第187話 スラ神様を降臨させよう
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俺の前に立ちはだかって苦言を呈すドエリャ。
「なるほど、素晴らしいスイーツの数々、恐るべき慧眼とその実力にございます。さすがは救国の英雄と呼ばれるだけの事はありますな。そのお力は戦うだけでなく、スイーツにまで幅広く網羅されておられるとは。ですが、ご自身とカッシーナ王女の結婚式に花を添えたいからと囲いの者を出場させ、それに力を貸すのは公平に期さないのではないでしょうか? スライム伯爵」
観客がにわかに騒めきだす。
なにせ、この白ローブを羽織る俺が『救国の英雄』ヤーベ・フォン・スライム伯爵だと一度も紹介されていないのだから。
「囲いの者って・・・」
なぜかリューナが真っ赤になって後ろから回した尻尾を握りしめてクネクネしている。
・・・股に挟んでいないだけマシだな。人前だし。
ちらりと応援席を見ればフィレオンティーナが今にも魔法をぶっ放しそうな勢いでこちらを見ている。ルシーナとサリーナがかろうじて押し留めているようだ。
リーナはよくわかっていないのか、変わらず応援してくれている。
「何とかおっしゃられてはいかがですかな?」
ドエリャの言葉に国王様たちが何か言おうとしたその時、
『ふむ・・・我がヤーベ・フォン・スライム伯爵であるというのは些か間違いではある・・・、よかろう、望むのならば、現世に顕現してみせよう』
厳かな声色で、全体に響くように声を出す。
これぞ必殺の<スライム的拡声術>!
まるでドームコンサートの如く声を響かせる。
そしてその後ろからウィンティア、シルフィー、ベルヒア、フレイアの四大精霊たちが顕現する。その姿は<勝利を運ぶもの>でまるでどこぞのゴールドク○スを真似たようなかっこいい鎧を着せている。水を司るウィンティアがブルーの基調で、風を司るシルフィーが緑の基調で、土を司るベルヒアが茶色の基調で、炎を司るフレイアが赤の基調の鎧を纏っている。
そして俺は白いローブを脱ぎ捨て、ブルーのティアドロップ型+2枚の大きな翼を背負った姿でゆっくりと宙に浮いている。
『我は精霊王・・・精霊スライムの神、スライム神である!』
堂々とそう宣言する。
宣言した俺の前に移動すると、四大精霊たちが傅く。
「「「「精霊王スライム神様、ご顕現お喜び申し上げます」」」」
その瞬間会場が大喧騒に包まれる。
「うお――――!! 神様だ!神様が現れたぞ!」
「ありがたやありがたや!」
「あれ、魔物かと思ったけど神様なんだ?」
「バッカ!お前バチが当たるぞ!早く拝んでおけ!」
観客は神様が現れたと大パニックで拝みだす。
「ば、バカな・・・か、神だと・・・」
俺がスライム伯爵だと思っていたドエリャはその場で腰を抜かした。
まあ、俺が喫茶<水晶の庭>に肩入れしてたのはわかるだろうしな。良い読みだったが、俺様は斜め右上を行く男だ。
「か、神様が来ちゃったよー!?」
「お、おおお、落ち着いてくださいませ、あなた!」
ワーレンハイド国王もリヴァンダ王妃も抱き合いながら神の顕現に恐れ慄く。
そんな中一人俺の前に歩み出て、優雅に傅く女性。カッシーナ王女だった。
「スライム神様、現世への顕現、誠に光栄の極みにございます。できましたら現在この世界で認識されている神々の一柱に加えさせて頂き、信仰をお許し頂ければこれに勝る喜びはございません」
すらすらと俺に対して要望を述べるカッシーナ。
『許す。現在この世で我が加護を授けているのはヤーベだけである。今後誰かに加護を授けることはないだろうが、信仰の気持ちを妨げるような真似はせぬ。好きにするがよい』
「ははっ!ありがたき幸せにございます」
深々と首を垂れるカッシーナ王女。
『我を信仰する者には気軽に「スラ神様」と呼ぶことを許そうぞ! ちなみに我が本殿はカソの村の外れにある奇跡の泉の横にある。この王都に新しく神殿を立てる必要はないぞ。教会の女神像の横にでも我の像を間借りしておいておけば十分だ』
「「「えええ―――――!?」」」
どうやら観客席の教会関係者が腰を抜かしているようだ。
そりゃそうか、女神だかなんだか信仰している神の像の横に別の神の像を置いとけって言ってるんだからな。わっはっは、この世界の神め、ザマーミロ!
そして、カソの村のマイホームはついぞマイホームとして活躍することはなかったな・・・。今後はスライム神の本殿としてその役割を果たすことだろう。
・・・近くにもう一軒建ててくんないかな?村長に相談してみるか。
「仰せのままに」
恭しく返事をするカッシーナを国王様たちが目をパチクリさせながら見ている。
「ヤーベ様のお力はスライム神様の加護によるものだったのですね・・・」
「じゃあ、教会にスライム神様の像を飾って熱心に祈れば私もあの男みたいな力が貰えるかしら?」
アンリ枢機卿は胸の前で手を組みながら俺を見ているが、聖女フィルマリーはどこまでも俗物のようだ。まあ、最近は最低限の仕事(無償で<癒し>対応)をこなしているから見逃してやるか。
「か、神様・・・?」
「スライム神様・・・?」
「神様出た―――!」
多くの人間たちが神だ神だと騒ぎ出す。
うははははっ!
ラノベの主人公が言ってはいけないセリフナンバーワンではないだろうか?
『我こそが神である』って!
どう考えても勘違いのモブキャラか悪党のセリフだもんな!
