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秀人

珍しく短編として書きました。



 その日は秀人の葬式だった。

空を見上げると雲一つない青空で桜の花びらが舞っていた。

高校2年生の春。秀人は乗っていた自転車ごとダンプカーに跳ねられて死んだ。



 秀人という名前は野球好きの彼の父親が「シュート」とも呼べるからと名付けたという話だった。

その名の通り彼は野球部のピッチャーだった。その名の通り運動神経も抜群で成績も良かった。何よりも彼は性格が良かった。誰からも好かれていた。

そしてその名の通り彼のあだ名はシュートだった。


 彼は僕の一番の親友だった。

僕は毎日彼の球を受けていた。ただ彼はレギュラーで僕は2番手のキャッチャーだったので主に受けるのはブルペンか練習試合でしかなかった。でもいつも正捕手の先輩よりも投げやすいと言ってくれていた。



 彼を知る人は全て彼の死を悼んだ。


 彼を失った僕の虚脱感は凄まじく、登校しても彼の机を見るたびに心が痛んだ。

「もうシュートはいないんだ……」

何度自分にそう言い聞かせただろうか?同時にいつも悔しい思いが込み上げてきた。


そして僕は野球部を辞めた。彼の球を受けられない野球部に何の未練も無かった。


 彼が居なくなってから4か月程経った夏休みのある日。

僕は彼が亡くなってから全くやっていなかったネットゲームを立ち上げた。

そのゲームはマルチマテリアル社が運営するフルダイブ型VRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)だった。


 シュートが居なくなったこの世界に虚しさを感じていた僕は、現実逃避でも良いからこのゲームの世界に逃げ込みたかったがそれも出来ないでいた。

何故なら、彼はこの世界でも僕と一緒にいたからだ。

 彼とこの世界で戦って2年以上経つ。幸運にもβテスト版からの参加で実際の運営が始まった時にはチート状態に近かった。お陰でパーティの編成もその当時からの仲間で組めたのでキャラの成長は相当早かった。

 途中、受験勉強で余りは入れなった時期もあったがそれでも一緒に同じ高校に進学し、彼が居なくなるまではほぼ毎日この世界で戦っていた。


同じ学校の仲間は1,2名を除いて誰も呼んでいなかったので、僕達二人はほぼこの世界で知り合った仲間達とで冒険を楽しんでいた。


 彼はいつもの攻めのピッチングとは違って戦って守るタイプの職業「戦士タイプの冒険者」だった。僕は「白魔法剣士タイプの冒険者」だった。これは後から召喚魔法も付加できるので後々役に立つと思い選んだキャラクターだった。


 ある意味現実世界よりも彼との思い出が多かった。


「まだ、ここの仲間にシュートの事を報告していなかったな。やはり知らせておくべきなんだろう」

僕が再びここに入ろうと思ったのはそれが一番大きな理由だった。


それに同時に彼と狙っていたやり残したクエストも少しだけ気になっていた。


彼がまた生きている時と同じように僕は、VRMMO「シルバーソードストーリー」にダイブした。




 僕はいつもの村に立って居た。ここでいつもシュートを僕は待っていた。

他のメンバーが居ないか確かめるためにフレンドリストを立ち上げた。

まだ誰もオンラインではなかった。ただ一人を除いては……。


僕は我が目を疑った。そのリストのオンライン表示にシュートの名前が点灯していた。


「そんな馬鹿な……」


 僕は愕然とした。死んだはずのシュートがこの世界では生きているって?

まさか幽霊?それとも誰かがシュートの名を騙っているのか?

僕はステイタス画面に浮かんだシュートという文字を放心状態で眺めていた。


2017.09.05 誤字訂正

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