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チート

「で、他のメンバーには言ったのか?死んだ事」

僕の感情はとりあえず置いて、シュートに聞いた。


「いや、言ってない。やっぱり言うべきかな?」


「う~ん。言わなくて良いんじゃないのか?俺とお前が黙っていたら誰も気が付かんだろう?」


「まあ、そうなんだけど」


「それにそんな話したところで誰も信じないだろう。現にここに本人が間抜け面さらしている訳だから……」


「間抜け面で悪かったな」


僕とシュートは同時に声をあげて笑った。彼とこうやって笑うのは久しぶりだ。

やはり彼はシュートだ。

「で、お前はここに転移してから、どう?戦い易いとかあるの?」

僕はシュートに聞いた。


「うん。全然違う。本当に生身の体でここに居るような感覚だから動きやすいし、潜在能力も結構上がった」


「へえ。ちょっと見せてよ」

僕はそう言うと彼のステイタスを見た。

何と彼のステイタスは三倍以上上昇していた。

「これってチートじゃん。ただでさえ俺たちチート呼ばわりされていたのに……こんな数値見た事無いぞぉ」


「うん。驚いた。まだ誰もそれに気が付いていないけどな」

そうだ。仲間内は今更メンバーのステイタスを調べたりはしない。


「その上、まだ上昇中だからもっと強くなると思われ」


「本当にチートだな」


「まあね」


「ところで、今のお前って意思を持ったNPCみたいなもんか?」

シュートの存在にだいぶ慣れてきた僕は、いつものように思いついた疑問を次々にぶつけてみた。


「いやそれとは違う……が、ここに転移して来てから気が付いた事がある」

シュートは声を潜めて僕の耳元で話した。


「気が付いた事?」


「俺たちがNPCだと思っていたキャラにもちゃんと意思があったり考えたりしているという事が分かった」


「え?そうなん?」


「ああ、俺はどうやらここでは『このゲームが用意したAIを実装したAIPC』という扱いを受けているようだ。だから今まで通り冒険者としてパーティも組めるようだし経験値も増える。その上、管理側に近いせいもあってここのNPCとも意思の疎通ができるんだけど、どうやらここのNPCは単なるNPCではない様だ」


「というと?」


「AIだよ。学習能力があるって事だよ」


「嘘?」


「本当……誰にも言ってないけどさ」


「そうかぁ。どんどんリアリティが増すなぁ……」


「ああ、そうだ。その内NPCはフルAI化されるだろうな」


「何とも凄い時代になったもんだねえ……」


「いや、キャラのAI化自体はVRMMO以前から発達していたけど、このVRMMOの世界で実装するとゲーム中の人体にどんな影響があるか分からなかったから誰も手を付けなかったはずだ。それと全てのNPCをAI化すると演算能力にも相当負荷がかかるからな」


「なるほど、それもそうだな。それにしてもお前はなんでもよく知っているな」


「まあな。それほどでもないけどね」


 そこへマリアさんとタカさん、そして絵姫さんがやって来た。

マリアさんとタカさんはリアル世界では大学生で絵姫さんはOLで絵姫と書いて「エロヒメ」とみんな呼んでいた。

 僕とシュートの顔を見ると

「お、ジュリー!久しぶりだな。どうしていた?」

と声を掛けてきた。


「ええ、ちょっと勉強が忙しくって来れなくて……済みません」

僕は咄嗟に適当な事を言って誤魔化した。


「そうかぁ、勉強は大事だからな。で、今日は一緒に行けるの?」

タカさんが聞いてきた。


「はい大丈夫です」





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