第313話 唐突な邂逅は厄介ごとの始まりと気を引き締めよう
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「ぐうぉ~~~、ぐうぉ~~~」
「すぴぃー、すぴぃー」
「ンゴゴゴゴ~、ンゴゴゴゴ~」
「ぐがぁ~、ぐがぁ~」
「ぴゅるるるる~、ぴゅるるるる~」
「スー、スー」
「・・・・・」
何の躊躇もなく、全員爆睡している・・・いや、なぜかアビィ君のメイドさんであるユーエさんだけはアビィ君を膝枕で寝かしつけ、頭を撫でている・・・もげろ。いや、禿げろ。
コヤツらも最初から爆睡していたわけではない。
ずっと俺はかなりのスピードで飛び続けているが未だ天空城は見つかっていない。
朝から出発した俺たちだが、昼になってランチにおむすびを食べたり、夕方になって素晴らしい夕日が遠くの眼下に広がる大海の水平線に沈んでいくのに感動したり。
ちょっとした旅行気分で過ごしていた。
「すごいすごい!燃えるような真っ赤な夕日だよ!」
「ユーエ、きれいだね。君とこの夕日を見られて最高だよ」
「はい、ご主人様」
「おお、きれいだなぁ」
シーナ、アビィ君、ユーエさん、吉田のオ・・・ターさんが夕日に感動している。
・・・ゲルドンと佐藤く・・・レッドはなぜか昼寝をしている。
疲れる要素あったかな?じっと乗ってるだけでも疲れるか。
そして、日は落ちて夜の帳が舞い降りる。
あたり一面満天の星空に包まれる。
「き、キレイ・・・」
「ユーエ、きれいだね。君とこの星空を見られて最高だよ」
「はい、ご主人様」
「おお、きれいだなぁ」
感動屋さんのシーナ以外はまるで夕日の焼き直しかと思ったぞ。
「ふふふ・・・わが征くは星の大海だて」
・・・ゲルドンよ、銀河英〇伝説を気取るのはやめて欲しい。
「おお、オラの住んでいた田舎でもこんな星々は見られないだよ!」
レッドも感動して満天の星空を眺めて興奮している。
レッド君の田舎なら似たような星空が見えていた気もするけど。
空を飛びながら見ているから、見上げた星空とは違うかもしれないね。
まあ俺も東京に住んでいたころは星空なんて忘れていたっけ。でも田舎に帰った時は晴れていれば満天の星空を眺めることができた・・・懐かしいな。
そんな満天の星空に感動していたメンバーだが、飛んでも飛んでも代り映えしない星空が続く夜空を飛び続けているのだ。さすがにしばらくすれば星空を眺めるのにも飽きてくる。
そして朝からテンション上げて旅行気分で過ごしていれば、やはりというか疲れるわけで。
そんなわけで、連中は一日飛び続けている俺にかまうことなく、あっさりとグースカ就寝についてしまった。
・・・ちなみに誰がどんないびきをかいていたかは割愛する。
そして飛び続けることそろそろ丸一日。
夕日が沈んだ反対側から眩き輝く朝日が顔を出す。
「ふう・・・朝だよ」
俺は一人ぼやく。
よく考えたら、一休みするためには地上に降りないといけないのに、今眼下に広がるのは海ばかり。休めないじゃん!俺の魔力が切れたらどうするつもりだよ!
誰だ!?こんな適当な探索チーム作って何も考えず出発した奴は!って俺だよ!チクショーめ!!
