第290話 悠々と凱旋しよう
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「いや~、100人以上の盗賊を一人も殺さず捕縛とか、途轍もない実力じゃの~」
周りを見回しながら話しかけてくるのはラードスリブ王国現国王に返り咲いたロイド・テラハイド・ラードスリブその人である。
この王様、俺が空を飛んで兎人族の村へ向かった後、なんと自分が先頭になってすぐに動かせる1000名の王国騎士を連れてこちらへ向かってきたという。
ドルフ大将軍は肝が冷えたと笑っていたが、通常なら笑い事ではないだろう。どこの世界に王様が先陣切って盗賊退治に向かう国があるというのか。
だが、それだけ亜人種も含めて民のことを考えているというパフォーマンスになるのかもしれない・・・いや、この王様は根が単純なだけだな。うん。
騎士たちが盗賊に縄を打ち、連行していく。
「いや~、これだけの犯罪奴隷、大変助かるのう! やっぱり、ヤーベ殿にはこの国の王になってもらって・・・」
「お・と・う・さ・ま?」
俺のことがあきらめきれないのか、国王の座に誘ってくるロイド国王。それにすかさず突っ込みを入れてくれるフィレオンティーナ。
「兎人族の族長さん、盗賊は退治できましたが、今後もこの村に住み続けますか? 場合によっては私の国で仕事の斡旋もできますよ。衣食住も保証します」
「なんと・・・」
驚いて声も出ない兎人族の族長さん。
一応ロイド国王に兎人族の移住を認めてもらえるか確認、兎人族の希望を尊重するといってもらえたので、詳しい説明をしたところ、一族そろって移住を希望したので一緒に帰路に就くことにした。
兎人族、総勢約300人。みんなが幸せになれるよう、ヴィレッジヤーベの発展に力を入れることにしよう。
すったもんだがあったが、やっとの事ガーデンバール王国王都ログリアへ帰りついた。
国王へ戦争終結の報告を行い、詳細はバルバロイ王国の内政官も含めて協議してもらおう。
王城にたどりついた俺たちはとてつもない歓迎を受けた。
いや、町に入った時から沿道の声援がすさまじかったんだが、王城に入ってからもかよ。英雄英雄と声をかけられるのはこっぱずかしくていかん。
「よくぞ無事に戻った!救国の英雄殿!」
王座の間にて戦勝報告を行うため、跪いた俺たちを玉座を立ち上がって褒め称える国王。
「まさしく救国の英雄殿はバルバロイ王国だけでなく、我がガーデンバール王国にとってもまさしく救国の英雄であったわ!」
「その通りですね!」
国王に王太子も満面の笑みで俺を褒め称える。いや、もうマジで勘弁してほしい。あんまり気にしなくていいから、もう休ませて、ホント。
「今日はめでたい日じゃ!この後少し休んでもらい、戦勝の晩餐会を開く予定じゃ!明日からは戦勝パレードとお祭りを三日三晩執り行おうぞ!」
おおっと貴族たちが声を上げる。マジかよ!? 晩餐会だけでもメンドクサイのに、三日三晩も祭りで挙句パレードって! 悶死するわ!
城塞都市フェルベーンのパレードで懲りたよ!肩がこるよ!
ついにスタートしてしまった晩餐会。そしてその後行われる舞踏会。マジで踊れないから。
そう思っていたら、カッシーナに優しく手を引かれて、中央で踊ることになってしまった。
だが、カッシーナの絶妙な手引きによって、俺はフラフラしながらもなんとか踊りきることができた。
「はいはい!次は私だぞ!」
「あ、私も踊りたいです!」
「それでは僭越ながらわたくしも・・・」
「ふおおっ!リーナも踊るでしゅ!」
「あらあら、ヤーベ様私もお願いしたいですわ」
イリーナ、ルシーナ、フィレオンティーナ、リーナ、アナスタシアが続々と俺とダンスをしようと押し掛ける。
いや、無理だから。俺踊れないから。カッシーナにうまくコントロールしてもらっただけだから。
見ればサリーナは食い気を爆発させてドリンクとデザートを梯子している。
ロザリーナは騎士服を着て俺たちの近くに立っている。いや、ドレスで着飾ってもいいのよ?
