第24話 町中の決闘はスピーディに片付けよう
またも冒険者ギルドに届かず・・・
早く魔物を売ってお金を手に入れて楽しい買い物三昧を~!
「やっと町に入れた・・・」
俺は独り言にしては大きい声で呟いた。
「ヤーベ殿、大丈夫か?疲れていないか?」
「イリーナ。俺はリュックの中でじっとしていただけだったはずだから、普通なら疲れるはずもないんだけど、現在は疲労困憊だよ。主に精神的な理由で」
ヒヨコ隊長もイリーナの肩で苦笑している。
「それでは、早く冒険者ギルドに行って魔物を買い取ってもらってお金を手に入れよう」
珍しく建設的になイリーナの意見に全面賛成する。お金を手に入れなきゃ買い物は元より宿にも宿泊できないしな!
それにしても、イリーナのポンコツぶりには溜息100連発だぜ。
急いでいなけりゃ小一時間は問い詰めてやりたくなる状況だ。
おっと、ついつい小一時間ネタが口をついてしまったぜ。
元の世界にいたころ、数少ないラノベ友人たちとラノベを読み合った事を思い出す。
今思い出したのは埴〇星人大先生の大人気ラノベ『フェア〇ーテイル・ク〇ニクル』に出てくる一節だ。話が抜群に面白いのはもちろんツッコミの言葉の中で『小一時間問い詰めたくなる』が仲間内でめちゃツボにハマッてお互い使いまくった。
「おい、早くメシ行こうぜ!」
「小一時間待ってくれ」
「どこにいるんだ? みんな揃ってるぞ」
「スマン、遅れてる。小一時間待ってくれ」
「スマン!ラノベの新刊持ってくるの忘れた!」
「何やってるんだ!小一時間問い詰めてやろうか!」
・・・今考えると明らかに使い方間違ってますね、うん。ほぼノリと勢いで生きてましたね、あのころ。最終的に小一時間が何分の事を指しているのかは誰もわからなかったな。些細なことだ。
ちなみに小一時間が流行る前は『天〇の城ラ〇ュタ』に出てくる女海賊頭の「40秒で支度しなっ!」だったからな。ちょっと待って、なんて言ってくる仲間には「40秒で支度しなっ!」て返すのが流行ったな。・・・40秒って、かなりムチャ振りだよな、うん。
「・・・ヤーベ殿、ヤーベ殿!」
「お、おお?どうした、イリーナ」
「どうしたではないぞ、ヤーベ殿。話しかけても全く反応しなかったからヤーベ殿こそどうしたのかと思ってしまったぞ」
イリーナが存外に心配しているのだぞとアピールしてくる。
「そうか、スマンな。少し考え事をしていたようだ」
「・・・問題なければいいんだ。それで、先ほどの冒険者3人を倒した技はどのようなものなのだ?良ければ教えてもらえないか?」
「フッ・・・知りたいかね?」
「知りたいというか・・・さっきの衛兵たちはうまく躱せたが、問い詰められて回答せねばならないこともあるかも知れぬだろう? その時どのように説明すればいいのかと・・・」
そりゃそうだ。小一時間も問い詰められたらゲロするしか無くなるわな。もういいって?
「最初にお前の手首を掴んできたヤツに食らわせたのが<ライトニングボルト>、静電気による電撃だ」
「静電気・・・? 聞いた事がないな」
「電撃・・・雷だよ」
「おおっ!精霊魔術に雷を操るものがあると聞いたことがあるが・・・、ヤーベ殿は精霊魔術にも精通しておられるのだな!すごすぎるぞ!精霊魔術を操るなど、王都でも僅かな者達しかいなかったぞ」
おお、また精霊扱いされてしまいそうだな。もう精霊ってことでいいか。四大精霊ともお友達だしな。
「冬の乾燥した時期に、金属を触ったりしてバチッて痺れたりすることが無かったか?」
「ああっ!私はあまりなかったが、騎士の訓練を良くしていた兄は偶にあったみたいだな。「妖精の悪戯」と呼ばれている現象だ」
異世界ではそんな風に言われているのね。
「そのバチッ!をすごく強力にした技だ」
「おおっ!それはずいぶんと痛そうだな!」
嬉しそうに笑うイリーナ。パワー上げれば痛いじゃすまないけどね。何たってローガも「さすコレ」ものの威力だから。
「条件は接触だ。まあ、俺の触手が接触できれば相手に電撃を叩き込めるから、イリーナが直接触らなくでもいいんだが」
「じゃあ、電撃を喰らわせたい相手に手を向けて<ライトニングボルト>!と叫べば、ヤーベ殿が電撃を発射してくれるのか?」
やたらと嬉しそうに聞いてくるイリーナ。なんか俺を便利なアイテムと勘違いしてない?大丈夫かしらん?
「まあそうだが。あまり乱発しないように。相手との距離も対応できる距離と対応できない距離があるしな」
瞬間的に見えないほど細く触手を伸ばす必要があるため、あまり遠いとシンドイ。多分だが、周りの環境の影響も受けやすい。なにせバレない様に触手を伸ばすとなると、かなり薄く細くなるからね。建物内ならともかく、外では風の影響を相当に受けてしまうだろうな。
相手に発射した触手が逆風で戻って来てイリーナに接触、イリーナがシビビビビッ!って・・・、ウン!ギャグマンガでありそうなパターンだ。いや、今の流行はアババババッ!かな?
