第344話 宿舎を見学しよう
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「改めまして! 館内をご案内させていただきます、狐人族のソフィアと申します! よろしくお願いします!」
元気に挨拶するソフィアと名乗る女性。茶色の髪に狐耳がピコピコと揺れている。
「君は奴隷の身分なんだね」
ワーレンハイド国王がストレートに尋ねた。
「はい! と言いますか、この館内だけでなく、柵で囲われたこの鉱山エリア内のほとんどのスタッフが奴隷身分のものか、元奴隷の者たちばかりです」
「元奴隷もいるのですか?」
リヴァンダ王妃が訪ねた。
「はい! このリカオローデンの鉱山エリアでは、まじめに働くとお給料が溜まって、それほど額の高くない借金奴隷の者たちは自分の身分を買い戻すことができるんです! これもスライム伯爵様のおかげです!」
嬉しそうにソフィアは説明した。
「尤も、私は買い戻せる額のお給料はたまったのですが、自分の買い戻しは行っていませんが」
「え? なぜだい? 買い戻せば自由の身になれるじゃないか」
カルセル王太子が理解できないという表情で問いかけた。
「今現在、不自由を感じていませんので・・・。犯罪奴隷の人たちは柵の内側エリアでしか生活を許されてはいないのですが、私のような借金奴隷は普通に街に出かけることができますし、上司の許可を得れば里帰りなど、遠出も認めてもらえますから、なんの不自由も感じませんね」
「ええ~、そんなに自由になのかい? 逃げたりしたらどうするんだろうね?」
「ああ、逃げるなんて私は考えられませんね。スライム伯爵の元でお仕事していればたくさんお給料がもらえますし、部屋はきれいですし、ごはんは美味しいですし・・・。逃げてこの生活を手放すなんて、愚の骨頂ですね」
「なんと・・・」
ワーレンハイド国王が言葉を無くす。
元来奴隷とは使いつぶす労働力という意味合いが強かった。
だが、スライム伯爵の考え方はかなり違っているようだ。奴隷を非常に大切に扱うことにより、労働者としての価値を高め、結果より高いレベルでの労働力として確保しているという事なのだろうか。
ワーレンハイド国王が顎をさすりながら考察していると、
「それに・・・奴隷のままならスライム伯爵のものって言えるし・・・」
とソフィアが少し頬を赤く染めてつぶやいた。
「ああ・・・」
カルセル王太子が苦笑する。
奴隷の身分から解放されてフリーになるより、奴隷としてでもスライム伯爵の所有である、と言える方がうれしいのだ。そのように感じさせるスライム伯爵に空恐ろしいくらいの存在感を感じた。
「さて、こちらにどうぞ。まずは作業員たちのお部屋を見学して頂きますね!」
少し赤くなった顔を背けて、ソフィアは歩き出した。
「こ・・・これが奴隷作業員の部屋・・・なのか?」
「はい! ここは基本的に犯罪奴隷、それも重犯罪奴隷者たちの部屋のモデルルームです。実際に現在作業者たちが住んでいる部屋と同じ仕様になっています」
ワーレンハイド国王たちが部屋に入り周りを見回す。
確かに所謂六畳一間といったイメージの部屋だが、そのベッドは高級布団のようにふかふかだった。調度品もきれいにそろえられており、テーブルやいすもあり。サイドチェストもある。チェストの上にはペンなどの筆記具も置いてあった。
「本当にこんなレベルの部屋が・・・?」
「ええ、この建物も他の宿舎も、すべてこの部屋と同じレベルの部屋になっています」
「一人一部屋なんですの?」
「はい、一人一部屋です」
「まあ・・・」
リヴァンダ王妃が信じられないと言った表情を浮かべる。
トイレや浴場、食堂などは共同になっているが、個人部屋になっていることにまず驚く。そして重犯罪奴隷者たちも全員毎日風呂に入ることができる。ヘタをすれば裕福でない貴族たちよりもよい生活を送っているようだった。
「こちらが共同浴場です。さすがに男女はわかれていますけどね!」
ウインクしながらソフィアが説明する。
「今は誰も入っていませんが、お湯はもう張ってあります。見学はかまいませんが、御履物は脱いでいただきますね」
そう説明を受けてワーレンハイド国王たちは靴を脱いで風呂場に足を踏み入れる。
「いや、広くないか・・・」
ワーレンハイド国王が広々とした浴場内を見回す。
「あの、ドラゴンの口からお湯が出ているの、王城にも欲しいですわ・・・」
リヴァンダ王妃がドラゴンの口からお湯が出ている彫像に釘付けになっている。
