第139話 事態の収拾のために手を打とう
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「一体どういう事なのですっ!」
王妃リヴァンダは珍しく声を荒げた。
今女性騎士から受けた報告はにわかに信じられないことばかりだった。
南からは万にも迫ろうかと言う魔物の大群が、
西からは20mはあろうかという山のような一つ目巨人ギガンテスが、
北から雷竜サンダードラゴンが向かって来ているというとんでもない報告だったのだ。
「こ、こんなことが・・・このままでは王都が灰燼に帰してしまう・・・」
リヴァンダは顔面蒼白になった。
そこへ別の女性騎士が飛び込んでくる。
「こ、国王様が!」
「あの人がどうしたの?」
「プレジャー公爵に連れて行かれて、バルコニーに!」
「い、一体何が起こっているの?」
プレジャー公爵は数々の犯罪行為を行っていた。
そのため取り調べを進めており、その間謹慎を命じていたはずだ。
この王城に姿を見せていいはずがない。
リヴァンダは全く状況が飲み込めなかったのだが、ともかく侍女たちと共に女性騎士の案内でバルコニーに向かった。
・・・・・・
「一体どうなっておるのだっ!」
登城したフェンベルク・フォン・コルーナ辺境伯は宰相であるルベルク・フォン・ミッタマイヤーに詰め寄った。
最初、宰相のルベルクの執務室にコルーナ辺境伯が怒鳴り込んできたのだが、その後もエルサーパ、フレアルト、ドルミア、キルエの各侯爵も集まって来た。
執務室では狭すぎるので、大会議室に移動して状況確認を行うことになった。
万にも届くような魔物の軍勢、巨人に雷竜、王都は風前の灯火だった。
「一体・・・どうなっている?」
フレアルト侯爵が腕を組んで唸る。
「あれほどの魔物、普通に湧いて出るはずがない。何者かの陰謀だろうの」
キルエ侯爵も腕を組み考える。
腕を組むとドレスを着るキルエ侯爵の胸が強調される。
「軍の対応はどうなっている?」
エルサーパ侯爵の問いに答えるのは宰相のルベルク。
「最初の報告が南からの魔物の軍勢だったのでな。王国軍のほとんどを南に集結させて食い止める予定だった。そのため、その後の報告で出たギガンテスとサンダードラゴンへの対応はまだ何も手が打てていない状況なのだ」
「実にマズイ状況ですな・・・」
ドルミア侯爵は頭を掻いて唸る。
「貴殿らは私兵をどれだけ用意できる?」
そこに現れたのはドライセン公爵。
プレジャー公爵が謹慎処分となっており、リカオロスト公爵が領地へ帰っている今、実質貴族のトップに立つ男であった。
「正直、20~30名程度か」
エルサーパ侯爵が呟くが、他の侯爵たちに似たようなものだった。
領地には多くの私兵を準備していても、王都では不要であり、普段から兵を置くようなことは無かったのだ。
「それでもよい、出来るだけ出してもらいたい。王都の市民を非難させるための誘導作業などを対応してもらいたい」
「だが、どこに避難する?」
ドライセン公爵の説明に、フレアルト侯爵が疑問をぶつける。
「東だ。現在王都に3方向から脅威が近づいているのだ。東から脱出するしかあるまい」
「そうだな・・・」
そこへルーベンゲルグ伯爵、タルバリ伯爵、コルゼア子爵などの貴族が続々と集まって来る。
それぞれが情報を求めて集まって来ていた。
そして、王国騎士団の担当より逐一情報が入って来る。
状況は絶望的な様相を見せる。
「ふむ、実際打つ手無しじゃの。コルーナ辺境伯殿。お主の切り札を切ってもらうしかないのではないか?」
キルエ侯爵がコルーナ辺境伯に目を向ける。自然と他の人たちも向ける。
「・・・そう言えば『救国の英雄』殿はどうしているのだ?」
ドライセン公爵が尋ねる。
「それこそ、男爵、子爵と異例の出世をしてるんだ。こんな時に働かなくていつ働くんだって話だぜ」
フレアルト侯爵がやっかみを込めて言う。
「よせ。彼も元々望んで叙爵となったわけではない。無理を言えば王国を捨てかねんぞ」
キルエ侯爵がクギを刺す。
「はっはっは、侯爵が子爵に気を使うか。面白いな」
ドライセン公爵は豪快に笑った。
「4日で子爵になった男ですからね」
キルエ侯爵も微笑み返す。
「そのヤーベ殿・・・ヤーベ子爵なのですが・・・、朝から姿が見えないのですよ」
「なにっ?」
ドライセン公爵が驚いて声を上げる。
この緊急事態に、朝から行方不明。
「逃げやがったか? 腰抜けめ! 貴族の風上にも置けねぇ。やはり剥奪したほうがいいんじゃねぇのか?」
フレアルト侯爵が物騒な事を言い出す。
「王のお決めになられたことである」
ドライセン公爵がフレアルト侯爵に睨みを効かす。
フレアルト侯爵は面白くなさそうにそっぽを向いた。
「それに、逃げたのではなく、すでに対処に動いたのかもしれんぞ?」
キルエ侯爵がニヤリと笑う。
「そう言えば・・・いつも庭にたむろしている狼牙達も、ゲルドン殿もいなかったな」
