第343話 その目で見て確認してみよう
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「しかし・・・、ものすごく快適な馬車だな」
旧リカオロスト公爵領リカオローデンに出向いてしばらく、ワーレンハイド国王は王家に納入された特注馬車の乗り心地に感動していた。
「スライム伯の乗られている馬車が評判になり、それを作ったゴルディンという鍛冶師に依頼が殺到したそうで、鍛冶仕事を邪魔されたゴルディン師がぶちキレて、結局アローベ商会を窓口にしたみたいですよ。もう数年待ちの人気だとか」
「ええっ!? よく王家に納入されましたね?」
宰相ルベルクの説明にリヴァンダ王妃が驚く。
「スライム伯爵のご配慮に依ります。アローベ商会の会頭はスライム伯爵ですから。王家に献上する特注馬車を優先してゴルディン師に製作依頼して頂いたようで、早い段階で王家に納品されております」
「スライム伯に気を使ってもらっておったか」
ワーレンハイド国王が苦笑する。
黄金三頭竜の皮製品の時も献上品を受け取っていたことを思い出し、ずいぶんとスライム伯爵に気を使ってもらっているものだと溜息を吐いた。
現在旧リカオロスト公爵領のリカオローデンに向かっているこの馬車にはワーレンハイド国王、リヴァンダ王妃、宰相のルベルクにカルセル王太子までもが同乗していた。
「しかし、カルセルまで査察に連れて行っていいのか? ルベルクも来ているし、王城大丈夫なのか?」
「それは大丈夫でしょう、内務卿もおられますし」
ワーレンハイド国王の心配に苦笑するルベルク。
「でも、旧リカオロスト公爵領の査察にカルセルを同行させることを決定させたのはルベルク宰相と伺いましたが?」
王太子であるカルセルまで引っ張り出したことに些か引っ掛かっていたリヴァンダ王妃が宰相のルベルクにさらに問いかける。
「ええ、間違いなく人の上に立つ人間として役立つ経験ができると思いまして」
ニコニコしながら宰相のルベルクが説明する。
その笑顔の理由がわからずにワーレンハイド国王もリヴァンダ王妃も当の本人であるカルセルも首を捻るばかりだった。
「ようこそお越しくださいましたワーレンハイド国王様」
馬車の前で跪くのは旧リカオロスト公爵領の代官を務めるゴッセージであった。
「うむ・・・」
宰相のルベルクはニコニコしているが、ワーレンハイド国王もリヴァンダ王妃も微妙な表情であった。なにしろ、領地に入っても領地の中心地であるリカオローデンの街に入ってもほとんど国王の訪問を歓迎する人が集まっていなかったのである。
確かに華美な出迎え不要、その上忙しいスライム伯爵への連絡も無理にする必要はないとは事前に通達してあった。だが、普通はそれでも気を使ったり国王の来訪を民が喜んだりするのだが、このリカオローデンに到着しても、国王の訪問を歓迎するために人々が集まっているようなことはなかった。ここまで肩透かし・・・というか、言葉を悪く使えば無視されているような状況に出会ったことはワーレンハイド国王やリヴァンダ王妃にとって初めての事であった。
・・・カルセル王太子は今までほとんど外遊を行ったことがなかったのであまりわかっていないようだったが。
馬車から眺めた街並みは、記憶にある以前のリカオロスト公爵領よりずっと活気のある街に変貌していた。以前リカオロスト公爵が魔導戦艦で砲撃し、壊滅したリカオローデンの領主邸(ほとんど城だった)も通常の館に建て替えられていた。
大きく違うのは、領主邸の裏にある大きな鉱山の麓が、長く連なる柵で仕切られていることだった。柵の一部は門の様になっており、そこから出入りできるようだった。
一行はまず領主邸に案内され、お茶のもてなしを受け一息ついた後、早々に旧リカオロスト公爵領の全容調査を行うことにした。
一通りゴッセージから資料の提出を受け、現在の税率軽減対応中の内容と治められる金額、統治状況など様々な報告を受ける。
どれも非常に優秀な状態で、文句のつけようもない状況であることが分かった。
そして、問題のミスリル産出量の報告を受ける。
「現在はミスリル鉱山に7本の坑道がありそれぞれミスリル鉱石を採掘しております。
また、スライム伯のご指示のより、王都の鍛冶師ゴルディン師の弟子たちを呼び寄せ、ミスリル鉱石からミスリルの精製を行っております」
領主邸に入る前、山裾の柵の外側に、大きな鍛冶場が立っていたのをワーレンハイド国王たちは見ていた。ガンガンという大きな音と勢いよく怒声が響いていたのを見ると、鍛冶作業が今も行われているのだろう。
「一体、どうしてこれだけミスリル坑道が増えたんだ? しかも、スライム伯は王国中の重犯罪奴隷を買い集めているそうじゃないか。重犯罪奴隷を使いつぶす勢いでミスリル鉱石を掘っているのではあるまいな?」
剣呑な雰囲気でワーレンハイド国王が詰め寄る。
ワーレンハイド国王が最も危惧していた内容。旧リカオロスト公爵領のリカオローデンにて、スライム伯爵に統治が変わってからミスリル坑道が3本から7本に増え、王国に納められる精製されたミスリル金属が3倍にも増えたことだった。
「ふむ、国王様のご懸念はその辺りの事ですか。ならば、実際にその目でご覧になっていただくのが一番早いかと」
短いあごひげをさすりながらゴッセージが説明する。
その目で見るのが一番とは一体どういうことなのか?
「それでは早速ご案内いたしましょう」
そう言ってゴッセージは席を立った。
ゴッセージが案内すると言って歩いて向かったのは領主邸の裏口から出て柵で囲われたエリアであった。
「右手の何棟も建っている建物が鉱山で働く奴隷たちの宿舎です」
そう言って一番手前の建物に入っていく。
その後ろをついて行くワーレンハイド国王一行。
「いや・・・これが重犯罪奴隷たちの宿舎って・・・」
建物に入ったワーレンハイド国王たちが唖然とする。
その建物はかなりきれいな宿のようなイメージだったからだ。
「いらっしゃいませー! 鉱山作業員宿舎へようこそ! ご見学の方ですか?」
見れば狐耳の獣人の女性が胸元に何か資料を抱えながら挨拶してきた。首輪を身に着けているところを見るとこの女性も奴隷の様であった。
「見学と言えば見学ですが、いつもの別の領土を賜っている領主様ご一行ではなく、このバルバロイ王国を治めるワーレンハイド国王様とその奥方様、王太子様ご一行です」
ゴッセージが何でもないような雰囲気でしれっと国王様ご一行だと説明する。
狐耳の少女はキョトンとした表情で一瞬止まったかと思うと、目を大きく開いて驚愕の表情へと変化する。
「えええ!? 失礼致しました!」
慌てて狐耳の女性が膝をつく。
「よいよい、畏まらなくとも大丈夫だ。それより・・・この施設は何なのだ? 本当に奴隷の宿舎なのか? まるで高級な宿のようだが?」
訝しげにワーレンハイド国王はエントランスを見回しながら疑問を口にする。
だが、その疑問はこの建物に初めて訪れる人たちが必ず持つもののようだった。
「はい、本当に鉱山で働く奴隷たちの宿舎です。私がご案内いたしますね!」
満面の笑みを浮かべて自信満々に案内を買って出る狐耳の少女に、ワーレンハイド一行は顔を見合わせるのであった。
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