「それで・・・、3人の眉間を打ち抜いたのは?」
「それは<指弾>という技だ。もちろん俺様に指はないがな!」
「それはどういう技なのだ?」
ヒヨコ隊長も興味がありそうで俺の説明を待っている。
渾身の自虐ネタだというのに、誰もツッコまない・・・ちょっと悲しい。
「<指弾>というのは指で石や豆とか硬くて小さな粒状の物を弾いて相手にぶつける技だよ。俺の場合は弾に合わせて触手の筒形状を調整、亜空間圧縮収納にたくさん拾って入れてある小石を使用して打ち出しているがな」
これも泉の畔でヒマしてる時にせっせと小石を拾って溜め込んでいたものだ。
結構練習したら、簡単に撃てるようになった。
イリーナのリュックに隠れている場合はあまり自由に撃ちまくることは出来ないだろうが、リュックから触手をこっそり出して打つくらいは可能だ。時間があるなら触手の筒を長く伸ばしてライフルのようにじっくり狙って遠くを狙撃することも可能だろう。
俺自身でやるなら、全方位に爆散させることも出来るかもな。
大通りを歩いていくと、通りの正面に大きな建物が見えてくる。
「ヤーベ殿、あれが冒険者ギルドだぞ」
指さす方向には正面に見えた大きな建物が。やはりあれが冒険者ギルドなのか。
その時、
「待てゴルァァァァァァァァ!!」
あ~、何となく予測できなくもないけど。
叫び声を聞く限り、明らかに怒気を含んでいる。となると、「迷惑かけてゴメンね」パターンではなく、「身内がやられてメンツ丸つぶれ」パターンだな。
え? 誰かって。どうせ<オーガキラー>とかいうDランクパーティの残り2人だろーよ。パーティリーダーみたいなやつがいなかったから、きっと叫んでるのがそうなんだろーねー。
「てめぇがウチのモンをやった女か!」
デカイ斧を右手に持ったハゲ筋肉だるまが走って来た。裸にして赤パンツ穿かせたらレスラーまっしぐらだな。その横には皮鎧の盗賊風の男が「ア、アニキ~」とか言ってヒーヒー言いながら走ってきている。ハゲ筋肉だるまより遅い盗賊に価値があるのか?
「ななな、なんだ!?」
イリーナが目を白黒させている。そうだろーな。なかなか見ないよ、あんなハゲだるま。
「よくもウチのモンをやりやがったな! 今すぐ決闘だ!覚悟しやがれ!」
斧を突き付けて騒ぎ出す。イリーナ決闘やるってよ。
『決闘って、ここで今やるのか聞いてくれ』
「決闘って今ここで行うのか?」
「ああそうだ! 今すぐここでだ! 叩きのめしてやる!」
『決闘を受けるメリットはあるのか?』
「け、決闘を受けるメリットはあるのか?」
「メリットだとぉ!ふざけやがって! 俺に勝てたらこの全財産をやらぁ!金貨5枚は入ってるぜ!」
といって懐から財布らしきものを出すと地面に叩きつける。
あ~、身内が女1人に3人もやられて、冒険者仲間内で舐められない様にって事かな?
『決闘のルールは?殺してしまってもいいのか?』
「決闘のルールは?ころっ・・・ええっ?」
「今殺すって言ったかこのヤロー! ルールなんざどっちかがぶっ倒れるまでだ! 行くぞぉ!」
男が斧を振り上げる。決闘の承諾をした覚えもないけどな。
「キャア!」
イリーナがビビッて硬直する。しょうがないね。
では奥の手と行こうか。
『装着!アーマードスライム』
「ひょえっ?」
リュックの隙間から、両手首と、両足首のみ薄く伸ばした触手を輪っかにしてロックする。
肘、膝まで超薄くしたスライムボディをアーマーコーティング化する。
男が斧を振りかぶって襲い掛かってくる。その攻撃を触手でイリーナを操って躱す。
「わわっ」
イリーナがびっくりしているようだ。
『イリーナ、少し力を抜いていいぞ。俺がイリーナの手足を動かす』
「なんとっ! ヤーベ殿に私の手足を束縛されて・・・くっ犯せ!」
『いや、手足のコントロールやめてもいいけど?』
「あ、ヤーベ殿見捨てないで!」
しょうがないな。まあここまで一緒にいるんだ、見捨てたりしないけど。
『さあ、イリーナをSランク冒険者に仕立て上げようか』
「ええっ!?」
『行くぞ!スライム流戦闘術究極奥義<勝利を運ぶもの>』
「ほわわっ!」
躱された斧を再度振りかぶり攻撃してくる男。どう見てもこれが当たると死ぬよな。
殺す気マンマンじゃねーか。じゃあ容赦しなくていいか?
大きく振り下ろされた斧を躱し懐に瞬時に入る。
『<ライトニングボルト>!』
「ラ、ライトニングボルト!」
右手を突き出させ、相手の胸に触れる。
そして放つ電撃!死んだらゴメンねレベルの一撃を放つ。
「ごばぁぁぁ!」
煙を上げてもんどりうって倒れる男。そう言えば名前も聞いてねーな。
「ア、アニキー!」
この盗賊からはアニキしか聞いてねーし。
「お前ら町の往来で何やってるんだ!」
あ、衛兵がまた走って来た。町の門のトコでも見たよ。デジャビュ?
「ギルド前で何を騒いでいる!」
冒険者ギルドからはマントを翻して白髭のダンディーな爺さんがこっちへ向かってきた。
あれ~、これメンドクサイパターンですか?テンプレ回避の戦略練って来たはずなのに?
どーしてどーして?
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
(自分で愛称呼んでます(苦笑))
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