者やっていけると思うなよぉ」
嫌らしい顔をしながらテーブルから男たちが立ち上がる。
「グフッ!」
「クフッ!」
「ウププッ!」
イリーナ、ルシーナ、サリーナが思わず笑ってしまう。
「バ・・・野蛮人とは・・・」
「そのままですわねぇ」
ロザリーナとフィレオンティーナがあきれ果てた顔をしながら男たちを見つめた。
「あらあら、もしかして私達ナンパされているのでしょうか?」
なぜか嬉しそうにアナスタシアがウキウキしていた。
「アナスタシアさん? あれはナンパの中でも最悪レベルで、ナンパというより人さらいとか、強盗とか盗賊とか山賊とか、そんな連中ですよ、きっと」
何気にカッシーナがめちゃくちゃひどいことを言っていた。
「ああっ!? チョーシくれやがって! 痛い目見ねぇとわからねぇようだなぁ」
はあ、と溜息を吐きフィレオンティーナが一歩前に出る。
奥さんズの中でもロザリーナと並んで実戦経験が豊富なフィレオンティーナが他の奥さんズの面々を守るように動いた。
「君たち、邪魔だよ」
ボグッ!
「ごはっ!」
思いっきり後頭部を殴られた<野蛮人>の一人が崩れ落ちる。
「モテない連中が何騒いでんだよ?」
「てか、チョー美人じゃん!お前らに何とかできると思ってる方がどうかしてるっての!」
「・・・確かに美しい」
盗賊の集まりの様だったCランクパーティ<野蛮人>の後ろに現れたのはやたらとキラキラ感が漂うイケメン五人組だった。
「お、おい!ありゃあこの王都冒険者ギルドの最強パーティ・・・」
「ああ!Aランクパーティー<黄金の道>の連中だぜ!」
「やっと帰って来てくれたのね!」
ギルド内の他の冒険者連中やカウンター内のギルド職員の女性が騒めきだす。
「邪魔だよ、散ってくれ」
「わわわ、わかったよ」
気絶した男を引きずって慌ててギルドを出ていくCランクパーティ<野蛮人>のメンバーたち。これだけたちの悪い連中である、一つくらい「覚えてろ」の捨て台詞でもあってもよさそうなものだが、それすら言えないほどの実力格差があるのか、すごすごと入り口の扉を押して出ていった。
いかつい筋肉マッチョイケメン戦士である『鉄壁の壁』アーノルド。
クリスティーナ教の爽やかイケメン神官『白き癒し手』サレンダー。
無口で陰があるのがまた人気になっている魔術師『無限の魔力』フーリン。
長身細身で二本の剣を腰に差したイケメン剣士『双剣の貴公子』ベルキラ。
そして・・・
「あれが『閃光の勇士』マサキだぜ!」
ロン毛の金髪を揺らしたいけ好かないイケメン、それが『閃光の勇士』マサキであった。
この五人が組んだパーティ<黄金の道>は王都冒険者ギルド最強と呼ばれ、その実力はAランクパーティとして登録されていた。
「お嬢さんたち、もう大丈夫だよ」
バチコンとウインクを決める『閃光の勇士』マサキ。
奥さんズの面々はドン引きと唖然が半々であった。
「マサキ、お嬢様方は怖い思いをされたでしょうから、お茶にでもお誘いしては?」
「お、そりゃいいねぇ、お嬢さんたち、そっちのテーブルでお茶でもご馳走するよ!」
『白き癒し手』サレンダーの言葉に大きく頷き、『閃光の勇士』マサキはフィレオンティーナたちをテーブルへ案内しようとした。
「結構ですわ。わたくしたち、これから冒険者登録を行わなければならないので」
つれない反応でカウンターに再び向かうフィレオンティーナ。
その反応にムッとしたのか、『双剣の貴公子』ベルキラは鼻で笑いながらバカにする。
「お嬢さん方が冒険者登録? けがをする前にやめておいた方がいいと思うけど?」
「そうそう、俺たちとお茶を飲んでいる方がいいと思うぜ!」
ベルキラの言葉にかぶせる様にマサキもヘラヘラと笑う。
「冒険者登録をお願いいたしますわ・・・えーと、いち、にい、さん・・・」
そう言ってフィレオンティーナはイリーナたちを見回して数を数える。
「わたくしとイリーナさんはすでに冒険者登録を行っていますから・・・」
「あう・・・私は登録して薬草採取を一回こなしただけだから、Fランクのままだぞ・・・」
ちょっと涙目になるイリーナ。
「まあまあ、今の戦闘力を他の皆さんと一緒にチェックしてもらえばいいですわ」
