第327話 初めてのお目見えは第一印象を大事にしよう
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通常、戦争において周りの味方兵が討ち取られ大将が取り残されたら、その大将はすぐに討ち取られて戦争は負けるだろう。
だが、リセル・ローフィリア神聖国の教皇においてラッキーだったのは圧倒的な強さの美女二人が自分を殺すことを目的としていなかったことだろう。
彼女たちにとって千の兵士を屠ったことは降りかかる火の粉を払ったに過ぎないことであった。
「さあ、もう大丈夫よ?」
「もうヒキガエルくらいしかおらんからな」
フィレオンティーナとロザリーナが笑顔で振り返る。
聖女セフィリナは間違いなくこの二人が女神だと信じた。
「女神様・・・私の命を救ってくださって誠にありがとうございます・・・」
そう言ってぽろぽろ涙をこぼす。
「女神って・・・私たちはそんな大層な存在じゃないわよ?」
「うむ!ラードスリブ王国の王女とドラゴニア王国の王女にすぎんぞ?」
「王女・・・様?」
ロザリーナの言葉に聖女セフィリナは首をコテンと傾けた。
「ちょっと!」
「む?内緒の話だったか?」
内緒の話というほどではないが、わざわざ言わなくてもいい話だと思うとフィレオンティーナはほっぺを膨らませる。どちらも今は王女という立場などよりヤーベの奥様であるという立場の方を大事にしたいと思っているのは間違いないのだから。
「それで、貴方たちは大丈夫?」
黒髪ツンツンヘアーの少年と黒髪ストレートの少女の縄を切る。
「サンキュー!助かったよお姉さん。俺の名は皇洸太。異世界から来た勇者だ!お姉さんたちつえーんだな!俺と一緒にパーティ組もうぜ!そして魔王を倒してこの世界を平和にしてやるんだ!」
「ありがとうございます!私もコータとともに異世界から召喚されました綾小路麗と申します。勇者であるコータに協力して魔王討伐に協力して頂けると嬉しいです」
笑顔で挨拶してくる洸太と麗。
まるで捕まっていたという負い目を感じさせない二人に、楽観的なのかバカなのかイマイチつかみきれないフィレオンティーナとロザリーナだったが、あるワードが含まれていたため、剣呑な雰囲気を纏い始める。
「・・・勇者?」
「・・・勇者だと?」
意気揚々と勇者だと自己紹介した洸太だったが、超絶美人の二人に凄い顔で睨まれてしまい、思わず一歩後ずさる。
「あ・・・あの・・・何か?」
凄まじい圧力に冷や汗を流しながら恐る恐る洸太は問いかけた。
「・・・勇者とは人間のクズの称号では?」
「・・・うむ、勇者というのは盗賊以下のゴミクズで間違いない。現在勇者は奴隷以下の扱いをされているしな」
「異世界での勇者の定義がおかしすぎる!」
「勇者って、人々を救う人の事だったと思ったのですが・・・」
ラードスリブ王国が召喚した勇者白長洲久志羅の事をイメージして喋っている二人に対して戦慄を覚える洸太。ゲーム脳の帰国子女である麗も目を白黒させている。
そして聖女セフィリナはマントにくるまったままフィレオンティーナのローブの裾をちょこんと握って後ろにぴったりとくっついていた。
洸太と麗のせいで自分がひどい目に合う直前だったのに、助けてもらったらすぐに自分の事ではなく魔王討伐に協力を、などと自分の実力を棚に上げての振る舞いに悲しくなるのを通り越してあきれていた。
(どうしてこんな人が勇者として召喚されたんだろう・・・)
聖女セフィリナは不敬にも思わず女神を問いただしたくなった。
「ゲドー大将軍を呼び戻せ! クーズ将軍は!クッソ将軍も!ザコーイ将軍もだ!」
手足をばたつかせて暴れる教皇。
「今緊急招集信号を上げました!すぐにでも将軍たちが戻ってきましょうぞ!」
教皇に声をかけたのはシターパー・ノブデッセル司祭であった。
首に悪趣味な金貨のネックレスをかけ、指にはゴテゴテした宝石が付いた指輪をしている。
もちろん兵士たちが天空城から盗掘してきた財宝をちょろまかしていた物である。ちなみにコンチャック・シギー枢機卿はすでに立ったまま失禁して気絶している。
