水色の少年
「お前水色なんか好きなのか!?女みてぇだな!」
「男なら黒や赤だろ!水色とかださくね?」
…また始まった。
馬鹿な奴らの罵倒の声が俺の耳に突き刺さる。
「…別にお前らに理解してもらおうなんて思ってねぇよ。一般論だけに捉われる単細胞が。」
俺は罵倒に罵倒で返してやった。
はっ。水色の何が悪い。最高じゃないか。
「なっ!本当の事言っただけじゃねぇか!」
もう馬鹿にされるのも慣れてしまった。
それでも俺は好きな事は曲げないけどな。
「…面倒くさいな…。俺が嫌いなら喋りかけんじゃねぇよ。」
俺は独りが嫌いだ。
でも、うるさい奴はもっと嫌いだね。
「何だよ!!水色好きなのを変って言うのの何が悪いんだよ!」
これには反応しない。
俺に向けられる言葉なんて大体こんなもんだ。
耳を傾ける必要もない。
俺は子供の頃から水色が大好きだった。
他のやつらが黒や赤、青などを好きになっても好きなのは変わらなかった。
今のところ誰も理解してくれはしない。
それでも俺は水色を嫌いになる事はなかった。
何故俺が水色を好きになったかと言うと…
「髪の色まで水色とか…信じらんねぇな!行こうぜ、皆!」
生まれつき髪が水色に染まっていたからだ。
俺は生粋の日本人だし、染めた覚えも無い。
このせいで何度いじめられた事か…。
でも、この髪の色を俺は気に入っている。
この冷たそうな水色が俺は大好きなんだ。
でも異端は弾かれる。
これが世間の風潮だ。
まぁ、俺が叩かれるのは髪が水色という理由だけではないのだが。
今は高校2年だが友人と呼べる人物はほとんどいない。
クラスでも浮いている。
それどころか、先生にも見捨てられている。
どうしてこうなったのだろうか?
俺は何も悪いことはしていないし、誰かに危害を加えている訳でもない。
でも、何故か迫害される。
ただ、他の人と違うというだけで。
一見普通に思えるこの世界は俺から見れば狂ってる。
俺は世界から一人ぼっちなのだろうか。
「…いや、考えても無駄か。この状況が変わる訳でもないし。」
物思いにふけていると学校が終わった。
今日もいつも通りの1日だったな。
「…帰るか。」
俺はそそくさと教室から退散し、帰路へついた。
「…ただいま。」
と、言ってみたが俺は一人暮らしなので全く返事は無い。
両親は既に他界しており、俺に味方は全くいないも同然だった。
今は親の遺産で暮らしている。
祖父さんも祖母さんもいないから俺は本物の天涯孤独だった。
「…孤独ってのは悲しいもんだな…。」
もう割り切っていたはずなのに自然に涙が零れてきた。
自分以外に頼れる人間が全くいない。
思ってる以上に辛いことだ。
「…俺は生きる意味がほしい。今の俺は死んでるも同然だ…。こんなことなら生まれて来なければ良かったのにな…。」
ネガティブな思考が蔓延する。
夕飯も食べないでベッドに潜り込む。
目を閉じ、いもしない神に祈る。
こんな世界滅んでしまえと。
その日はそのまま寝てしまった。
「…やっと見つかった…。水色の髪…。これで全員だな…。」
黒髪の男がそう呟いた。
to be continued…