コルーナ辺境伯がそう呟くと、
「なに?」
キルエ侯爵が声を上げる。
「ヤーベ殿にとって狼牙族は虎の子の集団であろう。それが1匹もいないと申すか?」
「え、ええ・・・。1匹もいなかったですな」
「では、間違いなくこの未曽有の危機に対処するために動き出している・・・といったところであろう」
「しかし・・・動いているとはいえ、『救国の英雄』殿でもどのように対処するというのか」
キルエ侯爵がホッとしたような感じでヤーベの行動を断定すると、エルサーパ侯爵がヤーベの対処について心配する。
「うむ・・・」
キルエ侯爵も黙り込む。
何せ相手は万にも届こうかと言う魔物の群れにギガンテス、サンダードラゴンである。
どうにかしてくれと頼む事自体どうかしていると言える。
「大変です!」
そこへ女性騎士が飛び込んでくる。
「どうした?」
「い、今、バルコニーに! プレジャー公爵とその部下らしき男と女性の姿をした悪魔がワーレンハイド国王を捕らえて王の座を明け渡すように迫っております!」
「な! なんだとっ!」
フレアルト侯爵が激昂する。
「とにかくバルコニーに行こう」
ドライセン公爵を先頭に全員がバルコニーに向かった。
・・・・・・
バルコニーに到着した時、ちょうどリヴァンダ王妃も到着したところだった。
「一体どういうつもりなのです!」
誰も聞いたことが無かったリヴァンダ王妃の怒声がバルコニーに響いた。
「これはこれは、皆さんお揃いで」
余裕綽々で返答をするプレジャー公爵。
「冗談では済まされぬ事だと思うが?」
ドライセン公爵も眼光鋭くにらみつける。
「当たり前だ。愚か者が。本気で王の座を明け渡してもらおうと思っているのだからな」
「あの魔獣たちはお前の仕業か!」
そう、これだけの人数が集まったのである。国王が近くにいるとはいえ、強引に事を進めればプレジャー公爵たちを拘束する事も出来るだろう。だが、あの魔獣たちがどのよう動くかわからないのだ。
「キャハハ! 人がいーっぱい! 精気吸っていい~?」
「なんだ、この悪魔?」
フレアルト侯爵がにらみつけるが、悪魔には効果がない。
「今はダメだ」
「つまんな~い」
「サキュバスだな。精神に干渉する魔法が得意な種族だな」
「ああ、これで合点がいった。力のある王国騎士団の騎士たちの守りを突破したのはこの悪魔の魔法だな」
コルーナ辺境伯とタルバリ伯爵が女性悪魔をサキュバスと看破する。そしてそれにより、なぜプレジャー公爵が国王をここまで連れて来ることが出来たのか理解したのである。
「賢い賢~い、お礼にエッチする?」
「ふざけやがって!」
タルバリ伯爵が怒りを隠さずに一歩踏み出す。緊急時ではあったが、宰相のルベルクに会いに行くのに剣を持っていくわけにもいかず、現在ここにいる貴族たちは全て武器を所持していなかった。
「不思議だな」
ぼそりとドライセン公爵が呟く。
「何がだ?」
「いやな、これだけの事を起こして、ワーレンハイド国王様より例え王の座を譲られたとして、どうなるというのだ?」
「どうなる、だと?」
「王家を簒奪したお前に誰がついて来るというのだ? 例えワーレンハイド国王より王の座を譲られたと発表しても、我ら貴族はお前を王とは認めん」
「そりゃそうだよな。簒奪者に従う必要はない!」
フレアルト侯爵もドライセン公爵に追従する。
「くっくっく、はっはっは、わーーーーはっはっは!」
馬鹿笑いしだすプレジャー公爵。
「決まっておるだろう? ワシに従わねば、あのバケモノたちを領地にけしかけるだけよ」
そう言ってリヴァンダ王妃やドライセン公爵に背を向け、バルコニーの手すりに手を掛ける。
「見ろ!あの魔物の群れを!山のような巨人を!恐ろしい雷竜を!」
そう言ってもう一度振り返り、その手を振る。
まるで、それが自分の力だとでも言わんとばかりに。
「・・・従わぬものは魔獣で殺すのか。王国の国力は地に落ち、すぐにでも隣国から攻め込まれて御終いだろうな」
ずっと黙って聞いていたワーレンハイド国王が呟いた。
「だからワシに従うしかないんじゃよぉ」
ついに涎まで垂らして笑い出すプレジャー公爵。
「いやあ、笑いの三段活用、実際に聞けるとは思えなかったな。ラノベあるあるも異世界になるとホントにあるあるなんだな」
謎の言葉が聞こえてくる。その言葉の意味をだれも理解することは出来ない。
だが、その声の主は誰もが密かに心の底で待ち望んでいた存在だった。
「ヤーベ殿!」
真っ先に声を出したのはコルーナ辺境伯であった。
「ヤーベ殿、やはり来てくれたか・・・」
キルエ侯爵も少し安堵するように声を漏らす。
「毎度、正義の味方でおま」
集まった人々をちょっくら御免よとかき分けながら前までやって来たヤーベは、右手をひょいっと挙げると、あまりにも軽く挨拶するのであった。
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