第179話 「お前たちを守る」というセリフを吐く以上、その責任もちゃんと全うしよう
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また、チェーダの一人称を「オレ」に統一致します。よろしくお願い致します。
「マカン?」
俺は胸を押さえて蹲ったミノタウロスの少女に声を掛ける。
「胸が張って苦しいの?」
「うん・・・辛くて・・・」
ミーアの問いかけに荒い息を吐きながらマカンは答えた。
「ちょっと向こうで絞ろうか、エイカ、手を貸して」
「はいっ!」
両肩を支えられて奥の方へ連れられて行くマカン。
よく見れば、草木を使って屋根や壁のようなものを作ってある場所があるな。
いつもはあそこで寝泊まりしているのかな?
「大丈夫なのか?マカン」
「ああ、マカンは気が利いて面倒見のいい奴なんだが、自分自身はそんなに精神が強い奴じゃないからな。不安なことがあったりすると乳の出が悪くなって胸が張って痛くなるんだ」
「あ、そうなんだ、胸が張ってって・・・ええっ!? お乳出るの!?」
「な、なんだよ?変か?」
俺が驚いたように声を上げたのでチェーダは小首をかしげて俺に聞いた。
「じゃあ、マカンはお腹に子供がいるのか?」
「ば、バカッ!ふざけるんじゃないよ!オレたちは全員生娘だよ! だいたいオレたちみたいなミノタウロスハーフを相手にするような男なんていやしないよ!」
顔を真っ赤にしてプイッと横を向くチェーダ。カワイイ。
(ケモっ娘やモンスターっ娘ならご褒美だって奴らもたくさんいましたけどね!)
俺は地球時代の男たちの挽歌を心の中だけにそっと仕舞っておくことにした。
う~ん、それにしても俺は酪農の知識とかほとんどないが・・・とにかく彼女たちはお乳が出るんだな。
え・・・? てことはタイゾーのオッサンのところで飲んだ牛乳って・・・。
「え? タイゾーのオッサンが飲んでた白い液体・・・てかミルクって、もしかして・・・」
「ん?タイゾーさん?そういやオレたちのお乳を樽で持って行ったな。代わりに食べ物をたくさんくれたからすごく助かったよ」
「なんだとぉ!」
「な、なんだよ、どうした?」
俺が激高して立ち上がったのでチェーダは驚いて俺を見た。
「誰だ!誰のお乳を持って行った!」
「え?あ、あの時は・・・ミーアとエイカだったか?」
「よし!ギルティーだ!」
「おいおい、どうしたんだ? も、もしかして他人にお乳を飲まれるのは嫌なのか・・・? じゃ、じゃあオレはヤーベ専用のお乳にしてもらってもいいぞ・・・? 今まで子供たちの栄養のために飲ませていただけだしな」
「ブフッ!」
ヤバイ! 立ち上がって叫んだため、まだ体操座りで地面に座っているチェーダは俺を下から見上げるような目線でそのようなことをおっしゃりやがってくれましたよ!
俺に血が流れていたのなら、確実に鼻血を噴いた自信があるっ!
そして周りの娘たちがヒューヒューと囃し立てる。
さらに顔が赤くなるチェーダ。カワユス。
「ヤーベ様」
「え?」
見ればミーアが戻って来ていた。
「少し、お手をお貸し頂いてもよろしいでしょうか?」
「俺?」
「はい」
「ああ、わかったよ」
そう言って俺は魔導コンロのつまみを「弱」から「保温」レベルに落とす。
「チェーダ、このトン汁お替りする時はお玉で中を少しかき混ぜてから皿に装うようにな」
「ああ、わかったよ」
俺はトン汁をチェーダに任せてミーアの後をついて行く。
ちなみにオーク肉を使っているのに「トン汁」と呼ぶのは、「オーク汁」と呼ぶと食欲の減退感がハンパないからだ。
案内された草木で隔離された部屋のような場所には、木に縋りつくように立つマカンの姿があった。
「どうしたんだ?」
「お乳が溜まって胸が張って痛いのに、なかなか出てこないのです。ヤーベ様、できましたらマカンの胸をマッサージしてお乳の出の改善をお願いできますでしょうか?」
な、なんですとぉぉぉぉぉ―――――――!!!
