第336話 天空城騒動後日談 押し付けられる偉い立場は華麗にスルーしよう
秋の「まさスラ祭り」はっじまるよ~
そんなわけで(どんなわけ?)今日から秋の夜長はまさスラ祭り!ということで、四連投、もしくは五連投で物語を更新していきたいと思います!ぜひ皆様応援の程よろしくお願いいたします。
それでは天空城ウラーノス騒動後日談、スタートです!
「辺境伯っっっ!! ヤーベ殿は今日から辺境伯だっっっ!!」
「いらないで~す」
「い、いらないってなんだよ!? いらないって!!」
「いらないものはいらないんです」
「今をトキメク辺境伯だぞっ! みんなの憧れの的だぞ!」
「憧れの的とか迷惑なだけだし」
と言うか、辺境伯がみんなの憧れだって初めて知ったんだけど。
だいたい、偉い立場って全然魅力ないよね。しがらみばっかりがふえるばっかりで、なんのうまみもないよ、実際。
悪党が暗躍して偉い立場とか権利とかにしがみついてるけど、ホント理解に苦しむよね。
そう言ってヤーベは達観としているのだが、自分の実力だけで一生使いきれないような大金を稼ぎだし、高い生活水準を維持し、挙句自分の周りに慕ってくる美女がわんさかといるこの状態は、基本悪党たちが羨む、目指すべき生活そのもの、手に入れたい未来そのものであることにヤーベ自身は気づいてはいない。
「なんでだよっ!? 辺境伯だぞ!! 自分の兵団持てるんだぞ! 貴族の中でも羨望の的だぞ! 発言力というか、影響力は計り知れないんだぞ!」
さっきから俺の目の前で唾を飛ばしながらがなり立てて力説しているのはこの国、バルバロイ王国の国王ワーレンハイド国王その人だ。
何でも俺の功績とやらに報いるために伯爵の地位から陞爵して辺境伯にするつもりらしい。義務ばかり増えて面倒だからノーセンキューです。
「自分の兵団だぞ!軍隊OKって言ってるんだよ!?」
俺の顔の前に顔を近づけて怒鳴るワーレンハイド国王。だから唾が飛ぶってば。ソーシャルディスタンスを考えてもらいたいね。
「軍隊なんていりませんよ。メンドクサイ」
「め、面倒って・・・」
唖然とするワーレンハイド国王。そんなに軍隊なんて欲しいのかね?理解に苦しむね。
「・・・まあ、スライム伯・・・ヤーベ殿はその存在そのものが規格外といいますか・・・。今更辺境伯だからその影響力が増すというものでもないですしなぁ。なにせヤーベ殿ですから」
苦笑しながら呟くように発言したのは宰相のルベルク殿だ。
「・・・辺境伯なら影響力が増すだろ?」
首だけで後ろをグリンと振り向いて宰相に問いかけるワーレンハイド国王。首だけ後ろ向けるなよ、怖いから。
「ここまでの成果を見せられてはヤーベ殿の存在は男爵だろうと辺境伯だろうと変わりませぬよ。ワーレンハイド国王もヤーベ殿の爵位にかかわらずその言を受け止めるでしょう?」
「むう・・・確かに」
ワーレンハイド国王が黙る。なんだよ、俺そんなに無茶なお願いとかしたことないつもりだけど?
「それにしても・・・貴女の見初めた旦那様は本当に規格外ねぇ・・・。今更ながらに貴女の眼力に感謝してもしきれないくらいよ」
「えへへ・・・すごいでしょ?」
横に目を向ければ少し離れたテーブルで王妃とカッシーナが優雅にお茶を飲んでいる。
俺とカッシーナはワーレンハイド国王に呼ばれて王城に来ていた。
とりあえず天空城の発見から墜落までのいきさつを説明するために来たつもりだったのだが、その話が終わった後、別の部屋に呼ばれて、今の状態に至る。
「もういっそ公爵でいいのでは? 辺境伯や侯爵ではたいして変わりませんし」
「こ、公爵!? 王家に連なる者として迎え入れると!?」
急に宰相のルベルクが不穏な事を言い出した。
より偉くしようとしてどうするんだよ、要らないって言ってるのに。
大体前世でも主任に出世してよかったね、と言われたけど給料は微々たるお手当だけで仕事が倍増するっておかしくない?現場の仕事そのままに管理を増やされるってただ苦しいだけですけど!?
