閑話22 王都に住む人々の幸せな日常③
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「う~~~~」
この日の仕事終わり。
王都警備隊クレリア・スペルシオは副隊長エリンシアと二人で酒場に繰り出していた。
王都での喧騒もひと段落して、早く平穏な日々が戻って来てくれと願うクレリア・スペルシオであったが、彼女の周りはなかなかそうはいかない様であった
「また、実家の母君から見合いの連絡があったのですか?」
エールを片手にエリンシアはクレリアに話しかける。
「そうなんだよ・・・、母上がしつこいんだ・・・」
右手に持ったエールのジョッキを一気に煽って飲み切る。
ドンッとテーブルに空になったジョッキを叩きつける。
「お代わりだ~、お代わり持ってきてくれ~」
空になったジョッキを振り回すクレリア。
「ちょっとちょっと、雫が飛びますよ!?」
いつもは冷静沈着で頼りになる隊長のクレリアがここまで酔って乱れるとは。
よほど母上からの結婚圧が強くてストレスになっているのか。
エリンシアはクレリアに同情の目を向ける。
「はい!エールお代わりお待たせしました~」
クレリアの前にエールが注がれた新しいジョッキが到着する。
それを掴むと一気に煽り、半分ほど飲み干してしまう。
「クレリア、飲み過ぎでは?」
エリンシアが心配する。
「ふう・・・、キルエ侯爵襲撃事件の撃退、教会の悪徳枢機卿捕縛、その前には王都のならず者たちの捕縛・・・、何だか知らんが手柄だけは急に山積みになったが・・・」
ツマミの豆料理をガっと摘まんで口にする。
「王国からの慰労金出ましたね。後、給料もアップしましたよ。ここ数日の大活躍で。すごいですよね、クレリア隊長」
持ち上げる様にエリンシアがジョッキを掲げる。
「でも、ぜ~んぶヤーベ殿の協力があってこそなんだ・・・。刺又も、キルエ侯爵襲撃者情報も。私の活躍など塵芥にも等しい!」
残りのエールを飲み切り、再びテーブルにドンッとジョッキを叩きつけるクレリア。
確かにヤーベの助力は大きいところであろう。だが、クレリアの実力は本物である。
しかしながら、やっかむ者達からはヤーベのおかげで成果を上げている、などと揶揄されることもあった。
「そんなことないと思うよ? 例えヤーベさんの力を借りたとしても、結果を出したのは貴女じゃない。自信持っていいと思うよ?」
「そうかな・・・?」
「そうだよ!これだけ活躍して結果出してるんだから、母上殿にも仕事で結果が出ているから、結婚は今のところ無理って言えばいいんじゃない?」
「むうっ!確かに! 今の私の恋人は『王都』なんだ!」
そう言って空のジョッキを高々と掲げるクレリア。
「そうそう!その意気ですよ!」
エリンシアも肩を叩きながら慰める。
「・・・でも、ヤーベ殿ならいつでもOKなのだがな・・・」
クレリアの掻き消える様に小さく呟いた声は誰にも聞こえなかった。
「ふう・・・」
あまりに久々に歩く。
ルーミは昨日大きな狼さんたちに地獄から助けられた。
約一か月前、教会の清掃作業員、炊き出し作業員募集に応募した。
一日作業で銀貨2枚。
作業からすると報酬は多い感じだった。
半年前に流行り病で夫を亡くし、まだ幼さの残る姉妹と自分だけになってしまった。
夫の経営していた食堂を自分と子供たちだけで賄っていかなければならない。
食堂の他に少しでもお金を稼げないかと思っていたところで、教会での作業の斡旋がある事を知った。
何十人と作業員が集まる中、振り分けられたグループで作業していたのだが、いつの間にか意識を失い、鎖につながれていた。
誘拐されたと気づいたのは同じ部屋にもっと古くから鎖でつながれていた女性たちの話からだった。
教会で作業手伝いを募集し、美しい女だけを一人か二人、誘拐する。