「お、俺が!?」
「はい」
「どして?」
「実は私たちがお互いマッサージしてもあまり効果がないんですよね・・・。実際胸が張って痛いのになかなかお乳が出ない娘は多くて・・・。結構苦しいんですよね。であれば、男性であり、私たちの救世主でもありますヤーベ様にマッサージして頂いたら、安心してお乳もいっぱい出るのでは・・・と」
「ア、アンシンスルコトハダイジデスヨネ?」
「え? ええ、そうですね?」
ミーナがちょっと俺のテンションに戸惑ったようだが。
見ればマカンの足元にはあまり見た目の良くない傷んだ木桶が。
「大事な大事なマカンのお乳を搾るんだ。この綺麗でしっかりとした樽に搾乳しよう」
そう言って亜空間圧縮収納から鍛冶屋のゴルディン師の紹介で作ってもらっている木工屋の酒樽を取り出す。
「そ、そんな大きい・・・樽に・・・」
なぜかマカンの顔が赤くなる。どした?
そして、俺はマカンの後ろに回ると、そっとマカンの大きな乳房を下から持ち上げるように掴む。
「アッ・・・」
これは搾乳!これは搾乳!これは搾乳!
なんなら医療行為!医療行為!医療行為!(注:無資格です)
俺は心の中で呪文のように繰り返す。
そして、なぜか思い出す。近所の内科にたまたま風邪を引いたため、診察と薬をもらいに受診した際、待合室に置いてあった少ない雑誌を一つ取ったら、やっぱり婦人雑誌で、たまたまそれを開いたら母乳の出が悪いお母さんへの母乳改善マッサージ特集だったことを。そしてなんの気もなく、最後までしっかりと読みつくしていたことを。まさか、あの時の雑誌知識が今ここで役に立とうとは! 人生、何があるかわからんものですな。
ついでにぐるぐるエネルギーを少し活性化させて、手のひらを温める。
たぶんだけど、温めてやる方がリラックスできるはずだ。
「あ・・・ヤーベ様の手が、温かいです・・・」
「それはよかった」
そうして俺は背後からマッサージを進めながらマカンの耳元に口を近づけてそっと囁く。
「マカン。もう何も心配いらない。これからはつらく苦しいことよりも楽しくて幸せなことがいっぱいあるから。俺がお前たちを守るから。だから安心して暮らして幸せになってくれ」
地球時代、「俺がお前を守る」なんてセリフを吐く奴が大嫌いだった。
小説でも、ドラマでも、そして現実でも。喫茶店でたまたま隣のテーブルに座ったバカップルがまさしく件のセリフを吐き、そんな男のセリフに手を握った女の表情を見て、「何言ってんだ、ふざけんな」とずっと思ってきた。
生きることはそれだけで理不尽で不条理だ。
生きれば誰かを、何かを犠牲にする。その幸せは誰かの悲しみの上にある。そう思って生きて来た。
そして、地球時代はさまざまな柵により、自らの思いを貫くことなど、夢のまた夢だとずっと思っていた。
だが、この異世界に来て、法の力が薄く、自らを自らが守らねば生きていけないような世界で、奇しくも伯爵という地位をもらい、ある程度国にも自分の意見などを融通してもらいやすくなった。魔物を仕留められるような力を身に着けることが出来た。ローガたち使役獣のお掛けで、魔物を狩って現金に替えることが出来てお金にも困らなくなった。
だからこそ、守りたい存在が出来た。きっと力が無ければ見過ごしていたことでさえ、守りたいと思うようになった。守りたいものは自分の手で、自分の力で守ることが出来るようになった。
(もし、地球時代でも諦めずにコツコツ頑張っていたら、もっと守りたいものが出来ていたのかな?)
