第286話 その思いを受け取ろう
かはっ! 約1名様がブックマークを外されたのか、-2Pとなっておりました・・・。
こうなったらつらい現実を忘れるために白いクスリを・・・!!(※注 ラムネです)
それはともかく、ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告本当にありがとうございます。
元気をいただいております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
「本当に・・・よくご無事で・・・」
ドルフ将軍が感涙にむせび泣いている。
あの後俺たちは王城内に案内されて場所を移すことになった。
内務卿などの内政官も現王の息がかかった者たちばかりで、多くが逃げだしたり引きこもっている。
俺たちバルバロイ、ガーデンバール連合軍の対応を国代表で行ってくれるのはこのドルフ将軍という事になった。
いろいろ「お話し合い」をしようとやってきたわけだが、まさかフィレオンティーナとシスティーナが7年前に失踪したラードスリブ王国の双子の王女様だとは・・・。
そんなことが発覚してしまったので、当時から将軍の座を務めるドルフ将軍は双子の王女帰還に感激して言葉が出ない状況だ。
「いやはや、まいったね・・・」
俺は右隣に座るフィレオンティーナを見た後、左隣に座っているタルバリ伯爵を見た。
タルバリ伯爵はさっきから心ここにあらず、といった感じで、まだ自分の妻がラードスリブ王国の王女様だったなんて事実を受け止め切れていないようだ。
それにしてもやべー、矢部ちゃんヤッベー。
バルバロイ王国の王女カッシーナ、グランスィード帝国の女帝の母親アナスタシア、ドラゴニア王国王妹ロザリーナ・・・そしてラードスリブ王国の王女だったフィレオンティーナ。
ヤッベーというよりはマズイ。これではまるで意図せずもバルバロイ王国、リヴァンダ王妃がおっしゃっていた『各国の王女様を娶って平和的に大陸制覇』というラノベもまっつぁお(真っ青)のド外道ハーレム展開になっていないか!? 大丈夫か俺!?
「それでは、お二人ともバルバロイ王国の伯爵様に嫁がれていると・・・」
「ええ」
「そうですわ」
フィレオンティーナとシスティーナが幸せそうな笑顔を浮かべて肯定する。
いや~、そんなに嬉しそうに肯定されるとテレるね。
あ、タルバリ伯爵も顔が赤い。ゴツイ顔がテレるとそれはそれで迫力あるな。
「それであれば、このドルフ何も言うことはありますまい。このラードスリブ王国がここで終わろうと、お二人が幸せならばそれで・・・」
本来ならば、王家の血筋、というものはもっと多くの人間がいてしかるべきだろう。
だが、このラードスリブ王国はずっと田舎の事前豊かな平和が続いた国であったためか、直系の王家血筋の人間が少ないようだ。
特に前王の子供は二人の姉妹しかおらず、その二人が出奔してしまったので前王を追い落とした際は、叔父であったオージンが最も王位継承権が高い位置に来たということらしい。
それ以外の公爵家となると、継承権を持ってはいるものの、血はだいぶ薄くなっているらしく、その数も数人でそれぞれが王政に興味ないといった人物ばかりのようだった。
そのため、ドルフ将軍はラードスリブ王国が属国として占領されたとしても、俺が事前に連絡した「現在の国民の生活をないがしろにすることはない」という言葉を信じることにしたようだ。
「フィレオンティーナ様、システィーナ様、お帰りなさいませ。お二人のご帰還を首を長くしてお待ち致しておりました」
ノックして部屋に入ってきた年老いたメイドさんが優雅に挨拶する。
「「マーサ!」」
フィレオンティーナとシスティーナさんが弾かれた様に立ち上がり、マーサと呼んだ年配のメイドに抱き着く。
「心配かけてごめんなさい・・・」
「寂しい思いをさせたわね・・・」
システィーナさん、フィレオンティーナが抱き着きながら涙を流してそれぞれの思いを吐露する。どうやら昔から世話になったメイドさんのようだ。
「姫様方。今から、お二人を前王様のお部屋へご案内いたします。お二人には見ていただかなければならないものがあるのです」
「「え・・・?」」
「さあこちらへ。良ければ旦那様方もどうぞ一緒にお越しください」
俺とタルバリ伯爵は顔を見合わせながらもうなずき、案内される二人の後ろをついていった。
「ここが前王様・・・お二人のお父様のお部屋になります」
メイドのマーサが案内した部屋は、それほど大きくない、こじんまりとした部屋だった。
「ここでお父様はいつも・・・」
フィレオンティーナが感慨深くキョロキョロあたりを見回していると、
「姫様方、こちらをご覧ください」
そう言ってマーサがテーブルの上にポツンと置かれた水晶玉を指す。
「これは・・・?」
システィーナさんが首をかしげる。二人もどうやら初めて見るもののようだ。
「これは『記憶の水晶』所有者の思いを封じ込めることができるアーティファクトです」
「記憶を・・・」
「この記憶の水晶はお二人が出奔されてから、誰も起動させることができませんでした。おそらく前王様の記憶をのぞけるのは、お二人だけなのではないかと・・・」
「そ、それはどのように・・・?」
システィーナさんが水晶を覗き込むように疑問を口にする。
「アーティファクトなら、魔力を流してみてはどうかな?」