だいたいラノベでは自分が神だなどと宣うバカはチート勇者か復活した魔王にぶっ殺されるパターンが多い。
そう考えると神を自称した俺様はスゲー悪党っぽいな!
少し自重しないと狩られてしまうかもしれん。ラノベの典型的パターンに!
気をつけねば!
・・・一応四大精霊たちに、精霊の神様って自称しても大丈夫かな?的な相談はしたんだぞ? だけど、「ヤーベなら何言っても大丈夫じゃない?」ってウィンティアなんかさらっとOK出したからな。シルフィーは「お兄様が神・・・」ってちょっとアブナイ目つきだったし。ベルヒアねーさんは「ヤーベちゃん神ってるわ~」とか言ってからかってくるし、最近やたらと素直になったフレイアに至っては「よし、オレもヤーベを崇めるか!」とか訳の分からんことを言い出す始末だった。
それに、今このタイミングで神を自称というか詐称というか・・・したのにはある程度理由がある。
俺がこの国を救った『救国の英雄』として祭り上げられている分にはいいのだが、俺様の力を不審に思う連中も少なからずいることはいるのだ。
なので、俺の「すごい力ってどうなってるの?」という疑問にアンサーを投げておこうというわけだ。
人間、目で見えない不安なものには理解が及ばずに恐れ慄きやすいが、たとえすごい力があったとしても、その力の「理由」が明確になっていれば、そうは不安にならないものなのだ。
俺という存在が人間離れしている理由・・・それが大いなる『神の加護』を受けているから!という説明をすることにより、人よりすごい力を持っていても、「ああ、神のご加護があるからすごいのね」で済ませてもらおうという魂胆なのだ!
フツーなら異世界転生時に女神とかにチートを貰ってくるわけだから、転生者なら事実神のご加護があるわけだが、当然ノーチートの俺にはそんなものはない。
だから、悲しいかな自作自演で神のご加護がある!と王都のみんなに宣言する事にしたのだ。
・・・まるでバレンタインデーにチョコを貰えない自分が自作自演で自分の下駄箱にでもチョコを入れて、チョコ貰っちゃった、みたいなことを呟いている様で、俺の心の奥底に多大なダメージの津波が押し寄せてきているが・・・。
それでも俺の存在がまるで想像のつかない不気味なモノであると思われるよりは、何だか知らないけど精霊の一種を司る神様から「ヤーベ、加護貰ってるってよ!」と言われている方が幾分も親しみやすいのではないだろうか?
くそうっ!それにしてもこんなチュウニ病全開で『俺は神だ!』って叫んで自作自演で自分に神の加護があるってアピールせにゃならんとは・・・! これも俺にチートを寄越さなかった神のせいだ! オノレカミメガッ!!
「それで、スライム神様はなぜこの世に顕現を・・・?」
アンリ枢機卿が席を立ち、カッシーナ王女の横に来て傅き、問いかける。
『我が加護を与えたヤーベが結婚するという事だったのでな、祝いの品を送ろうと思ったのである。優勝すればヤーベの結婚式にデザートが出せるらしいのでな・・・。それが三品目のスイーツである』
俺のセリフにリューナちゃんが我に返り、三品目だけを入れて冷やしてある魔導冷蔵庫からスイーツを取り出す。
それは先ほど炎の酒を作ったフルート型シャンパングラスと違い、少し大きめのソーサー型シャンパングラスをモチーフにしたガラスの器であった。その中に満たされているものは、薄めのブルーのゼリー。
『「スライムゼリー」である』
俺の言葉を受けてリューナちゃんが審査員の前にグラスに入ったスライムゼリーを配っていく。
「な、なんだこの器!あまりにも透明だ・・・」
「硬くて、美しいですわ・・・」
「向こうが透き通って見えます!」
「ふーむ、これはいったい何でできているのだろうか?」
「まるでブルーのゼリーが空中に浮いているようだの」
王家の面々とキルエ侯爵が興味津々でガラスで出来たグラスを眺めている。
カッシーナも審査員席に座ってスライムゼリーをしげしげと眺めている。
実はカッシーナには俺が神様だと本来の姿を現すかもしれない、と伝えてあった。その場合はさっきのようなやり取りで場を治めようと話をしてあったのだ。
そして審査員たちは同時にスプーンでスライムゼリーをすくって口に含む。
「「「「「!!!!!」」」」」
そして、驚愕。
その口の中には、深く深く甘くとろけそうで、それでいて爽やかな風が優しく吹き抜けそうな清廉さを兼ねた、圧倒的に神々しいまでの味が口の中に広がったのである。
その味わいを言葉で説明することは、不可能であった。
そして、全員の目からすうっと頬を伝って涙が零れ落ちる。
観客席の応援する人々も近くにいたドエリャも声もなくそれを見守った。
「感動だ・・・いや、感動などという言葉ではまったくもって言い表せない・・・」
ワーレンハイド国王が呟いた。
「ええ、全くですわ。私も、言葉にできません。この素晴らしさを表現する言霊を持ち合わせていないのです」
ゆっくり頭を振って、リヴァンダ王妃も溜息をつく。
「これはいったい何なのでしょうか?」
素直にカッシーナが俺に聞いた。
『これは、俺の体でっす♡』
「「「「「ブブフォッッッッッ!!」」」」」
その時、審査員10名全員がきれいに吹いて綺麗なアーチを架けた。
吹いたゼリーは日の光に照らされキラキラと薄いブルーの光を放ち、さながら神の虹がかかったようだと、その時を振り返って人々は口にしたという。
初期プロットで考えていた「スラ神様降臨す」ついに実現してしまいました(笑)
そしてこの先、初期プロットでは王都編最終の事件へと進んでまいります。
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