第312話 異世界対策のため名前を決めよう
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今後もコツコツ物語を進めていきますので応援の程どうぞよろしくお願い致します。
「わ~~~キレイ!」
「雲の中にいる・・・幻想的」
「やあ、遠くに海が見えるね」
「ご主人様、あまり身を乗り出さないようにご注意願います」
大空を優雅に飛ぶ俺たち。
ゴンドラに乗るメンバーが顔を出して空や大地を眺めて興奮している。
いまでこそシーナやフカシのナツ、アビィ君も嬉しそうにしているが、最初は文句しか出てこなかった。
「暗いんですケド――――!」
「・・・外が見たい」
「せっかく空を飛んでいるんだからねぇ」
シーナ、フカシのナツ、アビィ君が文句を垂れる。
何せゴンドラは単なる箱だからな。わずかな空気穴兼採光窓の隙間しか空いていなかった。
そこで土の精霊ベルヒアねーさんに協力してもらってゴンドラを改良。
屋根を取っ払って、気球のような籠をイメージ。除けば眼下が見えるようにした。
「スゴ――――イ!」
シーナが喜んだのもつかの間、すぐに文句を垂れる。
「寒い寒い!」
高度を上げて空を飛んでいる上に屋根とっぱらったからな。
「お前が外を見たいと言ったんだろう?」
「だけど寒い寒い寒い!」
ガタガタと震えてうずくまるシーナ。
お前が俯くとアホ毛レーダーが見えないじゃないか。
そこで今度は風の精霊シルフィーと炎の精霊フレイアに協力してもらい、風の流れを制御、籠内の空気を温めた。
そんなわけで、現在俺の運ぶ籠は温かい温度を保ったまま風を防ぎ、屋根を取っ払い、周りの壁の高さを調整して周りの景色が見えるようにした。
そんなわけで乗っているメンバーからはまるで物見遊山のような感想が口々に綴られている。
「おーい、昼飯にするかい?」
吉田のオッサンがのんびり声をかけてくる。
先ほど亜空間圧縮収納からお櫃に入った炊き立てのお米を出しておいた。
もちろん、いい塩も用意した。
作ってもらうのは「塩むすび」だ。
「ウマ―――――!!」
「・・・至高の味。炊き立ての銀シャリに勝るものなし」
「ははは、まさか異世界でコメが食べられるとはね」
「おではヤーベのところで最近よく食わせてもらっているだが、やっぱりこの世界のパンより米だでな」
「オラこんなうめぇもん初めて食ったぞ!」
「・・・うむ、いい塩だな。いい塩梅に握れた」
シーナは感動して両手でおにぎり頬張ってるし、黙々とフカシのナツも食べている。アビィ君も喜んでいるようだし、お付きの美人メイドさんにも食べ方を伝授している。
ゲルドンは屋敷でコメを食べる機会が増えているからな。
そして佐藤君よ、君はどこかの孫悟空か?
あと、吉田のオッサンは渋い。
「吉田のオッサン、俺にもちょうだい!」
そう言って触手を伸ばす。
「あいよ」
もう誰も俺の触手に驚かないな。
「それにしてもヤーベさんはズルいですよね~。便利な触手なんてチートですよ、チート!」
ぷんすこ怒りながらもシーナはおにぎりを食べ続けていた。
「どこがチートだよ。これは汗と涙と努力の結晶だぞ」
「なによそれ」
おにぎりを口いっぱいに頬張りながらジトッと真上の俺を睨むシーナ。なんでやねん。
「だいたい、ラノベのかわいいスライム系ってのがもうチートよね。触手がかわいいもん」
「あははっ! 粘液デロデロの口が開くヤバい触手だったら今頃討伐されてるかもね」
シーナの言葉にアビィ君が頷く。
「ヤバい触手ってこんなの?」
そう言って俺は触手を一本出すとみんなの前に持っていく。
その姿はイボイボのトゲトゲが付いており、先が牙のある口状になって粘液を垂らしていた。
「ギャ―――――!!」
「うわわわわっ!?」
シーナとアビィ君が絶叫する。
「オノレヤーベ、本性を現したか」
そう言って懐の苦無を出し、触手の先っちょをえいえいっとプスプス刺してくるフカシのナツ。
佐藤君もドン引きしている。
「ヤーベ、それは18禁のダメなやつだで・・・」
ゲルドンはため息を吐いた。
「ふむ、まるでナマコのようだな」
吉田のオッサンはマイペースだった。
「さて、少し決めた方がいい問題がある」
「・・・さっきの触手の禁止ね」
「いや、悪かったって。みんなが話しているダメな触手ってこういうヤツっていう確認をだね・・・」
「いや、ダメなやつは確認したくなかったよ」
シーナが再びジトッと俺を睨めば、アビィ君は自分の肩を両手で抱きながらブルッと震える。アビィ君はいかつい触手が苦手なようだ。
・・・まああんまり触手が得意って人はいないだろうけども。
「わかったわかった。リアル触手は封印な。ところで話はそれじゃなくて、名前だ」
「名前?」
ゲルドンが首をひねる。