「おおシタッパ司祭!将軍たちはどこじゃ!」
「私はシタッパではなくシターパーです・・・。将軍たちには連絡が届いておると思いますので、すぐにでも駆けつけましょう!」
ニコニコしながら手もみして教皇に伝えるシターパー。
だが、その邪なる希望はあっさりと打ち砕かれた。
「おや、奥方様・・・このようなところで何を?」
急に声をかけられたフィレオンティーナとロザリーナは後ろを振り返った。
「あら? ローガの部下かしら。ちょうどよかった、この娘たちをまも・・・きゃっ!」
フィレオンティーナが驚き、ロザリーナも目を見開いた。
一見して通常の狼牙族とは違った一回り程大きな狼牙が生首を咥えていた。
その首をポイッと教皇の方に投げる。
「盗賊団の首魁と思われましたので首を持ってまいりました」
「まっ・・・まさか・・・ザコーイ将軍!?」
シターパー司祭は転がった首の顔を見て腰を抜かす。
「屋敷では見ぬ顔の者のようだが・・・?」
ロザリーナが首を放った狼牙を見る。
「これは申し遅れました。敬愛なるヤーベ様に仕えし『殲滅の七柱』が一柱、アスモデウスと申します」
何となく恭しく首を垂れる大柄な狼牙。アスモデウスという名らしいと二人は顔を見合わせる。
「・・・屋敷の警護では見かけなかったようですが」
「普段は魔の森の奥地で魔物狩りを担当しております。我ら『殲滅の七柱』はどちらかと言えばジッとしているより狩りにでて体を動かしたい者たちばかりで構成されておりまして・・・」
フィレオンティーナが少し首を傾げると、アスモデウスと名乗った狼牙は普段の自分たちの役割を話した。どうやら暴れやすい者たちが集められたグループらしかった。
「あー、アスモデウスもう戻ってたんだ。あ、奥様方こんにちわー」
少し小柄な狼牙がアスモデウスの後ろにやって来た。
「「・・・・・・」」
フィレオンティーナとロザリーナが絶句する。
その狼牙も首を口にぶら下げていた。
そしてやはりポイッと首を教皇の前に放る。
「ひいいっ!」
「こ・・・この首はゲッスー将軍・・・」
教皇とシターパ―司祭は腰を抜かしたまま震えて抱き合った。
「マモン、お前も仕留めたか」
「うん、大したことない連中だよねー、そのくせクッソ偉そうな口ぶりだったから即ブチ殺しちゃったよ」
嬉しそうに報告するマモン。
仕方のない奴だとため息を吐くアスモデウス。
ドン、コロコロコロ・・・。
そして、後ろから首がいくつも転がってきた。
「おお、これは奥様方。無事で何よりです」
「ははは、奥様方の多くは高い戦闘力をお持ちとのこと。このような雑魚が束になっても害することなどありえぬだろうよ」
「しかし奥様方の護衛は必須であろう。四天王は何をしておるのか」
「よせよせ、奥様方はこの城にばらばらに出かけておられるらしいしな。四天王殿だけでは手が回らんだろう。我らも気にかけておかねばな」
さらに四頭の大きな狼牙が姿を見せる。
「レヴィアタン、ベルフェゴール、サタン、ベルゼブブか。お前たちもヤーベ様の期待に応えたようだな」
アスモデウスがにやりと笑う。
その時、ドスンと音がした。
見ればそこには首ではなく、巨大な白い斧を握った右手が落ちていた。
「おお、ルシファー。お前は首ではなく手を持ってきたのか?」
「それでは盗賊のリーダーどもの顔がわからぬではないか?」
アスモデウスとベルフェゴールが首を傾げる。
「大いなるヤーベ様にとってこのような塵芥の首など興味もないであろうよ。それよりこの武器はなかなか質がよさそうだ。ヤーベ様に献上すれば、ヤーベ様が使わずともヤーベ様のお仲間の誰かに役立つこともあるだろう」
「なるほど、さすがルシファー、我らのリーダーなだけあるな!」
「ルシファーはいろいろ考えてるんだねー」
ベルゼブブとマモンは感心した。
その様子を見ていたフィレオンティーナとロザリーナは、普段身の回りで警護に当たってくれる狼牙達とのあまりの違いに顔が引きつっていくのであった。
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