「おお、見事な朝日だな。今日もいい天気になりそうだ」
料理職人であるターさんが背伸びをしながら立ち上がり朝日を眩しそうに見つめる。
「ターさんおはよう。俺腹減ったよ」
スライムである俺は気合を入れれば腹が減ったとか、眠いとか関係なく活動できるのだが、<変身擬態>で矢部裕樹の姿をするようになってから、人間としての生活リズムを守っていると、バイオリズムができるのか、腹も減るし眠くもなるのだ。
「お、そうだな。朝飯の用意をするか。メシ炊いてみそ汁と・・・焼き魚でいいか。おしんこは俺が作った奴を持ち込んであるから」
「おうっ!また老舗温泉宿の渋い朝食のようなメニュー!」
「そうか? 今日日牛丼チェーンでも焼き魚定食とかあるだろ?」
「・・・ターさんそれはあまりに情緒がないぜ・・・」
俺は籠に乗るターさんにぼやく。
もちろん牛丼チェーン店の朝食メニューに文句があるわけじゃない。
俺だってサラリーマン時代よくお世話になったしな。いや、それでも俺は焼き魚より朝から牛丼派だが。
俺のぼやきに肩を竦めながらも俺が亜空間圧縮収納から炊き立てのご飯が入ったおひつとアツアツの味噌汁が入った鍋を出す。さらに魚や網、発熱魔導板も出していく。魚は焼いたものを収納してもよかったのだが、その場で焼いてこそ焼き魚の醍醐味が味わえるとターさんが譲らなかった。そしてターさんは発熱魔導板に網を置いて魚を焼き始める。そのうち焼き魚のいい匂いが立ち込める。そしてみそ汁の鍋蓋を取れば、味噌の香りも漂い始める。
「やあ、いい匂いだね」
メイドのユーエんさんの膝枕で寝ていたアビィ君が起きた。
その声にみんなが起き始めた。
「うま----い!」
シーナが喧しく声を上げながらほっかほかの銀シャリを掻っ込む。
「味噌汁最高だて!」
「オラ、異世界で銀シャリ味噌汁なんて思ってもいなかっただよ!」
イカツイ二人がバクバク食べている。
見た目通り食い意地が張っているのはある意味いいことだけどさ。
・・・フカシのナツはボーッとしながら焼き魚を口に咥えてバリバリ骨まで食べている。
平和で何より。
「ん?」
ふと気づく。
前方に大きな雲がある。
通常の雲とは違い、明らかに丸く固まったような雲がある。
そしてバクバクご飯を食べているシーナのアホ毛がピコンピコンと激しく点滅し、大きな雲を指す。
「まさか・・・」
「竜の巣だ!」
「やかましい!」
シーナのボケに俺がツッコむ。
「あそこにラ〇ュタがあるんだよ!」
「ラ〇ュタ言うな!」
俺とシーナがガチャガチャ言い合っていると、ふとアビィ君が遠くを指さす。
「あれ、なんだろう?」
「ん?」
アビィ君の指さす方には大きな真っ白い鳥が。
「・・・相当大きな鳥だな」
「不死鳥ラー〇アだよっ!」
「やかましい!」
ラ〇ュタ脳からドラ〇エ脳に切り替わりやがりましたよ!?
「おいヤーベよ・・・あれ、誰か乗ってねぇか?」
ターさんがおでこに手を当てて遠くを見るように目を細める。
年の割にターさん目がいいのね。
「ん~~~~~」
俺はジッと目を凝らす。明らかに人が大きな白い鳥に乗っている。
「どれどれ・・・男が一人に女性が二人・・・かな?」
アビィ君も遠くを見るように目を細める。
「むう!ドラ〇エⅡだね!」
「男女比間違ってっから!」
「・・・もう一人後ろにいねぇだか?」
さらにゲルドンも白い鳥を見ながら会話に入ってくる。
「確かにいる・・・」
フカシのナツも四人目を見つけたようだ。
エレエレエレエレ・・・
俺も見た。三人に隠れるようにして後ろにもう一人いた。
真っ白な鳥の上に乗った真っ白なローブを着た女性。
その女性が鳥の背から空に向かってゲロっていた。
「ゲロッてるわね・・・」
「ゲロしてるな」
「ゲロってるだよ」
「乗り物酔いか?」
ターさんだけどうでもいい心配をしているが、どうもロングヘアーをなびかせた美少女っぽい人が大空でエレエレゲロっているのはいかがなものか。
そうしているうちにどうやら向こうもこちらを見つけたようで、指を指しながら何かしゃべっている。
ゴウンゴウンゴウン・・・
何かの機械音が聞こえて来たため、周りを見る。
すると大きな雲の向こうにプロペラらしきものが付いた船が一艦見えた。
天空の城と思われる巨大な雲の塊の周りにどうやら三勢力が集まってしまったようだ。
もうロクなことにならない気しかしない!
俺は大きくため息を吐いた。
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