第113話 王都を混乱に陥れる敵の戦略を叩き潰そう
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昨日は盛大な炎のイリュージョンを行った。
・・・え? イリュージョンで屋敷燃やしていいのかって?
フラウゼアさん助けるためには仕方なかったってことで。
もちろんコルーナ辺境伯家にコッソリ連れ帰って匿うことになった儚げな美貌の持ち主でありながら、未亡人の色気も出てしまっているフラウゼアさんをみて、イリーナが爆発したことは言うまでもない。あとルシーナちゃんにも首を絞められてフィレオンティーナに至ってはどこからかムチを取り出してきていた。
・・・まだ結婚していないが、俺の嫁候補たちは少し危なすぎやしないだろうか?
なんとかフラウゼアさんが新しい嫁だの、俺の愛人だのという誤解を解き、旦那様を亡くした心の傷ついた人だからと説明した。
後、王都の住人としては死亡扱いになっているから、ここで生きている事は他言無用だし、屋敷から外へ出さない様にと伝えたら、また紛糾した。
・・・もうどうしたらいいんだ。
落ち込みしゃがみ込む俺の頭をポンポンとリーナが撫でてくれた。
・・・天使がいた。
「さて、今日はヤバいんだ」
「何がヤバいんだ?」
フェンベルク卿が問いかける。
「ヒヨコ軍団の情報から、今日キルエ侯爵が領地から戻って来ることになっているんだが、それをこの王都内で襲撃、キルエ侯爵を亡き者にしようとしている計画があるんだ」
「な、なんだって!? そりゃホントなのか!」
「ああ、ついに相当な強硬手段に出てきたな。正論をぶつけるキルエ侯爵を亡き者にして、その責任を全て王都警備隊隊長のクレリアに押し付ける。そりゃ王都内で侯爵自身が殺害されたら、とんでもない不祥事だよな」
「そ、そりゃそうだが・・・」
「それに、厄介なのは陽動で騒ぎを起こすらしい。それぞれ東西南北の王都外壁門の近くらしいんだが、どんな騒ぎを起こすのかが不明だ」
「ど、どう対処する気なんだ?」
「どうと言われても・・・、陽動に王都警備隊を割くわけにはいかない。キルエ侯爵を襲撃する連中を撃退するのは俺ではマズイからね。どうしてもクレリアが撃退したという実績が必要だ」
「クレリア隊長たちだけでキルエ侯爵襲撃の撃退は可能なのか?」
「そりゃ心配だから、俺とローガもキルエ侯爵襲撃犯の捕縛に回るよ」
「じゃ、陽動は?」
「ローガの部下の四天王を各門に部下を引き連れて対応させる。後は騎士団長のグラシア殿に手紙を書く。だが、酒に酔ったケンカ程度の揉め事では狼牙達を投入できない。どれくらいの陽動を敵が考えているかによるな」
「私たちも手伝えることは無いか?」
イリーナが真剣な視線を向けてくる。
「そうですわ、わたくしたちの力もお使い下さい」
フィレオンティーナが拳を握ってやる気を出してくれる。
「だが、君たちは明日一日この家から外出を禁止する。コルーナ辺境伯家の皆さんを守ってくれ。ゲルドンも屋敷の前に配置する。狼牙達がほとんど出払ってしまう。ヒヨコの一部はこの屋敷に残していくが、狼牙族もヒヨコたちも王都全体に散らばって配置する関係で、この屋敷は戦力がゲルドンだけになってしまう。ここは何もないとは思うが、万が一もある。家から出ずに、何かあればヒヨコたちに連絡してくれ」
「・・・ヤーベは大丈夫なのか?」
イリーナは心配なのか俺に問いかける。
「大丈夫だ。俺にはローガも付いているしな」
俺は努めて笑って言った。
「さて、グラシア団長に手紙を書くから、使いの者に王城へ届けてくれるよう手配をお願いします。俺はクレリアに刺又差し入れて来ます」
そう言ってコルーナ辺境伯家の屋敷を後にする。
「ご主人しゃま!お早いお帰りをお待ちしておりましゅ!」
リーナのあまりわかっていないと思われる声掛けを微笑ましく思いながら手を振ってあげた。
「おーい、親父さん、アレ出来てる?」
俺は鍛冶師のゴルディンの工房に顔を出していた。
「おう、出来てるぞ。それにしても人使いが荒いな。革製の鞍と鐙、特注の持ち手を付けるって結構大変だったぞ?」
「助かるよ。これで王都の治安を守れるかな」
「ずいぶん仰々しいな」
「無事終わったら酒でも持って報告に来るよ」
「・・・気を付けろ。後、酒はイイヤツを頼むぞ?」
「任せとけ」
俺はサムズアップして工房を後にした。
・・・・・・
「・・・すまない、こんなに沢山の刺又を差し入れてくれるなんて・・・」
王都警備隊隊長のクレリア・スペルシオは目を潤ませて頭を下げた。
「予算もまったく下りず、問い合わせたいくつかの武器工房も取り合ってくれず・・・。自らの力の無さを痛感するばかりだ」
うーむ、クレリアへの妨害は本当に酷い様だな。
「ところで、キルエ侯爵を亡き者にする計画がある事を掴んだんだ」
「な、なんだって!?」
「場所は大通りから貴族街に入る直前の通りだ。襲撃者は約50人、弓と剣、それに魔術師もいるみたいだよ」
「そ、そんな戦力・・・こちらは私直属の部隊はわずか20名だぞ・・・これは兄上に相談するしか・・・」
「おいおい、クレリア。君がこの王都を守る警備隊隊長という責任者なんだろ? 気合を入れなよ。手を貸すから」
不安な表情になるクレリアに俺はカツを入れる。
「ヤーベ殿・・・」
クレリアは潤んだ眼で俺を見つめてくる。
「ローガ、準備は良いか?」
『ははっ!』
詰所の外には鞍を付けたローガと20匹の狼牙族が勢揃いしている。
「こ・・・これは!?」
「隊長のクレリアには俺の側近であるローガに騎乗する許可を出そう。そのほかの部下は狼牙族20匹に騎乗してくれ。今日は忙しいぞ、夕刻のキルエ侯爵襲撃までは暴漢退治に王都中を奔走するつもりで対応してもらうぞ。そのための狼牙騎乗だからな」
「う、うむ! なんだかやるしかない気がしてきたぞ!」
「さあ、騎乗してくれ。行くぞ!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
そしてこの後、クレリア率いる王都警備隊の精鋭たちは疾風怒濤の狼牙達の速度に振り回されながらも湧き出る暴漢たちをなぎ倒して捕縛して行くのであった。
・・・・・・
ドオオオン!
