投稿400話達成記念 リーナの成長日記⑤ 結成!解決リーナ団(前編)
お待たせしました!投稿400話達成記念にリーナの成長日記⑤をお送りいたします!ちょっと話を詰めて前、中、後編の3部にてお届けいたします!
お楽しみいただければ幸いです。
「行ってきま~すでしゅ!」
元気に挨拶したリーナは屋敷の玄関を出るとローガに跨り、澄んだ青空が広がる王都バーロンの街へと繰り出していく。
「気を付けてな~」
のんびりとした声でヤーベはリーナを見送るのであった。
最近リーナは王都の下町へよく出かけていた。
ヤーベにがっちりと抱き着いて寝ていても、朝起きると眠い目をこすりながらも一人で起き上がり、着ていたパジャマを脱ぎちゃんと折りたたんで置いておく。こうすることによりメイドさんが洗濯のために脱いだパジャマを回収しに来るときにわかりやすくなっている。
お出かけ用の服に着替えると朝ごはんのために食堂にヤーベと向かい、奥さんズの面々とともに楽しい朝食を頂く。その後リーナは街へ出かけているのであった。
まだ朝の凛とした空気が残る中、ローガに跨ったリーナは空中を飛んでいた。
近場へのお出かけであればテクテクとのんびりとした歩調のローガに揺られて歩いていくのだが、王都の下町は遠かった。そこでローガは建物の屋根から屋根へとひょいひょいと飛び移って移動していた。
「今日も気持ちがいいのでしゅ!」
「天気が良くてよかったですな」
最近ローガはずっと人間の言葉をしゃべっているため、リーナとの意思疎通も言葉で問題なくできている。そのため、「リーナが一人で街へお出かけなんてダメダメ!」と親バカ全開だったヤーベだったが、ローガをリーナの専属護衛として張り付かせることによってようやくリーナのお出かけを許可したのであった。
ちなみにローガがリーナと出かける日は屋敷の警護責任者が不在になるので、四天王の1頭であるガルボが屋敷警護の責任者を担当していた。他の四天王である雷牙、風牙、氷牙などがずるいずるいと文句を言っていたのだが、この3頭にくらべてガルボは猪突猛進気味でどちらかと言うとその性格は殲滅の七柱に近いため、自分の存在を隠しつつ王都警護や情報収集を行う役割に比べ、屋敷の警護の方が任せやすいとの判断でヤーベ自身がガルボを屋敷担当に指名していた。
やがてローガは王都の下町である南区の一角にある古びた教会の庭に到着した。
リーナはうんしょ、とローガから降りると、その教会の扉を開けて中に入っていった。
「あ! おばあしゃん、おはよーなのでしゅ!」
教会に入ってすぐ、祈り台の前で掃き掃除をしていた年老いたシスターにビシッと敬礼ポーズで朝の挨拶をするリーナである。
ちなみに祈り台の奥には小さめの女神像と、同じサイズのスライム神像が飾ってあった。神像すらなく貧しい教会の状況をリーナに聞き、寄付したのはもちろんヤーベである。スライム神の像はもちろん強制的に女神像とワンセットで送り付けていた
「はいリーナちゃんおはようね」
ニコニコと年老いたシスターは箒で掃く作業を一時中断しリーナに笑顔を向ける。
「今日もかいごーのために奥の部屋を借りたいのでしゅ!」
「はい、いいですよ。友達はみんな先に来ていますよ」
元気よく声を上げるリーナにニコニコした表情のまま年老いたシスターはいつもの様に声を返した。
シスターの返事ににっこりとしたリーナは奥の部屋へ歩いていく。その後ろにローガも付き添ってついて行く。
ガチャリ。
木の古めかしい扉を開けると、中には8人掛け程度のこれまた古めかしい長机があり、それらの椅子に子供たちが座っていた。
リーナが入ってくると全員が立ち上がり、奥の席にリーナが腰かけるまで待つ。
「皆の者、おはよーでしゅ」
「「「おはようございます、姫!」」」
そこにいた全員が膝をつき、リーナに首を垂れてあいさつした。
「くるしゅーないのでしゅ、皆座るのでしゅ」
何となくふんぞり返って短い足を組むリーナ。ワンピースの裾からぴらりんと健康的なふくらはぎがのぞくが、ここに変態紳士はいないので問題なかった。
