第340話 ギャンブルの負けはギャンブルで返そう(イカサマ上等)
秋の夜長はまさスラ祭り! 第五弾をお届けします!
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明日もまさスラ祭り第三弾をお届けします!お楽しみに!!
「ずいぶんとウチの奥さんたちが楽しませてもらった・・・いや、カモられてしまったというべきか」
ギロリと睨みを効かせると、ディーラーの男はビクリと反応する。
「いえいえ、当カジノは真っ当な店でして。奥様方はあくまでもギャンブルで負けた結果の負債にございます」
慇懃無礼と言う言葉がぴったり当てはまるような素振りで話す支配人であるフレーゲル男爵。マジムカツク。
「そうか、ではギャンブルの借りはギャンブルで返すとしようか」
「は?」
「鈍いヤツだな。俺が相手をすると言っているんだよ」
ニヤリと口角を上げながらフレーゲル男爵を睨みつける。
「ほう・・・貴方がギャンブルで白金貨五百枚を返すと・・・ですが、残念ながら貴方に財貨の担保があるかわかりませんのでね」
存外にバカにしたような笑みを浮かべフレーゲル男爵が見下ろしてくる。
こーいうヤツ大嫌い。ぶっ潰す。
「セバス」
「はっ」
珍しくセバスが同行を申し出た。
決して危険がないわけではないと説明したのだが、王都内で旦那様の冒険について行くチャンスと頑として譲らなかったので同行を許可した。
なんでも、いつも奥さんズの面々やゲルドン達が俺と一緒に冒険に出ているのがうらやましかったとか。セバス達屋敷を支える人達にも給料以外で何か報いないとな。
「開けてくれ」
持ってきた小型のトランクの蓋をセバスが開ける。
「なっ!?」
「うおっ!?」
フレーゲル男爵とディーラーの男が驚く。
トランクの中身は白金貨できっちり千枚。結構重かったぞ。
「白金貨で千枚ある。俺も時間のない身なのでな。一発勝負で決めようじゃないか」
「い、一発勝負だとっ!?」
驚いたフレーゲル男爵に視線を刺し、顎をしゃくるように当然だと俺の意を伝える。
「白金貨五百枚の負けなんだろう? だから白金貨もう五百枚。合計千枚をかけて一発勝負だ。そっちが勝てばこの白金貨千枚は自由にすればいい」
ごくりっ・・・。
フレーゲル男爵が唾をのみ込む音がここまで聞こえる。
そりゃそうか。白金貨で千枚が転がり込んで来ると思えば興奮もするか。
どうせカジノ側はある程度必勝の策もあるんだろうしな。
「わかりました。お受けしましょう!」
「ええっ! お・・・いや、私がやるのですか?」
あまりの額にか、俺の威圧にヒヨったのか、ディーラーが及び腰になる。
「当たり前だろう!負けたら許さんぞ!」
「し、しかし・・・」
「その腰抜けの代わりに俺がやる」
カジノの奥からマントを羽織った男が出てきた。
「おおっ! ヴァービー! やってくれるか!」
ヴァービーというらしいな、この男。マントを羽織ったキザ野郎だな。
ヴァービーと呼ばれた男は座っていた男を椅子から引きずり降ろすと、自分がドカリと腰を下ろす。
「君は白金貨千枚一発勝負を挑むと言ったかね?」
「そうだ」
「・・・ふっ、よかろう。このヴァービー・ザ・ギャンブラーがお相手しよう」
わざわざマントをバサリと後ろへやると、胸ポケットからトランプを取り出す。
「新品のトランプだ・・・。勝負はポーカーでいいかね?」
「ああ、かまわない」
「お、おいヤーベ!ポーカーというゲームのルールを知っているのか?」
俺の横で心配そうに耳元でささやき、ルールの確認をするイリーナ。
だが、俺はイリーナの顔に手のひらをスッと向ける。
黙り込むイリーナ。
「君が白金貨千枚の一発勝負を挑みたいという事だからね。親は私が対応させてもらうよ」
「どうぞ」
俺の言葉に新品らしきトランプの箱からトランプを取り出し、カードを切ってシャッフルしだす。
「・・・なんだか、ロイヤルストレートフラッシュで勝ちそうな気がするよ」
カードをシャッフルするヴァービーの手がピタリと止まる。
「・・・今、何と言ったのかね?」
ギラリと俺を睨むヴァービー君。
「聞こえなかったかな? ロイヤルストレートフラッシュで勝ちそうな気がしたんだよ」
「ロイヤルストレートフラッシュだと・・・しかも俺に勝つと言ったのかね?」
「そりゃそうだよ。俺の相手はお前なんだろう? バービー君」
「バービーではない! ヴァービーだ! ヴァービー・ザ・ギャンブラーだ! 間違えないで頂こう!」
激昂気味に声を上げるヴァービー。くくっ、ギャンブラーとか言っているくせに沸点低いのな。こういうタイプはたぶん自分のテクニックに絶対の自信を持っているヤツだ。怒り狂って荒くなっても、自分の絶対の自信を持つ技術は破綻しない。そういう自信があるんだろう。
でなければただの雑魚だ。そんな雑魚がこの場に現れてディーラーを交代すると言うとは思えんしな。
「それで、君が相手してくれるのかな?」
「・・・いいだろう、私が相手をしようではないか。そして私もロイヤルストレートフラッシュで勝つ!」
・・・お互いロイヤルストレートフラッシュ宣言って、全力でイカサマしますって宣言に等しいよな。
「・・・失礼、念のため、魔力感知器をセットさせていただきます」