俺の言葉にフィレオンティーナとシスティーナさんが記憶の水晶に魔力を流し始める。
すると、ピカッと一瞬まぶしいほどの光が発せられた。
「「キャッ」」
驚く二人。
そして光が落ち着くと、そこには―――――
「「お父様!お母様!」」
どうやらフィレオンティーナとシスティーナさんのご両親、つまり前王と前王妃様の姿が映し出された。まるで立体ホログラムのような映像だ。
「やあ、フィレオンティーナ、システィーナ、元気だったかな?」
かなり小柄で丸顔のとても優しそうな王様と、その王様より頭一つ身長の高いこれまたとても優しそうな笑顔を浮かべる王妃様。こんな優しそうな両親から生まれた二人だから、素敵に育ったんだろうな。
「この映像を二人が見ているという事は・・・きっと二人の隣には、もうすでに君たちを守ってくれる素敵な男性がいるんだろうね?」
「「えっ・・・!?」」
二人そろって顔を真っ赤にする。
そうか、大帝国への政略結婚の道具にされることを嫌い、出奔した二人だ。国に戻ってくるときは自分たちが納得した伴侶を連れてきている・・・ということか。
「どんな人なんだろうな・・・。きっと君たちのことを大事にしてくれるとても素敵な人たちなんだろうね」
にこにこと笑いながら話を続ける王様。
二人は口に手を当ててとめどもなく涙を流していた。
「まさか、隣にいるのは女性なんて言わないでくれよ?」
「アナタ?」
王様のジョークなのか、変なことを言い出した王様の耳を笑顔で引っ張る王妃様。
「「お父様ったら・・・」」
口をそろえてあきれながらも涙を流す二人。
「どんな人なんだろうね。私には夢があったのだよ。
君たち二人を私から奪っていくにっくき男に我が鉄拳を食らわせてやるって夢がね!」
「まあまあ貴方ったら」
「でもきっと君が止めるんだろうね、貴方お止めになってって、私を羽交い絞めにして」
「クスクス、その時は頑張ってお止めしますね?」
王様と王妃が見つめあいながら話している。父親として、いつか送り出さなければならない娘たち。その娘を自分から奪っていく男へのある意味矜持だろうか。
「あ、だが、どんな男を連れてきても、このセリフだけは言わせてくれ!『どこのウマのホネかもわからないヤツに大事な娘はやれん!』」
そう言ってびしっと指をまっすぐに突きつける国王様。
「あらあら、貴方ったら」
「だが、最後には必ず、こう言わせてくれ・・・『娘をよろしく頼む』」
そう言ってまるで、万感の思いを込めるかのように深々と頭を下げる国王様、そして続けて王妃様も優雅に、だが、深く頭を下げる。
「「お父様・・・お母様・・・」」
フィレオンティーナとシスティーナさんが号泣している。
涙を止められないようだ。
「うおおおおおおっ!」
隣でタルバリ伯爵も号泣している。娘を頼むと言われたのだ。これで琴線に触れなきゃ男じゃない。
かくいう俺も目から水がドバドバ出て止まらない。
スライムの俺が泣いて、瞳から出るのは涙と呼んでいいのだろうか?
ヘタをするとスライム汁が溢れ出ているのかもしれない。
フィレオンティーナとシスティーナさんがそれぞれ、俺とタルバリ伯爵の胸に飛び込んで嗚咽を上げる。自分たちのわがままを許して出奔を見逃してくれた父と母。その後、叔父に簒奪されてしまった王国。それでも、父と母は帰らぬ娘を一秒たりとも忘れることはなく、思い続け、記憶の水晶に思いを託したのだ。
・・・いつか、心の底から信頼できる伴侶を連れて戻ってきてくれることを信じて。
「・・・いつか、君たちの選んだ素敵な伴侶と酒でも酌み交わしてみたかったよ」
顔を上げた国王様の目には少し光るものがあるように見えた。
「フィレオンティーナ」
「はい!お父様・・・」
「システィーナ」
「お父様・・・」
「二人に幾万もの光が降り注ぎ、世界中の誰よりも美しく笑っていられるような人生を送れるよう、心から願っている」
「私たちはずっと貴方たちを愛し続けています」
「「幸せに」」
二人はそう言うと映像が切れた。
「貴方の思い、このヤーベが必ずやお引き受け致します。娘さんを世界で一番幸せにしてみせますよ・・・」
俺のつぶやきにフィレオンティーナが胸に顔を埋めたままつぶやく。
「もう・・・世界で一番幸せですよ・・・」
覗き込めばフィレオンティーナの顔は真っ赤になっていた。
意地悪く表情を覗き込もうとすれば、いやいやをするように身をよじってより深く顔を胸に埋める。可愛いなぁ。
チラリと横を見ればタルバリ伯爵とシスティーナさんもいい感じのようだ。
俺は皆に声をかけようと首を回しかける。
その時――――
ガチャリ。
部屋の奥の扉が開いた。
「ほっほ、今日の晩飯は何かのぅ」
「昨日はお肉でしたから、今日は山菜と川魚あたりではないでしょうかねぇ」
そう言ってゆるふわな雰囲気で男女が出てきた。
・・・さっき『記憶の水晶』で見た王様と王妃様がちょっと年をとった感じの二人ですが。
「おっ、おおっ!? フィレオンティーナにシスティーナではないか!帰ってきたのか!」
「あらあら、じゃあ今日はお祝いの料理にしてもらいませんと」
「「お父様!? お母様!?」」
フィレオンティーナとシスティーナさんが同時に驚きの声を上げる。
てか、お二人とも生きとったんか~~~~い!!
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