第256話 仕事の斡旋を検討しよう
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「ヤーベさん、少しご相談よろしいでしょうか・・・」
アローベ商会オープン三日目、大混雑の日々を過ごしていた俺に、思わぬ来客があった。
「やあ、リューナちゃん。どうしたの?」
喫茶<水晶の庭>のオーナー、リューナちゃんがアローベ商会までやって来ていた。
「実は・・・この子達の仕事先を探しているのですが・・・もしよければヤーベさんのところでお仕事をさせて頂けないかと・・・」
おずおずと説明するリューナちゃん。
リューナちゃんの後ろには狼人族と思われる三人の少女が立っていた。
だが、リューナちゃんの美しい銀髪と違い、茶色い毛並みだ。普通の狼っぽい。いわゆるサーシャと同じタイプ?かな。
「ララです」
「リリです」
「ルルです」
「「「お仕事させて頂けないでしょうか?」」」
そう言って三人とも勢いよくお辞儀した。
俺の後ろではカウンターにいる店長が渋い顔をする。そりゃそうだよな、あれほど多くの申し込みからふるいにかけてスタッフを厳選したんだ。
いくらリューナちゃんの頼みと言っても三人もいきなり雇ったら、何の面接だったんだって話だよな。
「リューナちゃん、いきなりどうしたんだい?後ろの子達が仕事を探しているの?」
俺は努めて丁寧に問いかける。
「そうなんです・・・。この子達、私の住んでいた村から出て来てしまったんです。特に伝手も無くて、亜人の子達を真面に雇ってくれる所は・・・。私の店は自分で出来る仕込みだけでお店を回しているので、三人も雇ってもお店が回せなくて・・・」
困ったような顔でリューナちゃんが説明した。
「どうして村を飛び出してきたんだい?」
俺はとりあえずリューナちゃんの後ろに並んでいる三人に質問する。
「実は・・・村で山の神に捧げる生贄に選ばれそうになって・・・」
「はいっ!?」
生贄・・・
「生贄、そんなことしちゃ、いけ」
「ヤーベよ、そのギャグは以前ドン滑りしているだろう」
俺に最後まで言わせなかったのは、俺の隣にいたイリーナだった。
昨日はミーティアが神獣二匹と共に俺のそばに居たのだが、どうも家で留守番していたリーナが寂しがったらしく、今日はリーナの頭の上に神獣たちが鎮座して屋敷で留守番している。そのため、じゃんけんで今日俺のそばにイリーナがいる事になっていた。
「山の神って・・・?」
リューナちゃんが首を傾げる。リューナちゃんも知らないようだ。
「何でも大きな巨人が山を守っていて、何年かに一度山の神に生贄を差し出すみたいなんです」
「それに私たちの誰かが指名されそうになって・・・」
「私たちの両親はすでに亡くなっていますし、反対する人があまりいなくて・・・」
泣きそうになりながら説明する三人。なんてひどい話だ。てか、山の神ってなんだ?
「リューナちゃんは聞いたことないんだ?」
「そうですね・・・もう村を出て五年以上たちますし・・・」
首を捻るリューナちゃん。仕草がかわいい。
「そもそも、リューナちゃんの村ってどんな感じ?」
「あまり大きくなかったですよ? 同年代の友達とも遊んだ覚えがありませんし。閉鎖的な感じでしょうか。王都に出て来て驚いた覚えがあります」
「今のお店を出すまでに、相当苦労したのかな?」
「そうですね・・・あまり亜人に親切にしていただける人たちが少なかったのですが、たまたま私は親切な老夫婦と知り合うことが出来まして、お店のお手伝いをしながら働かせてもらってました。その御夫婦も三年前にお亡くなりになられたのですが、遺言で私にお店を譲ると言葉を残してくださっていて・・・」
思い出したのか、少し涙ぐみながら当時の状況を説明してくれるリューナちゃん。本当にリューナちゃんは良い人と知り合えたんだな。尤もこの三人も同じようにいい人と出会えるとは限らない。だから俺に相談に来たのだろう。
「・・・こんな事は言いたくないのですが、本当はリューナさんが生贄になるはずだったみたいです。白色の異端児がいればよかったのに・・・村の男の人たちがそう言っていたんです」
「なにっ!?」
俺の怒気が漏れたのか、説明したララちゃんがビクリと体を強張らせる。
「そ、そんな・・・」
わなわなと体を震わせるリューナちゃん。
「そう言えば、両親が私に夢はないかとしきりに問いかけて来て、いつか小さな店を開きたいと言ったら、王都までの旅費と生活費を少し持たせてくれて、村から出立させてくれたんです。今から考えれば、なぜ両親があんなに急いでいたのかと不思議だったのですが、もしかしたら生贄の事を知っていたのかもしれません・・・」
暗い表情で俯いてしまったリューナちゃんの肩を叩く。
「リューナちゃんの村って、狼人族ばっかり住んでいる村?」
「そうだったと思います。色が白い私たちは除け者にされていた気がしますけど。それでもララやリリやルルは結構お話してくれましたから、寂しくはなかったですけどね」
「私たちも、色が違うだけでどうしてリューナちゃん一家を除け者にしていたのか理由がわからないのですが・・・」
申し訳なさそうにしながらもララちゃんが説明する。
「ふむ、そのあたりは種族に詳しそうな者に聞いてみる事にしよう。差し当たって三人の仕事だ」
そう言ってリューナちゃん達を見る。
「リューナちゃん、宝くじの時に作ってくれたクッキーがとても好評でね。普段でも多少まとめた数を店頭に並べたいんだ」
唐突にクッキーの話をし出した俺にキョトンとするリューナちゃん。
「ですが、クッキーはそれほどたくさん準備出来ません・・・店の仕込みもありますし・・・」
申し訳なさそうにリューナちゃんが説明する。
「そこで、この三人さ」
そう言ってララ、リリ、ルルの三人を見る。
「クッキーを焼く場所はこちらで準備するから、リューナちゃんはこの三人にクッキーの作り方だけ叩き込んで、アローベ商会に出向という形で送り込んでくれればいい」
「あ!」
リューナちゃんが笑顔になる。
「うん、アローベ商会でいきなり雇うと角が立つけど、クッキー納品のために喫茶<水晶の庭>のスタッフを出向という形にして、リューナちゃんにクッキー代を含めた手数料を払うから。その中から三人の給料を賄ってあげてくれればいいかな」
「はいっ!ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!!」」」
全員が笑顔になる。まずはこの子達が生活できるようにしてあげないとね。
「それはそうと、ご両親も心配だね。少し落ち着いたら一度リューナちゃんの村に行ってみようか?」
「え!?いいんですか?」
俺の提案に思わず驚くリューナちゃん。
「なんだろ、ちょっと変な感じがするし、村が生贄捧げないといけないくらいピンチなら、その山の神とやらを退治した方がいいかなって」
何でもない事の様にニコリと俺が説明すると、三人娘はポカーンとした。
神殺し・・・まあ、ラノベではよくあるよね・・・?
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