爆発音が響く。
見れば東の外壁門近くで魔獣が暴れていた。
『うーむ、ここまでやるとは・・・、それにしてもあの魔獣たちはどこから出てきたのだ?』
人々が逃げまどい、警備兵や冒険者たちが迎撃に出ようと慌てて準備しているのが見える。
『雷牙様、どのように対処致しましょう?』
『少し様子を見よう。この人が住む大きな町であのように魔獣が自然と湧き出る事はない。必ずどこかに原因がある』
『ははっ!』
北の外壁門でも大型の魔獣が何頭も暴れていた。
『ワイルドシェイプ? あんな大型の魔獣が急に現れるわけがない。どこかに封じられた魔獣を解き放った者がいるな』
『氷牙様、どう致しましょう?』
『ヒヨコよ、いるか?』
『はっ!』
『どこかにこの魔獣たちをコントロールしている人間がいるはずだ。見つけ出してくれ。それまで魔獣を狩って時間は稼ごう』
『ははっ!』
『行くぞ!』
『『『了解です!』』』
氷牙とその部下たちは一斉に大通りに躍り出た。
「キャアアー!」
西の外壁門。小さな女の子が逃げ遅れて転んだ。
その後ろからは粗末な木の棒を振り回しているゴブリンが迫っていた。
だが、
ザシュウ!
一陣の風が吹き、少女の前にはゴブリンの首を狩った風牙が姿を現す。
「わあ・・・狼さん助けてくれたの?」
小さな少女の問いに風牙はコクンと首を縦に振る。
「ありがとう!優しい狼さん」
そう言って走って行く少女を見送りながら、わらわらと湧き出る様に迫りくるゴブリン達を見る。
『このままでは一般人に被害が出るな・・・連中を駆逐せよ』
『『『ははっ!』』』
部下たちが一瞬にして吹き荒れる暴風となり、ゴブリン達がばらばらになって散る。
『敵は想像以上に手段を選んでいないようだな・・・』
風牙は大通りを見つめた。
『いやっほう!やっと俺様の出番でやんすよ!』
大通りを疾走する一陣の閃光。
初戦闘のガルボは完全にやる気全開であった。
『ガルボ様!様子も見ずにいきなり駆逐で大丈夫なのですか?』
『逃げるヤツは単なる魔獣だ! 逃げないヤツは訓練された魔獣だ!』
ガルボのパワーの前に湧き出る様に溢れ出たオークやオーガなどの大型さえもばらばらに砕かれていく。
『イヤ、大丈夫なんですかね? 全開でぶっ飛ばしてますけど?』
部下たちはガルボの張り切りに若干引いていた。
王都の各外壁門近くで魔獣が暴れるという事態が発生してからしばらく。
王城にも王都警備隊だけでは任せられないと王国騎士団の出撃要請が出ていた。
ヤーベの采配でそれぞれの外壁門には狼牙族四天王が配置されているため、一般人にけが人が出る前に魔獣たちは駆逐されていた。
だが、王都が大きく混乱している事には違いが無かった。
「もうすぐキルエ侯爵の馬車がこの通りに到着するぞ。この坂を上がれば貴族街だ。私たちが坂の上に陣取っているが・・・この場所で良いのか?」
「キルエ侯爵の馬車が襲われた時点で救出に入る。坂の上から一気呵成、一気に決めるぞ。何といってもそのために狼牙達に騎乗してもらっているんだからな」
「うむ! 準備は良いぞ」
俺は<高速飛翔>の呪文で浮いている。
クレリアはローガに騎乗して横で待機している。
その後ろに狼牙族二十匹に乗った二十名の親衛隊。
王都の至る所で暴動のような騒ぎが起こっている。
時に魔法が炸裂する音、建物が崩れる音、剣が打ち合う音などが聞こえてくる。
だが、ここにいる精鋭たちの極限まで研ぎ澄まされた集中力によりその雑音は聞こえない。
そして馬車を引く馬の蹄の音が聞こえて来た。
「前から聞こうと思っていたのだが、クレリア殿。貴女はそれだけ美しい容姿と器量を持っているのだ。彼氏はいるのか?」
チラリと隣の俺を見るクレリア。
「フッ」
そしてキルエ侯爵の乗る馬車が見えた。その瞬間、周りの建物に隠れていた襲撃者たちが一斉に攻撃を開始した。
魔法でシールドされた馬車の様で、魔法による攻撃や弓矢を跳ね返してはいるようだ。
それも織り込み済みなのか、馬車に迫っていく襲撃者たち。
「私の恋人は・・・フッ、この王都だ! 全員突撃!私に続けぇ!!」
ゴウッ!
ローガを始めとする狼牙族に騎乗する超高速移動を可能とした王都警備隊達が襲撃者に突撃を開始する。
ここに王都襲撃者たちと王都防衛者たちの真の戦いが幕を切って落とされた。
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