「うん、名前。この先、敵側に地球からの・・・もっと言えば日本からの召喚者がいないとも限らないから」
今回奥さんズの面々を最初から同行させなかったのは、この機に異世界転生者だけで、今後の異世界人への対応と対策を検討したかったからというものある。
「どういうこと?」
「ゲルドンや佐藤君のように、一目では異世界転生者とわからない種族になった者もいるけど、名前で『佐藤君』とか『吉田のオッサン』と呼んでいれば、間違いなく元日本人だとバレるよね。相手が同じ異世界転生者や異世界召喚者ならさ」
「あ、なるほどね。だからまず名前を何とかしようということだね」
俺の言葉を拾って先に結論を説明するアビィ君。彼は頭の回転が速い。
「なんでバレちゃダメなの? 仲間だとわかる方がいいんじゃない?」
そしてシーナは若干頭が残念な子だ。
「だから、敵に異世界転生者や異世界召喚者がいた場合はまずいって言ってるの」
「なんで?」
「そりゃ、敵になった異世界転生者や異世界召喚者は俺たちが異世界転生者だってわかれば、女神からなにやらチートや便利なスキルをもらっているかもしれないと考えるだろう。そうした場合、厄介だと思われる敵はまず真っ先に狙われると思わないか?」
「・・・思う」
「しかも、どんな能力を持っているのかわからないから、そんな場合は大火力で一撃で仕留めるか、暗殺などの方法で殺しに来るなど、危険な対応を取られる可能性が高いと思わないか?」
「・・・思う」
どんどんブルーになって落ち込むシーナ。他の異世界転生者たちとたくさんお友達ができるとでも思っていた脳内お花畑を少し反省してくれればいいのだが。
「それで? 具体的な対応は?」
アビィ君の問いかけに俺はシンプルな案を回答する。
「名前を決めよう。異世界風の」
「ああ、名前ね。俺はアビィ・フォン・スゲートって名前があるからいいけど、異世界に来てから名前がない人たちね」
具体的には佐藤君と吉田のオッサンだな。
「まあヤーベは微妙だけども、もう王国中に広まってるから問題ないだでな。後は佐藤君とか吉田さんだでな」
「確かに、佐藤君や吉田さんはまずいよね。一発だ」
ゲルドンもアビィ君も両腕を組んで頭を捻る。
「佐藤君はシュガー君、吉田のオッサンはヨッシー君でどうだろう?」
「適当だな!」
「センスゼロですね」
「・・・ヤーベ、それはない」
アビィ君、シーナ、フカシのナツから総攻撃を食らう。そんなにダメかな。
「オラ、ベニ〇ルがいいだが」
「方々から怒られるかもしれないから却下で」
「じゃあ、おでと同じように付け足せばいいだで。ベニマルン」
「何かのお菓子みたいね」
シーナが首を傾げる。
「じゃあベニマール?」
「サッカーがうまそうだで」
ゲルドンも首を傾げる。
「じゃあレッドサークル」
「長くない?」
アビィ君も首を傾げる。
「もうレッドでいいんじゃない?」
あーだこーだ言い合っていたら、シーナがレッドとシンプルな名前を提案してきた。
「じゃあ佐藤君はレッドで」
「わかっただべ!俺は今日からレッドだべ!」
何となくうれしそうなので良しとしよう。
「吉田のオッサンはなぁ・・・」
俺は泰三のオッサンを見る。この人、ラノベとか全然興味ないマジ職人の料理人だからなぁ・・・。
「吉という字が入っているから、ラッキーさんで」
「大吉さんとか?」
「もろ日本チックだで」
「ブルーさんにしてオラとコンビ組むだよ!」
「・・・あまり元の名前と関係ないと、自分が呼ばれていると気づけないかもしれないな・・・」
吉田のオッサンが顎をさすりながらぼやく。
「吉田のオッサンは昔はなんて呼ばれていたんだ?」
「吉田さんや吉さんとか・・・下の名前だとターさんとか」
「ターさんいいねぇ」
「じゃあ名前ターサンでいいんじゃない?」
「えっ!? ターさんのサンまで名前に含むの?」
「丁寧に言うならターサンさん?」
「ややこしいな!?」
あーだこーだ言い始める一同に俺は声を大きくしてツッコむ。
「でも、ターサンって言いやすいし、名前がターだけだとイマイチだから、ターサンでいいんじゃない? 丁寧に呼ぶならターサンさんでもいいだろうし、僕ら仲間はターさんと呼べばいいだろうしね」
「・・・ふむ、ではワシはターサンと名乗るとするか!」
吉田のオッサンが嬉しそうにターサンを名乗る。
まあいいか、これでみんなの呼び名が決まった。後は無事に天空城ウラーノスを見つけて調査するだけだ・・・調査っていうか、乗っ取り?
俺は首?を傾げながら翼を大きく羽ばたかせシーナのアホ毛が指す方向へ向かって飛び続けた。
出発しても天空城見つからず(笑)
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