「ええ、現在バルバロイ王国三大公爵家と呼ばれた公爵家の内、二つは取り潰しになっておりますので実質ドライセン公爵家だけですからな。それにヤーベ殿にはすでにカッシーナ王女が降家して嫁いでおりますし、王家の血筋は保たれております。旧リカオロスト公爵領を治めているのもヤーベ殿・・・スライム伯爵ですからな。実際何の問題もないかと」
「おおっ!素晴らしい!さすが宰相、名案だ!」
「名案だ、じゃねーよ! メイはメイでも“名”じゃなくて“迷”の方だよ!」
バンバンと机を叩いて抗議する。
「いやっ!もう決めた!ヤーベ殿は今から公爵だ!」
「勝手に決めるなっ!」
「いーや、勝手に決めるし。だってワシ国王だし。それが嫌ならヤーベ殿が国王やったらいいんじゃね?」
すげードヤ顔で宣うワーレンハイド国王。マジムカツク!MK5!マジでコブシ叩き込みたい5発分!
「俺とカッシーナの子は産まれる前から王位継承権を放棄させるとサインさせたのはそっちだろ!公爵になんかなれないはずだろ!」
「確かにヤーベ殿とカッシーナ王女のお子様には王位継承権を放棄頂いておりますし、カッシーナ王女ご自身の王位継承権も放棄頂いておりますな」
「そうだろ!だから公爵家なんてムリじゃん。王家に何かあったら公爵家が王位を守るんだろ?」
「ぐむむ・・・」
しれっと説明する宰相ルベルクにニヤニヤして質問を返す俺。だから公爵なんていらないんだって。後、ワーレンハイド国王がぐむむって言ったな。ホントにぐむむっていう人、まあまあいるのね実際のところ。
「ですが、ヤーベ殿とカッシーナ王女お子のさらにお子まで王位継承権を放棄せよとの契約にはなっておりません」
「・・・ハイ?」
今ルベルクは何と言った?
「ですから、ヤーベ殿とカッシーナ王女のお孫さんには王位継承権が発生するのですよ、何せ正当なバルバロイ王家の血を半分受け継いでいるのですから」
「なんですと~~~~~!?」
おかしくない!? ねえ、おかしくない!?
親に王位継承権がなくて、その子供も王位継承権が無いのに、なんでその子供(孫)に王位継承権が復活するのよ!?
「要は、カッシーナ王女やそのお子様の王位継承権は特別な手続きにより凍結、放棄という流れになっております。ですが受け継がれる血は確かに王家の血なわけですから、特別な手続きを取らない場合、もちろん王位継承権が発生するわけです」
「えええ!?」
「当該人物の王位継承権を凍結、放棄させても、当該人物の権利のみが失われていると解釈すればそのお子様以降の血筋においては王位継承権が発生しても問題ないと考えることができますな」
「絶対おかしいだろ! そんな解釈をすれば、王位継承権をはく奪されて追放された人物の子孫だって王位継承権が復活することになるだろ!」
「王位継承権のはく奪と自発的放棄は違いますからな」
「ぬおお~~~ああ言えばこう言う!」
俺がぷるぷるしているとリヴァンダ王妃が笑った。
「あらあら、それじゃカッシーナはヤーベさんとたくさん子づくりしていっぱい子供を産まないとね?」
優雅にカップを傾けお茶を一口飲みながらそんなことをカッシーナに向けて言い放つリヴァンダ王妃。
カッシーナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あ、じゃあ俺を公爵なんかにしたらカッシーナと子づくりしないで王家の血を絶やしてやるわ!」
もうやけ気味に無茶苦茶な事を言って駄々をこねよう。
「そ、それは嫌です!私もかわいがってくださいませ!」
ガチャン!と派手にカップがソーサーにぶつかる音がしたかと思うと、そんなセリフを大声で宣ったカッシーナが立ち上がっていた。
一斉にその場の全員がカッシーナに視線を抜ける。
「あ・・・」
自分が何を言ったのか理解したのか、顔をさらに真っ赤にして頭からぷしゅ~と煙でも吐くかのように静かに首を垂れて座るカッシーナ。
・・・かわいい。今日の夜は頑張ることにしよう。
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