さらに広々とした食堂に移動した一行。
「今は奥の厨房で調理を行っています」
まるで戦場の様に多くの料理人が働いている厨房を見学する。
「後二時間半で夕食の時間だぞ!間に合わせるぞ!」
「「ハイッ!!」」
「いや、すごくいい匂いがするのだが・・・」
「ここではバイキング方式と言って、テーブルに大皿料理がたくさん並びますので、食べたいものを食べたいだけ皿に取って食べるスタイルになっています」
「食べたいだけ食べられる・・・」
リヴァンダ王妃が驚いた表情になる。
「鉱山は肉体労働ですからね。作業員の人たちはとてもたくさん召し上がられますよ?」
ニコニコしながらソフィアは説明していく。
「国民を満足させるためには、食料と住居と言われているが・・・」
「ええ。ここにはそのどちらも高いレベルで確保されていますわ」
ワーレンハイド国王とリヴァンダ王妃は溜息を吐きながらも感心する。
「なぜ重犯罪奴隷者たちにこんな厚遇を・・・」
カルセル王太子は首を傾げた。
食堂を出た一行はエントランスに戻るため廊下を歩いていた。
ガチャリ。
廊下の側壁に並んでいた部屋の扉の一つが開き、一人の奴隷が廊下に出てきた。手には袋をぶら下げていた。
「あら、テッドさん。今日はお休みをいただいたんですか?」
「ああソフィアさん。昨日給料日でしたからね。すぐに地元の孤児院と迷惑をかけた家族に仕送りしたくてね」
嬉しそうに硬貨が入った袋を掲げるテッド。
「ふふっ、贖罪の機会を与えてくださったスライム伯爵様には感謝ですね」
「ああ、本当だよ。スライム伯爵には感謝してもしきれないさ。俺にできることはとにかく一生懸命働いて恩返しすることだけさ」
嬉しそうな笑顔を浮かべると、ソフィアやワーレンハイド国王たちに会釈して廊下を歩いていった。
「あんな明るい犯罪奴隷見たことありませんな」
笑いながら宰相のルベルクはつぶやいた。
「ああ、もうすぐ午後3時ですね。鉱山で働く者たちが休憩に入ります。鉱山にも見学に行かれますか?」
「ああ、ぜひ案内してくれたまえ」
「ではこちらにどうぞ」
一行はソフィアの後ろについて行った。
「バカ野郎! 七坑道の連中に負けてんぞ! そんなことでヤーベのアニキに顔向けできるのか!!!」
「「「オオオッス!!」」」
凄まじい怒号が聞こえる。
みれば坑道からミスリル鉱石を山の様に積んだトロッコを大勢の工夫たちが引いていた。
「俺たちもボスに恩返しだぞ! わかってんな!!」
「「「「ラジャー!!」」」」
「ヤーベの大将に恩を返さにゃ!男が廃るぞ!!」
「「「オオッシャア!!」」」
「テメェら!他の坑道の連中に負ける気か!」
「すいませんお頭!」
「バカ野郎!お頭はヤーベ様だろうが!俺の事はリーダーと呼べ!」
「「「オオッス!!」」」
多くの坑道からイカツイ連中が声を張り上げて我先にと鉱石を運び出してくる。
「な、なんなんだ・・・!?」
ワーレンハイド国王たちがあっけにとられていると、鍋をお玉でガンガンと叩きながら体格の良い女戦士風の狼人族の女性がやって来た。
「お前ら三時の休憩だぞ~! しっかり休憩しろ~! 働いたら許さんぞ~!」
鍋をガンガンと叩き休憩だ、働いたらシバくと脅して回っている。
「は、働いたら怒られるのか・・・?」
「ええ、休憩時間は体を休めよとの仰せですから」
カルセル王太子の疑問に笑顔でソフィアは答えた。
「いまや! ここで隣の坑道の奴らより先に鉱石運び出せぃ!」
「「「ッシャ!」」」
休憩だと言われたのに一部の連中がさらに働こうとしていた。その連中の頭をお玉でガンガンと殴りつける。
「イッテェ!」
「何しやがる!」
「バカどもが!休みの時間だろーが!」
「チマチマ休んでられるけぇ! ヤーベの旦那に恩を返せるかぃ!」
「やかましい! それでお前らが体壊したら元も子もねーんだよ! しっかり休んでそれから働きやがれ!」
お玉を構えた狼人族の女性とドワーフのようないかついが体のひげ面男がにらみ合いが、チッと舌打ちしながら男は近くの水飲み場へ向かった。
「えええええ・・・」
リヴァンダ王妃が呆然とした表情で男たちを見つめていた。
「一体、何があってあの重犯罪奴隷者たちが仕事に燃えているんだ・・・?」
ワーレンハイド国王たちはまるで狐につままれたかのように目の前の情景が理解できなかった。
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