閑話31 奥様会議
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コンコン。
木でできた扉をノックする音が聞こえる。
「・・・合言葉は」
「全てはヤーベ様のために」
「入室を許可します、同志よ」
そう言って内開きの扉を開けたのはルシーナであった。
そして、今しがたノックしたのはイリーナである。
普段ヤーベを呼ぶ時に様をつけないイリーナであったが、ルシーナの考えた『合言葉』を言う時は一言一句間違えないことをルール化しているため様をつけている。
「なんだ、私が一番最後だったか」
見ればテーブルにはすでに奥さんズの面々であるサリーナ、フィレオンティーナが着座している。
・・・なぜかフィレオンティーナの横にはリーナも座っており、その手前の入り口に近い下座にはチェーダ、パナメーラ、マカン、エイカの4人のミノ娘たちまで座っていた。
「ええ、これでそろいましたね。それでは第32回奥様会議を始めます」
何気に開催の多い会議であった。
そしてルシーナがイリーナに着席を促す。
ここはヤーベの王都の屋敷、地下1F。元々はプレジャー侯爵が地下に作った拷問部屋の一部である。地下に錬金部屋が欲しいといったサリーナの要望を受けて改装した際、区切った間取りの一部を後々倉庫として使えるように残した一部屋である。
そこに、奥さんズの面々を始めとした女性たちが集まっていた。
地下室なので全く光の入らない壁に囲われた部屋に、大きな長方形のテーブルとイスがおかれている。その他、飲み物が飲めるように部屋の隅に置かれたキャスター付きの移動ワゴン。そして、壁に取り付けられた魔導具による淡い光が部屋の中を照らしている。
「これなら円卓の方が雰囲気でるかな?」
「あら、いいですわね、円卓。かっこいいですわ」
「ふみゅ? 円楽ってなんでしゅか? カッコイイでしゅか?」
「リーナちゃん、円楽じゃなくて円卓ね? まあるいテーブルよ。みんなの顔がよく見えるのよ」
「ふおおっ!みなしゃんが見えるのはいい事でしゅ!」
イリーナ、フィレオンティーナ、リーナが円卓に思いをはせていると、ルシーナが厳かな口調で語り始めた。
「・・・由々しき問題です」
「どうしたんだ?」
イリーナが腕組みしながら問う。
「・・・これを見てください」
ルシーナが白いハンカチを広げる。
そこには、何かの動物のような毛がいくつもあった。
「んん? 動物・・・いや、獣人の毛だろうか?」
「複数ですわね・・・、微妙に色味が違いますわ」
見ればどの毛も茶色がかっているのだが、黄色がかっているものもあり、複数の種類だと思われた。
「私の錬金釜による鑑定だとね、これは狼人族、犬人族、猫人族の毛だと判明したよ。それも女の子だね」
「・・・なんだと?」
サリーナの説明に多少剣呑な雰囲気を出すイリーナ。
「それはそうと、いつの間にその錬金釜手に入れたんですの? この前お風呂に持ち込んだ時におかしいなと思ったのですわ。錬金釜は中古でも金貨100枚はくだらないですわよね?」
ジトッとフィレオンティーナがサリーナを見る。
「あはは・・・、王都の錬金術ギルドに行ったときに錬金釜の掘り出し物があってね・・・ちょっとヤーベさんにおねだりを・・・」
テヘヘ、と笑うサリーナ。
「ちょっと!? 出かけたとは聞きましたけど、それ聞いていませんけど!? 金貨100枚って!」
ルシーナがびっくりして声を上げる。
「むうっ! 私なんか王都に来てからヤーベに買ってもらったのはハンカチ1枚だけだぞ・・・」
「そういうと私もショールだけしか受け取っていないのですわ」
イリーナとフィレオンティーナが不満を口にする。
フィレオンティーナのショールに関しては他のメンバーの分もあるのだが、バタバタしてまだヤーベは渡せていなかった。
そして、ゴルディン師のところで作らせたチート武器の数々はヤーベからのプレゼントには含まれない。たとえヤーベの財布からお金が出ていたとしても、ヤーベのプレゼントではない。
「でも、ルシーナちゃんも抜け駆けしてヤーベさんの指輪貰ってるし・・・それは高価というよりプライスレスだよね?」
サリーナがやり返さんとばかりにジトッと視線をルシーナに向けた。
「いやいや、それは皆さんにも同じように用意するってヤーベ様はおっしゃったではありませんか!」
わたわたと両手を自分の前で振って心外だとアピールするルシーナ。
「いやいや、いの一番に貰ったのは大きいよね~、だって私たちのはまだ全然できてないのか、誰ももらってないし」
嬉しそうにニヤニヤしながらルシーナをやり込めるサリーナ。
そのやり取りとみていたチェーダが溜息をつく。
「いいな~、俺もヤーベから何かプレゼントしてもらいたいよ・・・」
「あら、随分と贅沢ね、チェーダは。そんな卑しい感じだとお妾さんとして嫌われるわよ?」
「だいたい奥様方と同じように扱ってほしいなんて分不相応です」
「そうそう」
ぼやいたチェーダに総攻撃をかけるパナメーラ、マカン、エイカ。
どちらかと言えば大ピンチを救ってもらい、ヤーベに白馬の王子様の姿を見ているチェーダと違い、パナメーラ、マカン、エイカの三人はちゃんと自分たちの立ち位置を把握してこの場に臨んでいた。
そんな厳しい言葉に、一層肩を竦ませ、縮こまるチェーダ。
そうは言っても、自分たちが飢えて困っている時に、そして魔物に襲われている時に颯爽と現れ助けてくれたのだ。その上キスまでされて、ぎゅっと抱きしめられ頭も撫でてもらっている。助けてもらった立場のチェーダだったが、ヤーベにまだまだたくさん甘えたいのである。
なぜ奥さんズの面々が怪しげに打ち合わせしているこの場にチェーダたちが居るのかというと、お風呂でひと悶着あって意気投合したうえ、妾の立場もしっかり考えようという事になったからであった。
そんな折の奥様会議であった。
「チェーダさん、このヤーベ様の服、匂いをかいでもらえます?」
すっと差し出されたシャツ。それはヤーベが昨日冒険者ギルドから帰ってきた際に着替えた服であった。なぜそれが洗濯されることなくルシーナの手の中にあったのか・・・それについて誰も知る由もなかった。
服を受け取り、自分の鼻を近づけるチェーダ、
「クンクン・・・お、ヤーベのいい匂いだ・・・むっ! 獣人の匂いが混じっているな・・・。それも狼人族と猫人族の女の匂いはマーキングされているレベルの匂いだ・・・。それにそれよりも残り香が少ないが、犬人族の女の匂いもあるな・・・。少なくとも三人に抱きつかれているぞ」
眉間にしわを寄せて答えるチェーダ。
「確かに、ルシーナの言う通り、ゆゆしき問題だね・・・」
黄金の錬金釜を撫でながらサリーナが呟く。
そう、ここにいる奥さんズの面々を筆頭とした奥様連合のみんなは、ヤーベが自分たちをほったらかしておいたまま、浮気しているのだと考えたのだ。
「これは・・・O・HA・NA・SHIが必要ですわね・・・」
ゴゴゴ・・・とアブナイオーラを出しながらフィレオンティーナが呟けば、
「ふふふ・・・場合によってはO・SHI・O・KIも必要かもしれませんよ・・・」
目にアヤシイ光を漂わせてルシーナがにやりと笑った。
当人は全く気が付いていないが、今、ヤーベの命は風前の灯火となっていた。
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