第312話 天空城探索へ出発しよう
またもちょっと遅刻・・・。私の周りだけ時間が早く流れているとか(ないない)。
「とりあえず運び込む食料や薬、テントなど野営道具・・・」
屋敷の玄関前にいくつかの袋に分けて積み上げられた資材だ。
俺の亜空間圧縮収納があればもちろんすべて収納可能なのだが、奥さんズの面々以外にこの能力を説明していないしな。一応ノーチートな俺が努力で培った能力だからな。一応圧縮収納内には大量に食料が入っているが、他の国の諜報員たちも俺をチェックするかもしれないし、見かけ上の資材類は必要だ。
「おーいヤーベ。これはどこに運ぶんだ?」
ミノ娘のチェーダ達がゴンドラを囲んで来る。大きな籠のようなものだな。俺がこれをもって空を飛ぶ予定だ。
「ここに置いてくれ」
籠の正面には扉があり、そこを開けると籠というかゴンドラの中に入ることができる。
「なんで籠を運ばせて来ただて。いつもなら亜空間圧縮・・・」
復活したゲルドンが出発準備をしている俺のところへ来ると、わざわざミノ娘たちにゴンドラを運ばせているのを疑問に思ったのかそんなことを口にする。
「シャラーップ! オレは女神様に会えずにノーチートでノースキルの冴えない男なんだよ? オレの努力の結晶の一つである『亜空間圧縮収納』もとりあえずある程度内緒にしておこうかと思ってるよ。切り札の一つだし」
ゲルドンの鉄仮面の口の部分を手で押さえて説明する。
「いや、ヤーベの空間収納は十分にチートだと思うだが・・・」
「ふざけたことを言っちゃいけないっ!」
「おおっ!?」
俺の怒りにゲルドンが首を傾げる。
「何の努力もせずに転生時に女神とやらと面接して能力を付与してもらうなどといううらやましいチートと血の滲むような努力をして作り上げた能力を同じにしてもらっては困る」
俺は腕を組み、足先をペシペシと上げて怒ってます雰囲気を出す。
もちろんスライムの俺がどれだけ努力しても血が滲んだりはしないのだが、それは横にそっと置いておく。
「だで、おでも努力の末にスキル<鉄壁>が覚えられただよ?」
「何のシステムか取得条件か知らんが、お前のスキル<鉄壁>はこの世界のルールに則った<スキル>取得システムの恩恵を受けての事ではないかッ! 俺は受けていないんだ。何もないんだッ! その中で己の努力の身で身に着けた亜空間圧縮収納という能力。それはもはや・・・『努力』の結晶以外の何物でもないではないかッッッ!!」
俺は血の涙を流しながらゲルドンの肩を掴んでゆする。
「いや、そんな大声で涙流しながら言わんでも・・・」
困惑するゲルドンを話すと、丁度アビィ君たちが屋敷から準備を終えて出てきたところだった。
「何々? なんの話?」
「ヤーベ殿、準備できただべ」
アビィ君が爽やかな笑顔を向けてくるのとは逆に、鬼人族(?)の佐藤君は緊張気味だ。
作務衣のような和服っぽい格好の吉田のオッサンは自分の愛用の料理道具カバン一式だけが荷物なのか。少ないな。
「旦那様、言われた分の食料とか一通り準備できましたわ」
冒険者としての経験値が高いフィレオンティーナに天空城探索のための資材発注準備を頼んでおいたのだが、恙なく準備を完了させてくれたようだ」
「ヤーベさんのためによく効くポーションも用意しておいたよ!」
フィレオンティーナの横にニコニコとした笑顔でサリーナも姿を見せる。
「ありがとう、大切に使わせてもらうよ」
笑顔でサリーナにそう答える。
見ればカッシーナやイリーナ、アナスタシアやロザリーナも見送りに来てくれた。
・・・? こんな時絶対いそうなリーナや文句を言いそうなミーティアがいない。まあ疲れて寝ているのかな?
チェーダが資材をゴンドラに積み込んでいる。
食料の入った木枠のコンテナなどを楽々と持ち上げて運んでくれる。
俺も手伝うか・・・と大きめの麻袋を手に取る・・・重い。
「なんだこれ?」
麻袋を片手で持ち上げようとするが、結構な重さらしく、上がらなかった。
あげく、引きずろうとすると中が若干動いたような気がした。
「・・・まさか」
俺は徐に麻袋を開ける。
中には・・・。
「ふおっ!?」
「ぬわっ!?」
リーナとミーティアが麻袋の中で抱き合っていた。
「・・・何してるの?」
「ふおおっ! リーナもご主人しゃまについていくでしゅ――――!!」
「ぬおおっ! 我を置いて楽しい冒険になぞ行かせぬわ―――――!!」
いきなり麻袋から飛び出してくるお子ちゃま二人をひょいと避ける。
「ふおおっ!?」
「ぬわわっ!?」
地面に転がる二人をひょいと持ち上げるとチェーダとマカンに押し付ける。
「天空城が見つかって安全が確認出来たらちゃんと呼ぶから。大人しく留守番していなさい」
「ご主人だば―――――!! ご主人だば―――――!!」
「ぬおおっ! 留守番とは! 留守番とは!」
チェーダにしっかり抱かれているリーナがギャン泣きしながらジタバタしている。
マカンに抱かれたミーティアも憤慨はしているようだが。
ぶっちゃけ<古代竜>であるミーティアなら自分で飛べるから連れて行ってもいいのだが。
まあ、リーナがより落ち込むからミーティアも留守番してもらおう。
「さあ出発しよう。よい報告ができるよう期待していてくれ」
探索メンバーがゴンドラに入ると、扉をロックした後、デローンMk.Ⅱの姿になる。さらに大きな翼を出すと、ゴンドラを触手で固定する。
「じゃあ、行ってくる」
「あなた、お気をつけて」
俺のあいさつに奥さんズを代表してカッシーナが返事をしてくれる。
その他のみんなは手を振ってくれる。
「天空城が見つかったらみんなでお城デートしような!」
そう言うと俺はゴンドラをしっかりとつかんだまま大空へ飛び立った。
やっと天空城探索に出発(苦笑)
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