いけ好かない支配人の横に紳士的な長身の男がやって来てテーブルに赤い水晶のような魔導具を置いた。
「一応魔法を使ったイカサマを防止するための魔導具です。魔力を感知すると赤く光ります」
長身イケメンの説明を聞きながらその男を観察する。
「・・・シュターデン伯爵がこの闇カジノのオーナーでしたか」
「・・・スライム伯。このようなところでお会いするとは、恐縮ですな」
些か引きつった笑みを浮かべながらもきちっと挨拶してくれるシュターデン伯爵。
さすがに伯爵以上の貴族たちの顔と名前はある程度頭に入っているとも。
何せ王の間で伯爵以上の貴族当主は一堂に会することが多いからな。ちゃんとヒヨコ十将軍第八位キュラシーアが貴族たちの情報を仕入れているから、キュラシーアから伯爵以上の貴族の情報をちゃーんと勉強しているのだ。
「どうも。せっかくのカジノなんだ。無事に勝って今後とも安心して遊ばせてもらいたいものですな」
ニヤリと今日一の角度で唇を吊り上げる。
「・・・ええ、ぜひとも楽しい時間をごゆっくりお過ごしいただければ・・・」
だが、言葉とは裏腹に額に浮いた汗をハンカチで拭うシュターデン伯爵。
「・・・また、言ったな・・・勝つと」
「ああ言ったとも、ダービー君」
「・・・私の名はヴァービーだ! ダービーではない! なんだかダービーはマズイ気がするぞ、間違えないで頂こう!」
再びトランプを高速シャッフルし始める。
「親はそちらでかまわないが、配る前に一度こちらで切らせてもらおうか」
「・・・いいだろう」
高速でカードシャッフルを終えると、ヴァービーはカードを俺の前に置く。
「・・・どうぞ」
俺は無言で右手を伸ばす。カードの山を右手で包み込むように持つと、約半分を持ち上げて横に置いた。
「・・・結構」
ヴァービーは俺が切り分けたカードの山を持ち上げ、分けられた山に重ねて一つにする。
その後手に持ったカードを自分と俺にそれぞれ五枚ずつ配り終えた。
「君がロイヤルストレートフラッシュで勝つと宣言したんだ。今更フォールドなどとは言うまいね?」
ここで俺に煽りくれるとは、カードの仕込みは万端というところか。
「ふっ・・・、ベット、オールイン。白金貨で千枚だ」
これで勝てはカジノ側から白金貨千枚をせしめることができる。
五百枚の借金を帳消しにしても白金貨五百枚が儲かる計算だ。
もちろんこのポーカーゲームに勝てばの話だが。今の所、取らぬホーンラビットの角算用にならないよう気を付けるとしよう。
「グッド! コール、白金貨千枚だ」
コールした割にヤツの手元には白金貨千枚などもちろん無い。ヴァービーはこのカジノの雇われディーラーだろうからな。負ければ店が補填するわけだ。
「カードオープン」
「まあ、待て」
奴がカードをオープンしようとするのを俺は制した。
「なんだ? ビビったのか? もう降りることはできんぞ?」
やけにニヤつくヴァービー君。白金貨千枚かけてる時点でビビってなんかいるわけないってわからんもんかね? 自分の技術に自信を持ちすぎるのも問題だね。
「せっかくだから、お互い同時に一枚ずつめくろうじゃないか」
俺は努めて笑顔でヴァービー君に提案した。
「・・・結構」
そう言ってお互い一番端のカードをひっくり返す。
奴はダイヤの10のカードが現れる。
俺のめくったカードはスペードの10だった。
「俺はスペードの10か。スペードは死を意味するとも言われる。死にとりつかれるのはどちらかな?」
「・・・むろん貴様だ」
次のカードは奴がダイヤのJ、俺がスペードのJ。その次のカードは奴がダイヤのQ。俺がスペードのQ。そして四枚目のカードをめくると奴がダイヤのK、俺がスペードのKだった。
「こ、これは・・・」
「ま、まさか・・・」
フレーゲル男爵、シュターデン伯爵がヤツの後ろからテーブルを見て震えている。
伏せられたカードは互い残り一枚。お互いロイヤルストレートフラッシュにリーチなのだ。
「ヤ、ヤーベ・・・後一枚だぞ!」
「ヤーベさんお願いっ!」
フンスっと拳を握って興奮するイリーナと頭の上で手を組んで祈り倒すサリーナ。こいつら本当にギャンブルに向かないだろうね。
「おや、だいぶ顔色が悪いようだね、オービー君」
「私の名前はヴァービーだ! 間違えないで頂こう!」
ヴァービーがドンッとテーブルに拳を叩きつけながら怒鳴る。ホント気の短い奴だ。ギャンブラーに向かないんじゃないの?
「私がロイヤルストレートフラッシュで勝つ! 間違いないのだ!」
そう言って最後のカードをひっくり返すヴァービー。
その場の全員が固唾を飲んで見守る中、開かれたカードは・・・スペードの2だった。
「ばっ・・・バカなっっっっっ!!!!」
両手をテーブルついて立ち上がり愕然とするヴァービー君。
「や、役無しだとっ・・・!」
その瞳はまるで信じられないものを見つめる様にカードに吸い込まれたままだ。
「どうやらスペードの2に貫かれたのは君だったようだな」
ニヤリと笑いながら俺は最後のカードをひっくり返す。
「「「なっ・・・!!!」」」
テーブルの向こうの三人は魂が抜かれたように驚愕の表情を浮かべる。
俺のひっくり返したカード、それは紛れもないスペードのエースであった。
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