第193話 世界の危機を救う覚悟を持とう
物語に先立ちまして、表記の修正および統一をご連絡いたします。
魔石や魔力を使って動かす道具を「魔導具」と表記するように致します。
この物語としては「魔」力を導いて使う道具、という意味として使わせて頂きます。
魔導戦艦、魔導オーブン、魔導ホットプレート、魔導冷蔵庫・・・等ですね。過去の物語も順次修正して統一いたします。よろしくお願い致します。
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「バ・・・バカなっ! あれが魔導戦艦だと!?」
「わずか三艦で大陸中を火の海に沈めた、伝説中の伝説ともいうべき兵器・・・」
宮廷魔術師ブリッツの説明に、ドライセン公爵、そして宰相ルベルクが声を上げる。
「魔導戦艦とな・・・聞いたことがないが」
キルエ侯爵が首を捻る。
「貴公は若いのでまだ知らぬか。あれは伝説中の伝説ともいわれ、実際にあったことだと資料文献が一部の王族や貴族たちには引き継がれてきておる。千年以上年も前に起きた、この大陸中の国という国が滅亡寸前まで追い込まれた恐るべき出来事なのだ」
「わずか三艦。たった三艦の戦力で、この大陸中の国が滅亡寸前に追い込まれたのですよ。圧倒的火力、こちらの魔法を弾く魔法防御フィールド、そして空中を浮いて移動するという機動力。どれをとっても現在の我々にはあの魔導戦艦に対する攻撃手段を持ちません。魔導戦艦が相手となるとたとえ隣国のワイバーンを駆る竜騎士たちでも魔導戦艦からすれば、ハエが周りを飛んでいるようなものでしょう」
「それほどまでにか・・・」
ワーレンハイド国王は宰相ルベルグの説明を受け、呟いた後言葉を失う。
「申し上げます!」
「どうした?」
「リカオロスト公爵領を見張る調査部からの報告です! リカオロスト公爵領リカオローデンにて、公爵自身の館が崩壊!巨大な乗り物とも思われる物体が空中へ現れたそうです!しかもその乗り物らしきものは、リカオローデンの公爵邸を砲撃で破壊したと報告が上がっております!」
「・・・道理で映像が消えたわけだ・・・」
ワーレンハイド国王は得心がいった。
「先ほどまで映っていた魔導通信機が映らなくなったので、何かがあったのだろうとは思ったのだが、まさか自身で自分の館を砲撃させていたとは・・・」
「威力を試した、その程度の事でしょうかな?」
宮廷魔術師のブリッツが砲撃の理由を想像する。
「そうだな・・・、後は自身の館にあまり見られたくないものがまだ眠っていたのかもしれん」
「なるほど・・・」
ワーレンハイド国王の説明に頷く宰相ルベルク。
「となりますと、次の目的地が気になりますな」
ドライセン公爵が魔導戦艦の行き先を気にする。
「もちろんこの王都バーロンであろうよ。自身の館を砲撃させた以上、自領には戻らないというもしかしたら不退転の決意の表れかもしれん。となれば、この王都にいきなり砲撃を放つ可能性だってあるかもしれん」
「そんなっ!」
ワーレンハイド国王の想定に思わずリヴァンダ王妃が悲鳴にも似た声を上げる。
「あの男の考えていることを読み取るのは難しい・・・」
腕を組み、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるワーレンハイド国王。
「ヤーベ様・・・」
カッシーナ王女がヤーベの袖を握った。
「報告します!」
先の報告に続いて次の報告が入ったようだ。
「リカオロスト公爵邸を砲撃した空飛ぶ乗り物は、リカオロスト公爵領を出てこの王都を目指す進路を取っているとのことです!」
「やはりか・・・」
その時であった。魔導通信機が光り出す。
「むっ!」
宮廷魔術師ブリッツが目を細めて光の先を見据える。
そして浮かび上がる映像。
「カ~~~ッカッカ!愚か者の諸君、元気かね?」
コルネリオウス・フォン・リカオロスト公爵と、その隣には黒ローブの男がいた。
「そちらも療養のために自領に戻った割にはずいぶん元気そうだねコルネリオウス卿?」
「カ~~~ッカッカ! 魔導戦艦ヒューベリオンが稼働するんじゃ!寝てなどおられんよ!」
嬉しそうに涎を垂らす勢いで愉悦の表情を浮かべるリカオロスト公爵。
「それで、その魔導戦艦とやらの発掘に成功したので、その自慢かな? 王国に納めてくれるなら、高く買い取って勲章も出すけど?」
努めて軽く振る舞っているのだろう。もしくは僅かな望みをかけての事か。
「馬鹿か貴様。この世界の全てを治める王に対してどの口が世迷言を吐くか」
その瞳は完全に人を見る目ではなかった。
