第117話 イリーナの両親に挨拶しよう
ブックマーク追加誠にありがとうございます!
大変励みになります。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!
午後3時。
先触れ通りにルーベンゲルグ伯爵邸に伺う。
俺とイリーナの2人だけだ。
馬車を出しては貰っているが、ルーベンゲルグ伯爵邸に着いた時に引き上げてもらった。
リーナは元より、ローガ、ヒヨコ軍団も念話が届く範囲で近くでの監視は不要と通達した。
ルーベンゲルグ伯爵邸の扉を入り口で出迎えてくれた執事が開けてくれる。
扉を開けて館に入ると、エントランスには壮年の夫婦と思われる男性と女性が立っていた。
「イリーナちゃん・・・お帰り!」
涙を流して、俺の隣に立つイリーナを抱きしめる女性。
「お母さま・・・」
イリーナも涙を流して抱き締めあう。
「ヤーベ君だね。コルーナ辺境伯から君の事は手紙で教えて貰ったんだ。
イリーナを今まで守ってくれて本当にありがとう。感謝する」
そう言って頭を下げる男性。きっとイリーナの親父さんだろう。
「すまない、自己紹介が遅れたね。私はダレン・フォン・ルーベンゲルグだ。ルーベンゲルグ伯爵家の当主で、イリーナの父親でもある」
「私は妻のアンジェラです。イリーナの母親です」
「・・・兄は領地なのですか?お父様」
「うむ、イリーナの兄に長男のトランがいるが、今は領地で代官をしているから王都にはいないんだ」
「そうなんですね、改めましてヤーベと言います。普段はカソの村近くの畔に家を建ててもらって住んでます」
「・・・すまない、カソの村って、どのあたりにあるのかな?」
おお、カソの村では全く位置が不明なのね。
「コルーナ辺境伯の領地でソレナリーニの町から二日くらいの距離にある村です。田舎で何もないところですが、良いところですよ」
とりあえず王都のご両親に田舎自慢。
もともと地球時代も実家は田舎だったしな。
「ヤーベに命を助けてもらったのも、そのカソの村近くの泉の畔だったな」
イリーナが嬉しそうに俺の顔を見上げながら言う。
「命を助けてもらったのか? なぜそんな遠くまで行ったんだい? 城塞都市フェルベーンで商家の手伝いをする手筈を整えてあっただろう?」
「? そのような話初めて聞きましたよ、お父様。何でも冒険者として生きて行かなければならないとかで、ソレナリーニの町まで行って冒険者ギルドに登録したのですから」
「な、なんだって!?」
「貴方、どうしてそんなことに・・・?」
「旦那様、とりあえず来客室にご案内してお茶をご用意いたしますね」
執事さんの一言に玄関先で立ち話を続けていた事に気づく。
「それではご案内致します」
執事さんの案内について行くことにした。
執事さんの入れてくれたお茶をゆっくり飲んでひと心地ついたところで、ダレン卿が質問を続ける。
「それで、命の恩人ってどういう事なんだい?」
正直俺はどこまで正直に話していいものかわからなかったので、どう説明したものか考えていたのだが・・・。
「実は冒険者ギルドで登録した後、ヘンな盗賊風の男たちに騙されて・・・」
と、イリーナはかなりガチで説明してしまった。
「それじゃ本当に殺される寸前だったのか・・・」
青ざめるダレン卿。奥さんのアンジェラさんも顔が真っ青だ。
「でも、ヤーベがその身を張って助けてくれたんだ!」
・・・身を張った覚えはないが、まあ助けたよな。
「その後もソレナリーニの町ではね・・・、城塞都市フェルベーンでもね・・・」
もはやその武勇伝誰の?というレベルで捲くし立てていく。
・・・イリーナよ、俺はもう神様か何かか?
