母よりも大きな、板チョコ
●だいぶ前のことだ●
「仕事先でチョコ貰ったよ。板チョコ」
「は? あー、そう。で、それがどうし……」
お母さんは、お母さんの胴体よりも大きな板チョコを持っていた。
「でかすぎやろぉ!?」
「あんたの声もでかいって」
「なん、なん? どうしたん?」
ごはん片手にテレビ観てた姉がこっちを振り向く。
「おぉ、ねーさま」 どうでもいいことだが、俺は姉をねーさまと呼んでいる。
「うわ! でか!!」
驚く姉。箸を落とした。
「やんなぁ!? でかすぎやんなぁ!!?」
同意を求める俺。スルーされる。
姉はチョコに夢中である。
「はー、こりゃすっごいね。ツルツルやん」
「ねーちゃん。それはチョコを包むビニールよ」 どうでもいいことだが、俺は姉をねーちゃんとも呼んでいる。
「分かってるって」
となりで俺もチョコを包むビニールをペタペタ触る。うわー、うわー、たまんねえ。
「ちょ、お母さん、貸して貸して」
お母さんからのチョコ奪還成功。ズシッと重い。
「こ、こんな重いチョコ…初めてだ…ぜっ…」
「いや、流石にそこまで重くないやろ」
「クール過ぎるよ、母上」 冗談が通じないお人だ。
姉が二階に上がる。ドタバタと駆け上がる。いつもは物静かなお人だが、興奮してらっしゃるな。そんなときの姉は面白い。日ごろ冷めてるから、余計に面白い。数秒後、ドタバタと足音が近づいてきた。俺の予想だと…、
「ケータイ持ってきたー」 やっぱりね。こんなときの姉は、大抵カメラマンだ。
「ちょ、旺。チョコ机に置いて」
「へ? あー、うん」 置いた。
「これでいい?」
「その上に手、置いてみ?」
「へ? あー、うん」 置いた。
「そろばん」
パシャ
なるほど。写真を見る。更に、なるほど、と思った。お母さんも「なるほど」と言った。
それから色々と写真をとった。ちょっと、至福のときである。
その間、テレビはつけたままである。もったいないとか言わないで。
しばらく経って、俺達は正気に戻った。正気に戻った俺と姉が言った最初の言葉は、
「「このチョコ、どうする?」」
うーん。なやむ。
お母さんは飽きて、テレビ観てる。
「じゃあさ、」
姉は言う。
「今日は、お座敷に飾っておこう」
飾った。
俺達は、チョコを拝んだ。
その間、お母さんはテレビ観ながら寝てた。こら、もったいないでしょ。
二週間後には、チョコは消え失せてました。甘かったです。