悪辣なのは、キチンと報酬を出して、作業に参加した人々からも評判がよかったことだ。そして、その中で参加前の面接から家庭環境を確認し、行方不明になっても問題になりにくい人物を選んでいたのだ。
だが、あの日、地獄の生活が終わり、助け出されたのであった。
大きな狼が踏み込んできて、恐ろしかった大きな騎士を張り手でボコボコにしてくれた。
あの時ほどもっとやれ!と思ったことは無いだろう。
助け出された時、多くの女性たちは足腰が弱っており、歩くのもままならない感じだったのだが、なんと大きな狼さんたちが自分たちを優しく背中に乗せてくれたのだ。
あの時ほどモフモフ感に包まれたことは無い。
大聖堂に連れて来られたのだが、教会の枢機卿のほとんどが捕まり、教会の腐敗は一掃されたとのことだった。
私たち捕まっていた女性たちは神官に回復呪文を掛けてもらって、温かい料理も食べさせてもらった。
本当に久しぶりにふかふかのベッドで眠ることが出来た。
・・・自分の家のベッドはこんなふかふかではなかったから、久しぶりという表現は些か問題があるかもしれない。
そして私はグッスリと休むことが出来た。だが一日しっかり睡眠をとっただけでは、やはり疲労感が抜けきらないのか目が覚めたのは翌日の昼前であった。
自分たちを助けてくれた大きな狼さんの飼い主さんがヤーベさんだった。ヤーベさんはポポロ食堂に行ったことがあるらしく、
「ポポロ食堂のレム、リン姉妹が貴女の帰りを待ってますよ。教会で治療を受けたら早めに帰ってあげてくださいね」
と言ってくれたのだ。
「もう・・・もう、あの子たちには会えないものと・・・」
ぽろぽろと涙が止まらなくなる。
「貴女が帰って来るまで、食堂を潰さない様にと毎日奮闘していますよ。どうぞ褒めてやってください」
「ううう・・・はいっ、はいっ!」
娘達が自分を信じて待っていてくれる、お店を頑張って切り盛りしてくれている。こんなに嬉しいことは無いと思う反面、こんな事に巻き込まれてしまって、家に長期で帰れなくなって子供たちに迷惑を掛けてしまった。
「早くあの子たちに会いたい・・・」
ふらつく足に鞭を打ち、自宅の食堂へ向かう。
「・・・なに、これ・・・」
ポポロ食堂の前には20人以上の行列が出来ていた。
夫が生きていた頃でもこんなにお客が並んでいたことは無い。
「すみません、ちょっと通してもらえますか?」
「おいおい、ちゃんと並んで・・・」
そう声を掛けようとした客はルーミの顔を見て驚く。どうやらルーミの顔を知っていたようだ。
「ルーミさん帰って来たのか!」
ガラッ!
食堂の引き戸を開けて飛び込む。
ちょうどリンが出来たてのバクダン定食をテーブルに置いたところだった。
「リン!」
「お・・・お母さん?」
ガララン。
お盆を落としてしまうリン。
「お母さん!!」
そう言ってルーミの胸に飛び込むリン。
「お母さんお母さんお母さん!」
リンはルーミに抱きついて泣きじゃくった。
その声を聞いてレムも厨房から飛び出してくる。
「お、お母さん――――!!」
レムも全力で抱きついて泣き出す。
「リン、レム、ゴメンね!心配かけてゴメンね!」
ルーミも涙を流しながら二人の娘を抱きしめる。
「おお・・・ルーミさん帰って来たんだ!」
「母ちゃん戻って来てよかったな!」
「リンちゃんよかったね!」
「レムちゃんこれで安心だね!」
お客さんたちももらい泣きする。
「よっしゃ!こんなめでたい時は追加注文だ!」
「ドリンク全部飲むぞ!」
「いや、めでたいのは同意するが、まだ店の外で並んでるんだが・・・」
この後ルーミも久々にエプロンをして接客を手伝い、とにかく出せる料理や飲み物は全て注文されてしまい、ポポロ食堂は過去最高の売り上げを上げることになったのだった。
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