そのリーナの座る椅子を取り囲むようにローガも寝そべる。
「早速昨日までの報告を聞くのでしゅ!」
「はっ!」
そう言って一番近くに座っていた少年が席を立つ。
「はっ! コレ―ド通りの裏にあるパン屋のおばあさんの腰がまた限界に達したようです!」
「むう・・・またマッサージに行ってあげないといけないでしゅね」
「そのお役目、このゴードンにお任せを!」
隣に座っていたガタイの良い少年が椅子から立ち上がりリーナの前に跪く。
「あっ、テメ!俺の持ってきた情報だぞ!」
「俺の方が力がある!マッサージの効果も高い!」
「オメエはマッサージが終わった後のお礼のパン狙いだろうが!」
「なにおう!」
「落ち着くでしゅ」
「ははっ! 取り乱しました!」
「す、すみません!」
リーナが一言声をかけながらさっと手を上げると少年二人はすぐに言い合いをやめて膝をついた。えらく教育が行き届いているようだ。
「マサ、ゴードンを連れて二人で行くでしゅ」
「え?」
「お友達を連れてきた、といってゴードンを紹介してマッサージを二人でしてあげるでしゅ。ゴードンは力が強いからマッサージは気を付けるでしゅ」
「ははっ!」
「後、マッサージが終わったらパンの仕込みをお手伝いしてくるでしゅ」
「「ははっ!」」
「次は俺が報告します!」
「うむ、でしゅ」
「ブラウ地区のチーコちゃんが一人で留守番することになり、心細くて泣いているようです!」
「それはいけないのでしゅ! 行って一緒に留守番するのでしゅ!」
「はいっ!」
「マリーも一緒に行ってチーコちゃんを慰めるのでしゅ!」
「あいっ!」
このように、リーナの部下?たちは下町に散らばり、あらゆる情報を拾ってきてはリーナに報告していた。そのほとんどは子供の見る事、聞くことではあったのだが、ストリートチルドレンだった子供たちが犯罪に走ることなく、こういった古い教会で雨露を凌ぎ、炊き出しで食事をとることにより生活が安定した。それは貧困のため犯罪へと走らざるをえない少年少女たちが見つけた希望の光でもあった。
そして、東に腰が痛いおばあさんがいれば行って腰を揉み、
西に迷子の少年がいれば行って手をつなぎながら親を探し、
北に寂しくて泣く少女がいれば行ってともに励まし、
南に腹を空かせた子供がいれば、行って近くの教会で炊き出しを行ってくれるようヤーベに頼み込む。
そう、彼らこそ王都下町を巡回し、トラブルを解決する集団、その名も「解決!リーナ団」であった。
「姫!気になる情報が・・・」
そう言って席を立ち、リーナの前に跪いたのはトニーであった。
「にっちゃ!」
下っ足らずの小さな妹もトニーの隣にとてとてと歩いてやってくる。
この兄妹、以前八百屋からリゴンの実を一つ盗んで揉めていた兄とその妹であった。
その後八百屋の商品をすべて買い取り、下町の教会で大規模な炊き出しを行ったリーナにトニーが惚れ込み、姉御姉御と付きまとっていたのだが、それがあれよあれよとここまでの組織に成り上がるとはその時は誰も思っていなかったであろう。
「どうしたでしゅか?」
「南区の奥の廃屋になった教会で、怪しい奴らが集まってました!」
「怪しいヤツらでしゅか?」
「はいっ! なんでも贋金作りがどうとか・・・」
「にっちゃ!すごい!」
妹が手をぱちぱちと叩く。
「贋金・・・でしゅか」
リーナは考えるように首を傾げるとローガを見た。
「それが本当ならゆゆしき問題でしょうな。ボスに報告が必要かもしれません」
「むう・・・」
リーナはもう一度考え込んだ。
同時刻―――――
王城の一角に宰相のルベルク、諜報部のグウェイン、騎士団長のグラシア、国王のワーレンハイドがそろっていた。
「贋金・・・?」
「はい、今王都の一部で出回っているようです」
宰相ルベルクの報告に眉を顰めるワーレンハイド国王。
国のトップたちは、リーナたちと同じ情報に眉をひそめていたなど、誰も知るよしはなかった。
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