閑話17 王都のとある喧騒②
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「この地図によると、南門エリアには王都警備隊のクレリア派が警備に当たっているようだ。現地では王都警備隊と協力して事に当たるぞ」
「「「ははっ!」」」
王国騎士団第4部隊、部隊長トニーが部下を引き連れて南門の魔物襲撃の対応に出向いて来た。だが、到着した現場には王都警備隊の隊員達も遠巻きに立っているだけだった。
「どうした? 魔物達の駆除は?」
「あ、王国騎士団の方ですか? 実は、我々の出番は無さそうでして・・・」
「なにっ!?」
よく見れば、大柄な狼牙が縦横無尽に暴れまわっていた。オークや、オーガ、ミノタウロスと言ったガタイのいい魔物達が吹き飛ばさればらばらに砕かれて散っていく。その周りを一回り小さな狼牙達が一般人に被害が及ばぬよう壁になって見守っていた。
よく見れば、魔物がほとんど駆逐され、増えていないようだ。
「・・・あっ!」
「どうした?」
「あそこに・・・」
王都警備隊の一人が指を指した先には、ミノタウロスの死体に押しつぶされて死んでいる男がいた。手元には割れた黒い水晶玉が。
「これで魔物を召喚していたのか?」
トニーは割れた黒い水晶玉と死体を回収してグラシア団長に報告すべく王城に引き上げた。
王国騎士団第4部隊、副部隊長ミックが部下を引き連れてやって来たのは東門であった。
「地図によると、ここはプレジャー公爵派の警備隊が守る手筈のエリアだ。たぶん仕事を放棄しているから、一般人に被害がでない様何としても魔物を抑えるぞ!」
「「「ははっ!」」」
部下に鼓舞しながら部隊を展開する。
『<雷の雨>』
到着してすぐ、目の前にとんでもない雷が広範囲に落ちた。
その雷は魔物達を直撃したのか、黒焦げの魔物達が大量に倒れていた。
ひと際体が大きい狼牙が1匹佇んでいる。
体からパリパリと電撃の余韻が残っているところを見ると、この狼牙が先ほどの雷を操ったと見える。
「すさまじい戦闘力だな・・・」
その個体以外にも、部下と思われる狼牙達が周りの魔物を狩っている。
ひと際体が大きい狼牙が人ごみの中に紛れていた一人の襟首を噛んで引きずってくる。
『オヌシ、騎士団の者か? コヤツが魔物を召喚していたようだ。連れて行くがよい』
見れば、フードをかぶって黒い水晶球を持った男が巨大な狼牙の足に踏まれて喘いでいた。
「こいつが魔物を召喚していたのか・・・?」
『うむ、連れて行って取り調べるといい』
「・・・すげえ賢い」
ミックはこの大きな狼牙がもし騎士団に配属になったとしたら、全く勝てる気がしなかった。
・・・・・・
王城――――――
結局妹御が心配なのか、自ら出撃していったグラシア団長に王城警護を任されたのは副団長のダイムラーであった。
ワーレンハイド国王には騎士団の中でも選りすぐりの精鋭が常に護衛している。
だから、心配になるのは第一王子と王妃様だ。
第一王子にも精鋭が護衛についている事を考えると、女性騎士に頼らざるを得ない王妃様の警護は些か不安が残る。
二人体制にして、一時でも護衛の目が行き届かない時間が無いよう気を使うしかない。
(何事もないといいが・・・)
そして、ダイムラーは第二王女カッシーナの護衛の事を完全に忘れるという失態を犯していた。
・・・・・・
王妃様が執務室で仕事を続けていた。
王都での混乱はまだ直接報告されていない。
そして何故か執務室の隅にはヒヨコが止まっていた。
「王妃様、紅茶が入りました」
ふと見れば、いつものメイドの中にはいなかったような女だった。
そのメイドは紅茶のカップをソーサーに乗せてゆっくり運んできた。
(・・・プチファイア~)
「あつっ!」
小さな火の玉がメイドの手を直撃。紅茶はカップとソーサーごと落ちて床の絨毯にシミを作った。
「あらあら、大丈夫?」
王妃がメイドを心配する。このメイド、先ほどもお菓子を床にぶち撒けている。
「あ、すみません、片付けます・・・」
慌ててメイドは自分の不始末を処理すべく動く。
「大丈夫?あなた少しそそっかしい様だから、あまり物を運ぶ仕事は向いてないかもね」
少し残念そうな表情で伝えてくる王妃様。
(どうなっている・・・!? 毒の入れた紅茶に気づいたのかとも思ったが・・・)
このメイド、王女を殺害しようと潜り込んだ暗殺者であった。
先ほど軽食の皿にも毒を盛っていたのだが、やはり手の甲が滅茶苦茶熱くなって皿ごと落としてしまった。
まさか王妃様もヒヨコがずっとガードしているとは思わず、暗殺者もまさかヒヨコに邪魔されているとは思ってもいなかった。
・・・・・・
王国騎士団が到着した際、北門を守る氷牙はヒヨコがあぶり出した魔物のコントロールをしていると思われる男の氷漬けを完成させてた。
『<氷結棺桶>だ。連れて行って解除したら状況を聞き出してくれ』
「・・・ありがとう」
狼牙に頭を下げる騎士隊長だった。
西の外壁門近くでも風牙に制圧された魔物達の処理が進んでいた。
王都の突発的な魔物の襲撃による陽動は終息を迎えていた。
王国騎士団団長のグラシアはクレリアたちがキルエ侯爵の護衛のため、襲撃者たちを迎撃する予定のポイントに急いでいた。
「・・・クレリア!無事でいてくれ・・・」
如何にヤーベという男が力を貸してくれると言っても、心配が無くなるわけではない。
本当であれば副団長のダイムラーに預けず、王城内で指揮する立場にあるだろう自分ではあるが、どうしてもクレリアが心配で王城を出る事を決意した。
そして襲撃地点に着いたグラシアが見たものは、狼牙族に跨り超高速で飛び回り敵を翻弄するクレリアたちの姿であった。
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