自らが手にした、巨大な力をただただ思うがままに振り回し、自分の都合のいい世界を作り上げようとしている、イカれた老人の姿があった。
ワーレンハイド国王は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
もはや自国だけの問題ではない。この男は先ほど全世界の王と言った。
つまりはこのバルバロイ王国だけでない、隣国はもとより、この大陸全ての国を蹂躙する、そう言っているのであった。
「要求は何かね?」
相手の思惑がわかった以上、下手な駆け引きをやめて直接的に尋ねるワーレンハイド国王。
「死ね」
「!」
「王家の人間はすべからく死ね。お前たちの血は一滴も残さぬ!」
憤怒の表情を浮かべるリカオロスト公爵に会場の誰もが戦慄を覚えた。
ただ一人、ヤーベを除いてだが。
「どうしてそこまで・・・」
リヴァンダ王妃が震えながら声を絞り出す。
慇懃無礼だったり、偏屈だったり、奇妙だったりはあった男であったが、ここまで異常だとは思っていなかったのである。
「ふざけるな!ワシこそが王じゃ!生まれついての王じゃ!ワーレンハイドよ!貴様がワシの王の座を奪ったんじゃ!」
絶句して声もないワーレンハイド国王とリヴァンダ王妃。
「あの御仁・・・子供のころの剣術指南で、一度たりともワーレンハイド国王に勝てなんだことが国王になれなかった原因だとでも思っておるのか・・・?」
ドライセン公爵は映像に映る狂気を目に宿した老人を見つめた。
自身が生まれながらの王だと喚き立てるリカオロスト公爵のそれは、まるで子供が手に入らないおもちゃを欲しがってダダをこねているようにしか見えなかった。
「で、だからどうだってんだ?」
ついに、今まで一言も口をきかなかった男、ヤーベ卿が声を発した。
俺は魔導戦艦とやらが飛び立ってからの情報をヒヨコたちの念話伝言で受け取っていた。
伝言ゲームのように多くのヒヨコが情報を介すため、間違って伝わったりしないか心配な面もあるが、伝え方に工夫でもあるのか、ヒヨコたちの記憶力が優れているのか、非常にクリアな情報が送られてくる。
あの魔導戦艦ヒューベリオンは<古代魔法科学時代>の<失われし魔法技術>の粋を集めた兵器らしい。僅か三艦でこの大陸の多くの国を滅亡寸前まで追いやったトラウマ的戦略兵器のようだ。
とどのつまり、あんなクソおもちゃのために、俺のイリーナを誘拐して、何だか知らんが封印されたキーを抜き出した・・・という事だな。うむ、許さん。
すでに、ヒヨコたちの情報から魔導戦艦ヒューベリオンの発進時の情報は入って来ている。
実に信じられない事だが、あの魔導戦艦に乗り込んでいるのはリカオロスト公爵と黒ローブの男の二人だけらしい。尤も最初から放り込まれていた人がいないとも限らんからな。
少々危険だが、ヒヨコたちが何匹か魔導戦艦ヒューベリオンに潜入している。当然バリヤーのような防御フィールドを備えていると思われるが、常に発動しているわけではない様だ。こちらとしてはありがたい情報だ。
それにしても、二人しか乗っていないとはいえ、リカオロスト公爵が役立っているとは思えないから、実質あの黒ローブが一人で動かしているということだ。
「おいちょびヒゲ、黒ハゲ」
「あ? もしかしてちょびヒゲって、ワシの事か?」
「それ以外に誰がいるんだ、ちょびヒゲ」
いきなりちょびヒゲと呼ばれて呆気に取られているリカオロスト公爵。なんだ、自分のヒゲも理解してないのか。
「おい・・・黒ハゲって誰の事だ?」
「お前以外に誰がいるんだ?黒ハゲ?」
「誰が黒ハゲだこらぁ! ハゲてねーだろうがよ!」
いきなり黒ローブのフードを取って顔を見せる。
ソコから出てきたのは金髪のフツー顔だった。
「ファンダリル!貴様!」
見れば宮廷魔術師ブリッツが激昂する。
「えー、またアンタの知り合い?」
「え?あ、イヤ、知り合いと言うか・・・昔ウチの部署で働いていた男でして・・・研究職としては優れた男だったのですが」
「この前のゴルドスターと言い、アンタの元部下、碌なヤツいねーんじゃねーの?」
イリーナを誘拐されて機嫌が悪い俺は、完全に宮廷魔術師ブリッツに八つ当たりした。
「いやはや、面目ない事で・・・」
急に汗を拭き出すブリッツ殿。
「まあまあ、そのくらいにしてやってくれないか、ヤーベ卿」
俺を嗜めたのはワーレンハイド国王だった。
「おっと、話が逸れたな。それで、ちょびヒゲと黒ハゲ。お前ら何がしたいわけ?」
「やはり下賤な者は品がないのう。貴様は三日後に死ぬ。王都共々なぁ。カッカッカ」
ヒヨコの情報から魔導戦艦ヒューベリオンが魔力温存のためか、普通の馬車の二倍程度の速度で動いているという事が分かっている。王都到着は約三日後だ。