そう言いながらカッシーナを筆頭にルシーナ、サリーナ、アナスタシア、ロザリーナの五人の登録を依頼するフィレオンティーナ。ちなみにリーナは冒険者登録できる年齢に達していないので屋敷でお留守番である。ヤーベが喫茶店<水晶の庭>の修理作業に出かけてしまい、奥さんズの面々にも置いていかれるということでギャン泣きだったのだが、同じ幼女枠?の<古代竜>ミーティアと神獣たちが一緒に留守番することでひとまず落ち着いている。
「・・・おいおい、これだけガン無視って記憶にねーな」
あまりに相手にしないフィレオンティーナたちの態度にムカついて来たのかマサキは剣呑な雰囲気を出し始めた。
「・・・では冒険者登録するのだし、戦闘力テストを俺たちが請け負えばいい」
『無限の魔力』フーリンがぼそりとつぶやく。
「そりゃいいや! 俺たちが冒険者としてやっていけるかテストしてやるよ!」
マサキがヘラヘラと笑いながら腰に手を当てて偉そうな態度をとった。
「ギルドのテストはギルドの職員の方が対応されるのでは?」
「そうとも限らんよ。ランクの高いパーティに協力をお願いすることもあるからね」
フィレオンティーナの口にした疑問に答えたのはカウンターの向こうに現れたローブ姿の眼鏡をかけた男だった。
「ギルドマスター、本当にAランクパーティの<黄金の道>の皆様にテストを依頼するのですか? といいますか、初回登録のFランクは戦闘テストなどありませんが・・・」
「なに、御遊び気分のお嬢様方に現実ってヤツを教えた方がいいかと思ってね」
成り行きを見守っていた受付嬢の言葉に、眼鏡をクイッと指で上げながら、いやらしい笑いを浮かべて答えるギルドマスター。
「ギルドマスター? 貴方が? モーヴィンさんやゾリアさんはいらっしゃいます?」
フィレオンティーナの問いかけにムッとするギルドマスター。
「お二人は冒険者ギルド全体を統括するグランドマスターと副グランドマスターだ。通常業務で顔を出すことはない」
存外にお前がなぜ知っているのだ、という表情で答える。
「あら、お顔を出していただけないんですのね・・・」
頬に手を当ててほう・・・と溜息を吐くフィレオンティーナの色っぽさにギルド内の冒険者たちだけでなく、カウンター内のギルド受付嬢もドキドキする。
「さて、地下の訓練場でテストを受けてもらおうか」
「さあさあ、現実ってやつを教えて差し上げようか!俺たちが勝ったらデートしてくれよな!」
ギルドマスターの声にしたり顔のマサキ。 なぜか冒険者登録をするための戦闘テストなのに自分たちが勝った時の要求を突きつけてきた。
まともなギルド嬢や冒険者たちは、素人の女性が初めて冒険者登録するというのに、戦闘テストを行う上、勝ったらデートしろと迫るAランク冒険者たちに開いた口がふさがらなくなっていた。
「ちょっとゲンメツね・・・」
カウンター内の受付嬢たちが<黄金の道>の評価を下方修正する。
だが、フィレオンティーナはさらに斜め上の反応をした。
「それで、勝ったらわたくしたちはAランクにでもしていただけますの?」
ピシリ。
ギルド内の空気が一瞬張り詰める。
初めて冒険者ギルドに冒険者登録に来たうら若き美女軍団。
その女性たちを戦闘テストするのはこの王都冒険者ギルド最強のAランクパーティ<黄金の道>である。その相手に勝ったらAランクでいいかと平然と宣うフィレオンティーナに声も出ない一同。
「クッククク・・・世間知らずなお嬢様にもほどがあるな。いいだろう、そこのAランクパーティ<黄金の道>に勝ったらギルドマスターの裁量でAランクカードを進呈しよう」
「舐めやがって・・・俺たちが勝って速攻でお茶してやるぜ!」
怪気炎を上げる『閃光の勇士』マサキ。
さすがに腐っても?Aランク、盗賊チックなCランクパーティ<野蛮人>の連中よりは紳士的であった。だからといって褒められた態度でもないのだが。
「なんか変なことになってないか?フィレオンティーナ」
イリーナが心配そうにフィレオンティーナを見つめる。
「旦那様の言うテンプレですが、なんと言うか、変化球チックですわね」
カッシーナが首を捻る。野球のない世界ではあるが、ヤーベがまっすぐではないことを何かにつけて「変化球」と表現するのですっかり奥さんズの面々にも変化球のような野球用語が浸透していた。
「たとえテンプレが変化球であっても、フルスイングで打ち崩すだけですわ!」
ブンッと魔導士の杖をバットの様にフルスイングしたフィレオンティーナはニヤリと笑うのであった。
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