ラノベ小説に埋もれていた人生だって、自分としては決して悪いものであったとは思っていない。でももしかしたら、もっと努力していたら、違った人生もあったのかもしれない。
(だけど、今はもうこの異世界で生きているんだ。今は俺の手の届く人たちを少しでも助けて守っていかなくちゃ!)
真摯に搾乳のためマッサージを続けていく、全体に、そして先端も。
「アッ・・・アアッ・・・わたし・・・もう・・・イッ・・・!」(注:搾乳且つ医療行為(無資格)です)
プシュ――――――!!
新品の酒樽にすごい勢いで溜まっていくミルク。うん、ミルクと呼ぼう。お乳だとココロが持たないから。
それにしても、体のどこにこんなに入っていたんだろう? 異世界不思議すぎる。
リットル? ガロン? よくわからないが、すごい量だ。
そして絞り切ったのか、マカンがずるずると地面に突っ伏してぐったりする。
「し、幸せ・・・」
それを見たミーアとエイカが、
「わ、私も最近張り気味で・・・」
「私もお願いします・・・」
とにじり寄ってきたので搾乳してあげた。
「きゅう・・・」
「アフン・・・」
二人してマカンと同じく地面に突っ伏しているので、そっとしておいてあげる。
酒樽はすでに満タンだ。俺のココロも満タンだ。
「キャ――――!!」
「みんな森に隠れろ!」
チェーダの声が聞こえる。俺はダッシュで広場に戻る。
そこにはオスのミノタウロスが3匹も来ていた。1匹はチェーダの右手首をつかんで上に引き上げている。
「ヤ、ヤーベ逃げろ!こいつらはメスを攫いに来たんだ! オレが何とかするから!」
ブチッ! ヤベ、俺の中で何かが切れる音がする。
見れば1匹はさっき俺が居た草木の家の方へ、もう1匹は子供たちが逃げた方へ向かおうとしていた。
グオッグオッと唸り声をあげながら迫るミノタウロス。ああ、こいつら言葉も操れない下等な魔獣なわけね。
俺は触手を二本伸ばすと、それぞれのミノタウロスの首に鞭の如く絡みつける。
「ハアッ!」
裂帛の気合一閃! 触手を思いっきり振り上げ、ミノタウロスの体を宙に舞わせる。
ブチブチッ!
あまりの勢いにミノタウロスの首がちぎれてしまう。
その間に、俺はチェーダの横に瞬時に移動した。
「テメエ!俺の女に何しやがんだゴルァァァァァ!!」
ドパンッ!
トルネーディア・マグナム一閃!
手加減無しのコークスクリュー・パンチはミノタウロスの頭部を爆砕する。
プシュー
噴水のように血を吹き出す首なしのミノタウロスの体。
「ふえっ?」
瞬間、理解できないチェーダは何が起こっているのかわからない表情で俺を見た。そして一呼吸おいて自分が助かったことに気づく。
「ヤーベ! ヤ――――ベェェェェェ!!」
号泣して俺に抱き着いてくるチェーダ。そりゃそうだよな、怖かったんだよな。だけど仲間のみんなを逃がさなくちゃ、守らなくちゃって、また頑張ったんだよな。もう俺がいるから頑張らなくていいって言ってやったのに。
俺はチェーダをギュッと抱きしめながら頭を撫でてやった。
なぜかミノタウロスハーフの彼女たちとの交流が長い(苦笑)
ミルクを確保してさっさと戻って決勝戦に臨むはずが、ミノタウロスハーフの少女たちの生活を垣間見てしまったヤーベ君には、そのまま帰るという選択肢はなかったんですね~。
ノーチートと叫び続けながらも自分の努力と知識によって力をつけていくヤーベ君。あれ?このままだと無自覚天然タラシのハーレム勇者野郎のパターンに?
んなわけないか~、あのヤーベ君だし(作者も匙投げる(爆))
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