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三人称視点の練習に(´・ω・`)
こっちの更新は割と不定期になるかもしれませぬ(´・ω・`)
午後10時、10代後半位の若い男達が路地裏で煙草を片手に屯し騒いでいた。
皆一様に髪を染めるかヘアスプレー等でセットしている。
「あ~マジ親ウゼェわ!就職どうすんの!とかよ~……」
「それな!それぐらい考えてるっつの!」
「俺らならその気になりゃ何時だって就職位出来るしな!」
「第一何で働かなきゃいけねーんだってなぁ?働かなくても良い様にしろよそーりだいじん様よー」
「まじそれな!」
「それなら学校とかも無くしてくれよ~~」
「ギャッハッハッハッハ!そりゃいいや!クソ教師共クビじゃねぇか!」
子供は大人よりも自分の間違いというのを認めたがらない生き物だ。
自分と同じような事をする者達が集まればそれはさらに悪化する。
「○○がやってたから自分もやっていい」「これぐらい××もやってる」
こんな言い訳をいくらでも生み出し続け何時の間にか自分が間違っているとすら思わなくなる。
「てか家帰りたくないわ~……どうせまた親うるせぇし」
「俺あいつらが仕事行くの待ってから家帰ってるぜ」
「お!いいなそれ!お前天才かよ~!」
「てか早く親死なねぇかな~……」
「それなー……俺親の居ない家に生まれたかったわ」
段々エスカレートしていく暴言に「聞くに堪えない」とでもいうように誰かが声を掛けた。
「はぁ……、ダメだよー?家族は大切にしないと」
「はぁ!?」
突然仲間以外の声が聞こえた為全員の視線が声の主に集まる。
「そうだよねー?咲?」
そこにはポンチョ型の雨合羽を着た少年だった。雨も降っていないのに雨合羽を着ているのも変だがそれよりも異常な点が一つ。
「あれ?何で返事してくれないの?おーい?咲-?」
先ほどから少年は自らの右手に握られている銀色の懐中時計に喋りかけているのだ。
「何だこいつ……頭オカシイんじゃねぇの……」
髪を金に染めている男が少し後ずさる。
「チューニビョーって奴じゃね?つか家族が何?あんな奴ら恩着せがましいだけだろ!?」
男達の中で一番図体の大きい男が少年に突っ掛かる。
「何ヘラヘラしてんだ……おい!こいつシメようぜ!マジ調子乗ってる!」
そのまま少年の腕を掴み仲間達の元まで引っ張ろうとするが……。
「咲」
「フグッ……!ゴハッ……え……?」
男の喉を銀の刃が貫いた。
少年の右手には握っていた銀時計は既に無く、代わりに鈍く輝く鍔の無い刀が握られていた。
「ヒュッ……ヒュー……ヒュー……」
何故、何時の間にという疑問の声を上げようとしても出るのは喉から漏れる空気音と鮮血だけだった。
「他人に迷惑を掛ける事しか出来無いならさ……せめて僕の家族のご飯になって役にたってよ」
そう言うと少年は男を蹴り刀を引き抜くと残りの男達に襲い掛かった。
「う、うわあああああああああああああ!!!逃げろぉぉぉ!こいつやべぇ!ヒロを殺しやがった!」
突然の事に驚き路地の奥へと逃げる男達。それを嘲笑うかのように少年は男達を後ろから斬り裂いた。
「ぁあああああああ!足ィ!俺の足がぁあぁあああああああああああ!」
「やめろぉぉぉぉぉ!来るなぁぁぁぁぁぁ!ヒィッ!ギャアアアアアアアアアア!」
ある者は足を斬り落とされ、またある者は背中を斬りつけられ痛みにのた打ち回っている間に最初の男の様に首を貫かれ息絶えた。
「よし!と、さあ食べていいよ咲」
少年がそう告げると刀がまるで獣の口の様に変形し、『食事』を始めた。
グチャ! バキ! ブチッ! ゴリッ! メキッ!ジュルッ!
様々な不快な音を立てながら噛み砕かれていく死体。常人が見れば吐き気の一つでも催しそうな光景を見て少年は尚笑っていた。
そしてしばらく経ち、死体が全て食い尽くされ骨の一本、血の一滴すら残らず刀に納まった後。
「それじゃ、帰ろうか」
そう言い帰路に就く少年の手に刀は無く銀時計が握られていた。
誰もいなくなった路地裏にチク、タクと時計の針の音だけが響いた。
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とあるマンションの一室、風呂で先程付いた血を洗い流した少年にテーブルに置かれた銀時計が女の声で話しかけた。
「あのですね明、何度も言ってますが外で私が喋る事は出来ないんです」
明、と呼ばれた少年はテーブルまで行くとお風呂上りの一杯に、とコップに注いだ牛乳を一気に飲み干し
「え~……どうして外だと喋ってくれないの?」
不満そうな声で銀時計へ問い掛けた。すると銀時計は「はぁ……」、と溜息を吐くと
「子供ですか貴方は……、目立つからですよ。獲物に警戒されたら狩りどころでは無くなってしまいます」
時計の少しズレた回答に少年は
「それなら大丈夫だよ、いくら警戒したって僕達から逃げられる訳無いんだし」
そう言うと時計を手に持ち寝室に向かった。
「あら、今日は珍しく早く寝るんですね、普段は深夜まで起きているのに」
時刻は午後11時半、寝るには遅いとも早いとも言えない時間だったが普段の明の睡眠時間から考えるとかなり早いと言えるだろう。
「んー?ああ、明日は入学式だからね。早起きしないと……てことで咲ー、明日は7時に起こしてー」
明は言うが早いがベッドに飛び込み「咲」と呼んでいる時計を枕元に置き寝息を立て始めた。
「毎度思いますが私を目覚まし時計に使うのは止めて貰えませんかね……」
咲は不満を漏らすが当の本人は既に夢の中だ。
「まあ普段私のために夜遅くまで獲物を探してくれていますしね。これくらいの事はしてあげて当然かもしれませんね」
咲はこれから訪れる長い夜に少し辟易しつつ明の16とは思えない幼い顔を眺めて呟いた。
「私が家族……ですか……」
『家族』という言葉に自分が今時計に封じられ眠る事も出来なくなった原因を連想させらる。
「おやすみなさい、明……私の分まで良い夢を」
無理矢理その忌々しい面影を払拭する為、自分の体から鳴り響くチク、タクという音に意識を集中させた。
また彼女の孤独な夜が始まった。
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