夏のお話
もうすぐ夏も終わりですね。 2016.8.20
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気付いたら僕はここにいた。
ヒンヤリとした世界。
この冷たさに包まれているのは
少し心地よい。
おなかが減ったらご飯を食べて、
眠くなったら寝る。
そうしていたんだ。
時々変な音が聞こえて来て不安になる。
そんなときは音が聞こえなくなるまで
じっと身を潜めている。
どれぐらいそうしていただろう。
ずっと前からかも知れないし、
ちょっと前からかも知れない。
分からないや。
そうしてたら呼ばれたんだ。
『こっちへおいで』って。
分かんない。
そんな気がしただけかもしれない。
でも『こっち』ってところに興味があった。
行ってみようと思った。
こんなに歩くのは初めて。
ちょっとワクワクする。
ほら、やっぱり呼ばれているよ。
『こっちへおいで』って。
・・・あなたはだぁれ?
急がなくっちゃ。
あれ?
世界が変わった。
冷たさが無くなった。
包まれている感覚も無くなった。
なま暖かい。
なんだこれ?
ここはどこ?
う~~ん、ちょっと不安。
急ごう。
歩け、歩け。
前に進めなくなっちゃった。
大きな壁。
でもこの壁は知っている。
この匂いは知っている。
大丈夫。
このまま上へ行こう。
登れ、登れ。
なんだろう、力が溢れてくる。
うん、なんかすごい。
ここらでちょっと一休み。
一度思いっきり伸びをして。
う~~~んっ。
あれ?
もう一度。
う~~~~~んっ。
あれれ?
僕って自分が思っているよりも
大きいんじゃない?
なんか着ている物が小さい。
??
着ている?
なんでこんなもの着ているんだ僕。
邪魔だ、脱ごう。
んしょ、ぅんしょ。
ふぃ~~。やっと半分。
全部脱いじゃえ。
んしょ、ぅんしょ。
完了。
全部脱いだ。
スッキリ。
でもって、ちょっと休憩。
・・・なんか世界が明るい。
??
明るいって何だ?
おぉ、やっぱすごいぞ。
どんどん明るくなってくる。
ここはどこだ?
背中がちょっとムズムズする。
わはは、なんかこそばゆい。
背中に力を入れてみる。
う~~~んっ。
お?おっ?
おぉっと?
なんだなんだ?
引っ張られる。
う~~~~~んっ。
わははは、なんだこれ?
気持ちいい。
えぇぃ、このまま行っちゃえ。
うっわぁーーーー!
すっごい、すっごい!
明るいっ!
眩しいっ!
広いっ!
怖ぇぇ~~~。
どっか掴まる場所。
掴まる場所は。
あぁっ、あそこ。
やぁっ!
ふぃぃ~~怖かったぁ。
なんだったんだ今の。
でも、気持ちよかった。
ちょっと休憩。
お腹すいた、ご飯食べよう。
満足、満足。
はぁ~~、気持ちいいなぁ。
すっごいや、ここは。
うふっ、お腹がムズムズする。
ふふふ、今度は何だ?
力を入れてみよう。
おぉ!
おお!
おおおおおおおおおおおおおおおお!
すごいすごいっ。
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!
分かる!
分かるぞ、これはっ!
これは喜びだ!
歓びなんだ!
おおおおおおおおおおおおおおおお!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
僕はここにいるっ。
僕はここにいるぞぉーー!!
気が付いたら
周りには僕と同じ人がたくさんいた。
みんなお腹を震わせている。
負けられない。
負けてたまるか。
力いっぱいお腹を震わせる。
おおおおおおおおおおおおおおおお!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
お腹が減ったらご飯を食べて。
背中がムズムズしたら眩しくて広いところへ行って。
途中で怖くなって大きなところに掴まって。
お腹を思いっきり震わせて。
またご飯を食べて。
暗くなったら眠る。
すごい毎日だ。
そんな時、1人の女の子に出逢ったんだ。
なんかドキドキした。
今まで以上に力いっぱいお腹を震わせて、
伝えたんだ。
ほら、すごいだろ、僕はここにいるんだ。
って。
女の子も分かってくれたみたい。
僕に近付いて来てくれた。
僕も彼女に近付いた。
いろんなことが分かったよ。
君は僕の大切な人。
君に会うために僕はお腹を震わせていたんだね。
背中に力を入れていたんだね。
とっても素敵なことだ。
これから二人で大事なことを行うよ。
よく分からないけど、
とてもとても大切なこと。
二人でお腹を合わせて
僕は彼女に僕の中の大切な何かを
渡したんだ。
ゆっくり、ゆっくりと。
彼女はそれをとても大事に受け取ったよ。
そうして彼女は離れて行った。
ちょっと寂しかったけど僕は満足だ。
うん、なんかとっても満足だ。
それからのことは実はあんまり覚えていない。
世界は前ほど眩しくなくなった。
背中のムズムズもお腹のムズムズもなくなった。
お腹も減らなくなったかな。
ちょっと眠いかも。
周りのみんなはがんばっている。
僕は満足したよ。
うん。満足なんだ。
『こっちへおいで』
声が聞こえた。
寝ぼけてるのかな。
前にも聞いたことがあるような。
うん、行ってみようかな。
『こっち』ってところに興味がある。
・・・唐突な浮遊感。
背中に力を入れたときにも感じてた。
ちょっと違うかな。
今はどこにも力を入れてないよ。
でも気持ちいいかも。
あれ?
背中に何か当たったような・・・。
なんだろ?
まぁいいか。眠い。
『こっちへおいで』
うん、行くよ。
ほら、また明るくなってきた。
あぁ、暖かい。
今度はどんな世界に連れて行ってくれるの?
また、きっとすごい世界なんだろうね。
歩け、歩け。
あ、そうだ。
ねぇ、あなたはだぁれ?
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お終い
読んでいただきありがとうございました。
だいぶ昔に書いたものを見つけてしまい、捨てるのも勿体なかったので投稿してみました。
少しでも楽しんでいただけたのでしたら幸いです。