「ルシーナちゃんの命もヤーベが救ってね・・・、悪魔王もヤーベがやっつけてね・・・、オークも1500匹みーんな倒しちゃってね・・・」
もはや、話し方がおとぎ話だ。
例えイリーナが話している事が事実だとしてもだ。
にわかに信じられないことばかりだろう。
・・・ただ、コルーナ辺境伯家の賓客としているわけで、コルーナ辺境伯からの手紙に説明があれば、俺が信頼に足る人物だという事くらいは書いてあるのではと思われる。
「イリーナ、君の話だと、ヤーベ殿は救国の英雄だね」
「あらあら、イリーナったら」
明らかに娘が俺にまいっているので話を盛りまくっているという雰囲気だ。
実の所救国の英雄と言われて問題ないくらい働いているが、だからと言って救国の英雄ともてはやされるのはまっぴらごめんだ。未だに田舎でのんびり生活する事自体は諦めていないし。
「お父様もお母様も信じておられないのですか? ヤーベは明日その活躍を認められた国王様に謁見を求められて登城するのですよ?」
「ええっ!? 明日の謁見、ヤーベ殿のものだったのかい?」
「知らなかったのですか?」
「まあ、ヤーベさんすごいのね」
どうもコルーナ辺境伯は手紙に大したことを書いてないのではと心配になって来た。
「謁見ではヤーベの後ろに並ぶ予定なんです」
「後ろに?」
「はい、ヤーベの妻として・・・。お父様、お母様、私はヤーベと結婚するつもりです!」
力強く宣言するイリーナ。
俺と言えばもちろん矢部裕樹の格好をして、コルーナ辺境伯家のオススメ仕立て屋で準備した服を着込んできている。
見栄えだけならおかしいところはないはずだ。
だが、俺は単なる平民だしね。ルシーナちゃんと母親のフローラさんの方がおかしいから。二番目の奥さんでOKとか、何得だよって思うけどね。
「イリーナ、結婚するのはさすがに難しいかな・・・」
「そうねぇ、せめてヤーベさんが男爵以上なら・・・」
「ヤーベは昨日王家からの叙爵の打診を断ってしまったので、貴族にはならないです」
両親が少し悩んだのを見てイリーナがはっきり伝える。
「じょ、叙爵を断ったって・・・本当かい?」
「ええ・・・、領地貰っても困りますし、宮廷貴族で宮仕えっての自分に合ってるとは思えませんので。どちらかと言えばこの世界をいろいろと見て回ろうかな・・・と考えている次第です」
「だから、いろいろとこの国のトラブルを救った功績は金貨で貰うことにしたみたいだよ?」
「じょ、叙爵を断って金貨って・・・」
「ちなみに、ヤーベはもう二人奥さんになる予定の人がいます。コルーナ辺境伯家の長女ルシーナちゃんと、タルバリ伯爵の奥さんのお姉さんで、有名な占い師のフィレオンティーナ様です」
「えっ・・・!? うちのイリーナの他にコルーナ辺境伯家の長女とタルバリ伯爵の奥さんのお姉さんもヤーベ殿の奥さんになるの?」
「まあ、イリーナあなた大丈夫? みんなと仲良く出来るの?」
「もちろんですお母様! 何といっても私が一番目の奥さんですから!」
・・・若干、心が痛む。もちろん俺の一番はイリーナ・・・か?
取りあえず、一番長く俺の隣にいてくれた女であることに違いはない。
「い、いや、コルーナ辺境伯は何と言っているんだい?」
「ルシーナにはまだ早いって言っていますが、奥さんが何故かものすごく前のめりなんですよね・・・」
俺は少し遠い目をして話す。
「まだ早いって・・・、どう早いんだい?」
「ルシーナちゃんの年齢はもう結婚できる年だって聞きましたし・・・あれですかね、フェンベルク卿の心の準備が出来ていないからまだ早いって事だと思いますけどね・・・」
俺はさらに遠い目をして話す。
「・・・気持ちだけの問題なのかい・・・」
ダレン卿は手で顔を覆って上を向く。
ヤーベの言うフェンベルク卿・・・コルーナ辺境伯の娘が奥さんともども第二夫人でもOKを出しているらしいのに、伯爵家で第一夫人をOKしないとか、ちょっとない。
だが、なんでコルーナ辺境伯はヤーベという人物にOKを出したのか・・・。
正直、ここで会っているだけでは判断が付かなかった。
「まあ、家の事は兄もいる事ですし・・・、ヤーベは世界を回るつもりでいますから、私はヤーベについて行くので、正直貴族とかあまり意味は無いかと思うのです」
「いや、そういうわけにはいかないよ・・・」
イリーナの宣言に頭を痛めるダレン卿。
「何故でしょう? 兄がいればこの家は安泰ではないですか」
イリーナが父親であるダレン卿に詰め寄る形を取る。
何せルシーナちゃんが母親とタッグで攻めて来ており、フィレオンティーナは自宅を処分して単身乗り込んで来ている。
自分が両親から反対されて足を引っ張られるのは避けたいと言う焦りが見えている。
「いや、だからね、イリーナ。そんな簡単な話ではないんだよ・・・。大体、リカオロスト公爵家からの無理な婚姻から逃れるために君を王都から脱出させて、商家の見習いに送り出したんだよ。それが戻って来て、貴族どころか平民に嫁ぐなんてことになったら、どれほどの手段に出るか・・・、ヤーベ殿だって命の危険があるかもしれないぞ?」
イリーナに考え直すよう説明するダレン卿。
「ですが、その戦略すらどこからか漏れて、裏から手を回されて商家の見習いどころか、冒険者と騙されてイリーナは命の危険に晒されたんですよね?」
ここで初めて俺の方から口を出した。
「うぐっ・・・」
「なぜリカオロスト公爵家がイリーナとの結婚をしつこく迫っているのか理由は不明です。第二王女のカッシーナにも結婚を迫っているとのことですし。イリーナの身の安全に不安がある事は理解しています」
真剣な表情で俺はダレン卿の顔を見る。
「でも、そんなことは関係なく、イリーナにそばにいてもらいたいと思っています。イリーナを僕にください」
そう、伝えるのだった。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。
大変励みになります(^0^)
他にも投稿しています。
ドラゴンリバース 竜・王・転・生
https://ncode.syosetu.com/n1684ew/
魔王様にテンセイ!
https://ncode.syosetu.com/n2011ew/
よろしければぜひご一読頂けましたら幸いです。