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殺人犯トナカイの心境。  作者: ぎんよう
1/1

はじまりはじまり。

初めて投稿します。

生暖かい目で見てください。

随時改定します。

「ほぅっ」

口から吐き出された空気が氷点下まで凍え、雲のように立ち上り夜空に溶け消える。


ジングルベール♪ジングルベール♪


街からは陽気なクリスマスソングが鳴り響き、カラフルなイルミネーションが街全体を包んでいる。

特に今年のメインストリートは力を入れており、等間隔に並ぶ街路樹には柔らかな青い光の電飾が飾られ、奥までずっと連なる輝きは海の中を歩いているような幻想的な感覚になり、行き交う人の足も心も躍らせていた。

煉瓦調の歩道を歩くと、所々に電飾で作られたトナカイが置かれており、首を右に左にへと振っていてとても可愛いらしい。


イルミネーションやクリスマス飾りに目を奪われながら足を進めると、数分も経たない内に中央広場まで辿り着ける。


田舎にあるメインストリートはとても短い。

そう誰かが自嘲気味に笑って言っていたのが思い出される。

そんな大きくはない街ではあるけど、この街にはどこにも負けない誇れるものがある。

中央広場に来ればみんなが足を止め見上げる街のシンボル。

天辺に燦然と輝く大きな星を乗せ、どっしりと構えるクリスマスツリーを前に、行き交う人は自ずと顔を綻ばせてしまうだろう。


恋人たちは近くにあるベンチに座り寄り添い。

友達同士で来ている人達はクリスマスツリーをバックに写真を撮りあったりしている。


中央広場の近くにはおもちゃ屋さんがあり、新発売のオモチャが飾られたショーウィンドウには目を輝かせた子供達がぎゅうぎゅうにはりついていた。


「アウロラっ!もう帰るぞ」

「やーだー」

父親がショーウィンドウの前で動かない我が子の手を引こうとするが、振り払われてしまった。


「ねぇ。ぱぱぁ。オモチャ買ってぇー」

上目遣いで可愛くおねだりをする子供。

どこで覚えたのか。きっと普段母親がやっているのを真似てみているのだろう。


「駄目だ。クリスマスまで我慢って約束だろ?」

「ぅぅーーーー。やぁーーだぁあーーっっ」

最大限のおねだりを拒否されてしまい、ふてくされる子供。

地面に体を投げ出し、手足をバタつかせ大声を上げ泣き叫ぶ。

最終手段の小さな抵抗。駄々こねである。


「こらっ!悪い子にはサンタさんは来てくれないぞ!」


「えっ?!やだっ!」

父親の言葉にすぐさま抵抗をやめ立ち上がる。

眉間にシワを寄せた父親の顔を見上げ、少し迷惑をかけたと罪悪感が込み上がりうなだれる子供。

「…ごめんなさい」

先程の大騒ぎした声とはうって変わり、ポツリと発せられた弱々しい声に、父親の眉間のシワは解かれた。


そっと子供を優しく抱き上げ、体についた砂埃を払い、ふんわりとしたブロンドの髪を撫でる。

「クリスマスまであと一週間だろ」

「うん!それまで良い子にしてサンタさんにプレゼントをもらうんだ!」

涙を拭い、満面の笑みで答える子供。

楽しみな気持ちが全身から溢れ出し、今にも踊り出しそうだ。



笑顔で家路に急ぐ親子に

まだまだショーウィンドウで粘る子供たち。


どの顔も幸せで。

キラキラと目が輝いている。

待ちきれない想いと温かさが街を駆け巡る


クリスマスまであと一週間。







「……あーやばっ……サンタさんを殺しちゃった…」



トナカイの絶望的な声が、冷たくなったサンタクロースの前に小さく消えた・・・

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