俺が踊らないとわかると、他の若い貴族たちが奥さんズに殺到したのだが、奥さんズは一斉に愛想笑いを浮かべ壁の花と化した。
うーん、徹底してるな。うれしいといえばうれしいが、舞踏会でいいのかな?
「むう・・・すべての貴族に参加を申し渡したのに、彼奴は来ておらぬか・・・」
後ろでぼやきが聞こえたので振り向いてみればセルジア国王が渋い顔をしていた。
「どうされたのです?」
「むう・・・実はヤーベ卿、このガーデンバールには屋敷にこもって城に登城しない伯爵がいるのですよ」
「・・・引きこもりですな」
「言いえて妙ですな。その通り、引きこもって出てこないのですよ。今日の戦勝パーティは主だった貴族全てに参加するよう申し伝えたはずなのに、やっぱり出て来とらん」
ムッツリとした表情で愚痴るセルジア国王。戦勝パーティに出てこないって、中々な引きこもり具合だな。ちょっと気になるかも。
「・・・そうだ、明日にでも、一度訪ねてやってみてはくれまいか? 救国の英雄殿が出向いたとあれば、驚いて出てくるやもしれぬ」
やべ、ちょっと気になったと思ったら訪問する流れになっちまったぞ。
「それで、どんな方なんです?」
「うむ、アビィ・フォン・スゲート伯爵といってな。独り者で物書きのようなことをしておる人物じゃ。まだ若いはずなんだが・・・どうも引きこもりでな。ただ、凄まじい美人のメイドをそろえておるらしいんじゃ。ワシも見たことないんじゃが・・・」
「へえ、すごい美人のメイドさんね・・・」
え、ちょっと待て! 今、なんて言った?
「そ、その貴族の名前、もう一度教えてください!」
「ア、アビィ・フォン・スゲート伯爵じゃが・・・」
俺の形相に引き気味に答えてくれるセルジア国王。
だが、俺はセルジア国王に気を使えるほど余裕はなかった。
アビィ・フォン・スゲート伯爵・・・アビスゲート・・・深淵卿!!
こんなところで、とんでもない名前が出てきてしまった・・・。
「ふわぁ~~~」
休息がとれるよう自分のためにあてがわれた部屋に入ったライーナは思わず感嘆の息を漏らした。自分のご主人様であるヤーベは舞踏会に呼ばれて出かけてしまった。奥さんの面々も一緒に。だが、自分はその中に入ってついていくわけにはいかなかった。
聞けば、王国を守ったすごい英雄だとか。とんでもない人に村を救ってもらっちゃった・・・とライーナは恐縮しきりだった。それに、ガーデンバール王国はそれほど亜人差別がひどくない国ではあるものの、やはり国王が主催の晩餐会にいきなり参加するのは控えた方がいいだろう、という判断もあった。
「すごいですぅ・・・高級そうな調度品ばっかり・・・」
キョロキョロと部屋の中を見回すライーナ。
落ち着かないのか、ウサミミがピコピコ揺れている。
「わあ~~~、こんな柔らかそうなベッドに私が寝てもいいのでしょうか・・・」
清潔そうな真っ白のシーツがかかったベッドを指先でつんつんしながら独り言ちる。
再び周りをキョロキョロ見回して、部屋の中に自分だけしかいないことを確認すると・・・。
「えいっ!」
ボフンッ!
