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「すばり……変身ですよ」

〜前回のあらすじ〜

キノコ採りに行ったてたら何故だかマモノとバトルしてました。

♦♦♦


 その後二人は無事に依頼されていたキノコを採取し街へと戻ってきていた。


 一旦受注所に戻った二人は依頼達成報告をして、依頼者の名前や届け先が記された紙を受け取った。


「しっかし、カネを払ってまでしてキノコをとってきてくれだなんて変な依頼ね」


 道中、セラはそんなことを言い始めた。


「言われてみればそうですよね」

「でしょ? きっとよほどのモノ好きなのね」

「そうなんでしょうねぇ……」


 二人の足は止まることなく進んでいく。指定された受け渡し場所にはまだ遠い。空は夕焼け色に染まり、影を大きく伸ばしていた。


♦♦♦


 数十分後、二人は指定されていた届け場所と思われる場所に辿り着いた。そこには一軒のこじんまりとした家が建っていた。


「こーの家ですかね……?」

「ちょっと地図見させて」

「はい」


 ルカは言われるがままセラに紙を手渡す。


「そうっぽいわね」


 二人は顔を見合わせ頷くとその家のドアに近づき軽くノックをした。ルカはしかめっ面で紙を見ながら大きな声で言った。


「すみませーん。 受注所であなた様の……えーとレナさん? の依頼を受けた者なんですけどもー」


 ルカがそう言うと奥からはーい、と答える声が飛んできた。足音が近づき、すぐさまドアが開かれた。そこから姿を現したのは一人の女性だった。


「どうもー、ありがとうござ……」


 女はルカの顔を見るや否や目を、そして口をあんぐりと開き固まってしまった。


「へ……? えと……あの……?」


 困惑するルカ。すると女の容姿が段々と変化していった。髪の毛の中から耳が現れ、臀部からはフサフサの尻尾が生えてきた。みるみるうちに人と狼のあいだの姿になってゆく。


「あ、あなたは……いつぞやの……!」


 そう叫んだルカにウェアウルフ、もといレナは抱きついた。


「やっっと逢えた!!」

「……はへ!?」


 今度はルカ達が硬直する番だった。


♦♦♦




「お茶持ってきたぜ!」

「あ、はい」


 誇らしげにやってきたスライム娘からルカとセラの二人は素直にお茶を受け取った。


 どういうわけか二人はレナたちの家に上がらせてもらっていた。またまたどういうわけか、ルカの腕には幸せそうな顔をしたレナがひっついていた。


「鍋もう少しでできるから待っててくださいね」


 奥からはラミアのそんな声が飛んでくる。


「は、はぁ……」


 きょとん、とし気のない返事をするセラ。一方ルカはというと、見ている側がムカついてくるくらいの満面の笑みでデレデレしていた。


「あたしはスイ。よろしくな!」


 スライム娘は弾力性に富んだ手を差し出してきた。ルカはなんの躊躇いもなく握手を交わす。


「あぁ、どうもよろしくよろしく」


 そんな二人の間にレナが割り込む。


「あー、向こうにいるラミアがラーでわたしがレナよ」

「どうも、貴方のためのルカですよ。キラッ」


 驚くほど気障ったらしい口調で放たれたルカのその言葉にレナは頬を赤らめ目線をそらし口元を手で隠しながら「もう……ばか……」と言った。


 なんだか面白くないセラは暇を持て余しお茶を飲み始めた。


「しっかしよ〜、レナが結婚だなんてなぁ〜。未だに信じらんないぜ」


 セラは喉元まで入り込んでいたお茶を一気に吹き出した。


「けけけっ、結婚!?」

「そうだぜ。この前あった時にレナのやつが告白されたんだ!」


 セラはバッ、と勢い良くルカを見た。ルカもセラを見た。


 数秒の後、ルカは小さく頷いた。


「はぁぁぁぁあああああッ!?」


 セラの怒号が辺り一面に響き渡った。

 