「凄まじく品のないツラで何を言われても響かねーよ。まずは涎くらい拭いたらどうなんだ、耄碌ジジイ」
「き、貴様ァァァァァァ!!」
顔を真っ赤にして激怒するリカオロスト公爵。そのまま血管プチッとイッてそのまま逝ってくんないかな?その方が世界の平和のためだろう。
「はっはっは、リカオロスト公爵。アイツは自分の大事な女が誘拐されて凌辱されていることで気がおかしくなったんですよ。哀れですなぁ~、自分の大事なモノが守れない愚か者の遠吠えですよ」
ファンダリルとやらが俺を嘲り笑う。
「おいヤーベとやら。貴様の女は犯されて拷問された挙句死んだ。先ほどこの魔導戦艦の魔動砲で城ごと木端微塵になったんだよ。あーはっはっは!」
こちらも愉悦に浸る様なイカれた笑みを浮かべる黒ローブ。
「・・・ヤーベ、あの男は何を言っているのだろうか?」
俺の後ろにぴったりと隠れていたイリーナがひょっこり顔を出して俺に聞く。
リズミカルな音楽に乗ってひょっこり顔を出したら人気が出そうだなイリーナよ。
「さあ、黒ハゲの言う事だからな。心もハゲきっちゃって、つるっつるになっちゃった人だから、もう自分でも何を言っているかわかっていないんじゃないかな?」
ひょっこり顔を出したイリーナの頭をなでなでしてやる。気持ちよさそうに目を細めるイリーナ。
「あうう~~~、羨ましい・・・」
カッシーナがちょっと涙目だ。後で頭を撫でてやるか。
「・・・はあっ!?」
やっと気づいたか。目ェついとんのか、ワレ?
「な、なんで! なんでその女がそこにいる!? まさか、さっきの女はニセモノ・・・いやいや、≪魂の鍵≫を奪ったんだ!間違いなく本物だった! ははあ、その女が偽物なのか!チンケな罠で動揺させる気か!本物の女が死んだというのに薄情なものだな!」
うーん、ここまで支離滅裂だと、ツッコんでやる気も起きなくなってくるな。あはれなりけり。
「・・・ああ―――――!! アイツ!私を誘拐したヤツじゃないか!ヤーベ、気を付けろ、あの黒ローブは魔法をつかうぞ!確か縛られた時に魔法で眠らされたんだ!<睡眠>って魔法だったぞ!」
「おお、イリーナ良い情報だ。だが、安心しろ、俺はあんな黒ハゲには絶対負けないよ」
そう言ってイリーナを抱き寄せ、唇にキスをする。黒ハゲに見せつける様に。そう、見せつける様に。大事な事だから二度言おう。
「あうう~~~、羨ましい・・・」
カッシーナがだいぶ涙目だ。後でこっそりキスしてやるか。
あ、リヴァンダ王妃がカッシーナの背中をポンポンしている。
「誰が黒ハゲだ!ふざけんな!ハゲてねーだろーがよぉぉぉぉぉ!!!」
あ、キレた。案外堪え性ないのな。
「・・・は?何で狼たちもそこにいるんだ?城には魔動砲打ち込んだんだぞ!何で生きてる!」
「は?そんなもん崩れる前に脱出したからに決まってるだろ? それよりお前も涎拭けよ。品が無さすぎるぞ。二人して品無さーズだな」
「ぎ・・・ぎざま―――――!!」
「もうよいわ」
ちょび髭が少し冷静になった? 元々イカれてるからな、ちょっと冷静になっても五十歩百歩だな。
「貴様は殺す、必ず殺す!三日後には王都に魔動砲を打ち込む!皆殺しじゃあ―――――!!!」
こっちもキレた。ちょび髭も堪え性ないのな。
すっと後ろにワーレンハイド国王が来る。
「ヤーベ卿、何か手があるのかね・・・?」
俺はワーレンハイド国王に返事をすることなく、数歩前に歩み出て魔導通信機に近寄る。
「三日後・・・? 随分呑気だなぁ、お前ら?」
俺は剣呑な雰囲気をゆっくりと出しながら一言一言を紡ぎ出す。
世界のため?人々のため?奥さんズのため?理由はいろいろ付けられる。今でも、後からでも。
だけど・・・
自分で決める事だから。自分の手で行う事だから。だから、自分で責任を持って、その言葉を紡ぐ。
「明日の日が昇る前までに、魔導戦艦を止めて地面に降りて土下座しろ。そうすればお前らの命だけは助けてやる」
会場の連中も「ええ?」みたいな雰囲気を出している。
この人、何でこんなに強気なの?みたいな?
映像の向こうの二人もポカンとしてやがる。
「もし・・・土下座せずにこの王都に向かって来るようなら・・・お前らは明日の朝日を拝むことは二度とない」
俺はひと呼吸、置く。
「お前らを・・・殺す」
指を突き付けて、俺はそう告げた。
ヤーベ君・・・ついに「覚悟完了!」です。(ちょっとセツナイ)
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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