ピョンと飛び上がるように跳ねるとライーナはそのままベッドにダイブした。
「ふわわ~~~すごく柔らかいですぅ・・・」
全身をベッドに埋めながら、その柔らかさを堪能するライーナ。
あまりのふかふかさに最初ウサミミがピーンと伸びてしまったが、今はそのベッドの柔らかさに呼応するかのようにふにゃんとウサミミが垂れていた。
コンコン。
「ふぁい!」
ふかふかベッドに微睡んでいたライーナの意識がノックによって急速に覚醒していく。
疲れていたのだろう、ライーナは気づいたら寝入ってしまっていた。
「ライーナさん? ちょっとよろしいでしょうか?」
ガチャリと扉をかけて入ってきたのは、カッシーナだった。
「あ、カッシーナさん・・・でしたね。どうぞお入り下さい」
そう言って慌ててベッドから飛び起きると、服装をパパッと正す。
まだあまり詳しく聞いていないが、自分を報酬に村を助けてくれたヤーベという男には複数の奥さんがいて、その奥さんの何人かが元王族なんだとか。
確か、その筆頭がカッシーナ様だったと聞いていた。
「あ・・・あの・・・、私に何か・・・?」
そう顔を上げたライーナの目に映ったのは、カッシーナの後から次々に入ってくる女性たちの姿だった。
カッシーナに続いて入ってきたのは、イリーナ、ルシーナ、フィレオンティーナ、サリーナ、リーナ、アナスタシア、ロザリーナ。
総勢8名もの美女が同じ部屋にやってきた。
「な、ななな・・・」
あまりのことにライーナが驚いていると、さらにカッシーナが驚くべき事実を告げた。
「我々はヤーベ様の妻になります。これで全員ではないのですが」
「え、えええ!? こ、こんなに美人の奥様がいて、まだ全員じゃないんですか・・・?」
「ええ、バルバロイ王国に1名留守番しております」
<古代竜>ミーティアの事を言っているのだが、当然のごとくライーナには誰か伝わらない。
「こ・・・こんなに美人の奥さんがたくさんいるなら・・・私なんて不要ですね・・・。どこかに奴隷として売り人出されてしまうのでしょうか・・・?」
ライーナは目に涙を溜めながら不安を口にする。
ちょっとエッチな感じだったけど、ヤーベさんはとても優しくて強い人だった。あっという間に村を、自分たち兎人族全員を救ってくれた英雄。そんなヤーベのそばに仕えることは、不安もあったが誇らしいとも感じていた。
「あなたは、ヤーベ様のそばにいたいと思いますか・・・?」
とても優しくはにかむような笑顔でライーナに問いかけるカッシーナ。
「・・・! 居たいです! やーべさんのそばにずっと、ずっと居たいです! 助けてもらった恩返しがしたいです!」
魂の絶叫ともいうべき、大声が出た。心の底からそう思った。あの人のそばに居たい・・・と。自分を報酬にして村を救ってもらったのだ。どう自分を扱おうとあの人の勝手。奴隷として売られてお金に換えられても文句は言えない。それでも、やっぱりあの人のそばに居たいと思ってしまう。
そんなライーナをカッシーナが優しく抱きしめる。
「いいのですよ・・・。あの人がそう望んで、貴女がそう望むなら。ともにあの人を支えていきましょう」
「・・・はいっ、はいっ」
涙を流しながらカッシーナの胸に顔を埋めるライーナの頭を優しくなでるカッシーナ。
不意にその手がウサミミに触れる。
「・・・わあ・・・モフモフですのね・・・」
「ふえっ!?」
いつの間にかカッシーナの目が獲物を見るようにらんらんと輝いているのをライーナは見てしまった。
モフモフモフモフ。
「きゃうっ」
「な・・・なんて心地・・・!」
恍惚の表情でウサミミをモフり続けるカッシーナにイリーナたちがとびかかる。
「ずるいぞカッシーナ! 私だってウサミミをモフりたいのだ!」
「私も触りたいです!」
「わたしも~」
「わたくしもお願いしますわ!」
「ちょっと・・!?」
ライーナのウサミミに群がる美人軍団。
「ふおおっ! しっぽもモフモフでしゅ!」
素早く背後に回ったリーナがライーナのお尻に抱き着いて丸くかわいい尻尾に顔をグリグリと押し付けている。
「きゃあ!」
「「あ! リーナちゃんしっぽモフモフしてる! 私も私も!」
「う~む、さすがに私のしっぽはモフモフできぬか・・・」
ロザリーナが自分のしっぽを体の前にもってきて自分で触ってため息を吐く。
「ちょっとぉ~~~誰か助けてぇ~~~!」
兎人族のライーナはヤーベにモフモフされる前に奥さんズに全力でモフらてしまったのだった。
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