「え……え!? ちょっと、どういうことなの!?」


 セラは叫んだ。


「いやぁ、モテちゃってツライなぁ♨」


 笑顔でルカは返す。対してセラは怒りで冷静さを失おうとしていた。


「アンタねぇ……!あたしをなんだと思って……!!」

「ふふふ……ちゃんと訳があっての行動なんですよ……」


 ルカはそう言うが、腕に狼女をひっさげてニヤついている男の言う事なんぞはにわかに信じ難い。


「一旦話しましょう?」外を指差しながらそういうルカに鋭い眼光を浴びせながらセラは頷いた。


♦♦♦



 ルカとセラが外に出たのを確認するとレナは大きなため息をついた。


「はー……きっつ」


 そんなレナにスイは笑顔で声をかける。


「すげぇ演技だぜ自身持っていいと思うよ!」

「ありがと……」

「本当にアホみたいな女に見えるぜ」

「うん……嬉しくない……」


 さらに奥で料理を作っているラーからも声がかかる。


「頑張ってねレナ。その調子で情報を聞き出してちょうだい」

「わかってるよ……あー、頑張る」

「えらいえらい」


 スイがレナの頭を優しく撫でる。

 彼女らはルカたちが戻るまでの束の間の休息を過ごした。



♦♦♦




「で? あんたの言うワケって、なに?」


 外に出たセラは早速ルカに尋ねた。自身有りげにルカは返す。


「ズバリ……変身ですよ」

「変身?」

「そうです。どういう原理であのウェアウルフがニンゲンに化けているのかを教えて貰い、習得できれば貴方も便利でしょう!?」

「……確かに」


 確かにルカの言う通りだ。そうなればセラは何の制限も無くおおっぴらを歩き回れる事になるだろう。それはかなり利便性が増すこととなる。


「でしょ? でしょでしょ? なのであの子に近づいたというわけなんですよ〜」

「むぅ……」


 決して悪い手ではない、むしろいい話なのだがセラは……。


「なんかアンタに言われるのは腹立つ」

「なんかってなんですか!? 生理的にとかヤツですか!?」

「うん、そうね」

「酷い! ショック! 泣いちゃう!!」



♦♦♦



「ただいま〜」


 ルカが居間に戻りそう言うとテテテ、とレナが幸せそうな笑顔で駆け寄ってきた。


「お帰りなさい! ご飯の用意ができたわよ! 一緒に……食べよ?」


 レナの砂糖より甘い上目遣いがルカを襲う。


「はうわぁああああッ! もう、可愛いんだから……。そんな目で見てると食べちゃうぞっ!」


 そうしてルカはレナを目掛けてゆっくり手を伸ばした。変態の如きその手をセラがはたき落とす。


「やめなさい」

「ちぇ、つれないなぁ」

「あたしは別に良かったけど……」

「レナ……」

「ルカ……」


 二人は互いの視線をねっとりと絡ませ合う。頬が薄明るく染め上がったレナのしとっりと湿った唇からポロリと言葉が零れ落ちた。


「……好き」


 ルカはレナを見つめている。


「……合格! お嫁さんポイント20ゲット」

「やった!」


 そんな茶番が繰り広げられる中に鍋を持ったラーからご飯の催促の声が飛び、皆で鍋を囲んだ。


「えー、恐縮ながら私、ルカが乾杯の合図を取らせていただきます」


 そうルカが名乗りを上げると拍手が沸き起こった。それをなだめるように手を差出すルカ。


「皆様、ありがとうございます。えー、それではー、我々の再会を祝って……乾杯!」


『かんぱーい!』


 かくして一人と四匹の鍋の会が始まった。




♦♦♦



「そういえばどうしてこの街にいるんです?」


 温かい鍋に口をハフハフとさせながらルカはレナたちに尋ねた。そんな問いにラーが答える。


「……今私たちはとある街を探しているの」

「それは一体どんな?」

「コロシアムがある街よ」


 一瞬、ルカの動きが止まった。


「コロシアム……」

「そこで魔物がニンゲンに虐げられているらしいのよ」

「……」

「魔物を一方的に斬りつけたりする見世物なんかをしてるのよ……」

「だからあたしらがそいつらをとっちめてやるってワケ!」


 スイが話に割り込んでくる。その体は薄青く透き通り、プルプルと揺れている。


「とっちめる……」


 ルカは繰り返すように呟いた。セラはそんなルカを見ながらスイに尋ねた。


「コイツもニンゲンだけど憎くないの?」

「うん! だって悪いことしてないだろ?」

「ええ……ぼくは……」


 ルカは虚ろな目で呟いた。明らかに様子がおかしい。セラはたまらずルカに耳打ちした。


「ちょ、アンタどうしたのよ!」

「え……? あ、ああ、いやぁ全くひどいですね!」


 ハッと我に帰ったようにルカは慌てていった。一体全体どうしてたというのだろうか、セラには全く検討がつかなかった。

 そんなことを知ってか知らずかラーは続けた。


「まぁ、まだその街の場所がわかっていない状況だからこうしてここを拠点にして情報を集めている段階なんだけれどもね……」

「そうなんですか」


 少し重たい空気がその場を漂う。

 それまで黙々とご飯を頬張っていたレナがルカたちに訊いた。


「そういえば二人は何をしていたの?」

「おおっ! いい質問ですねぇ……! よかろう、答えてさしあげましょう」


 ルカはお茶を少し飲むと続けた。


「ええとですね、我々もあることを探してここまでやってきたんですよ」

「あること? 何?」


 そう返されるとルカは突然レナを指差した。


「えっ、何?」

「その あることとは、貴方のようにニンゲンに化ける方法なんですよ!」

 ルカは勢いよく立ち上がった。そして今度はセラのことを指差した。

「みてください彼女を! このように彼女の両腕は羽になっています! そのせいで街中を出歩く時はマントを背負わざるを得なかったり、人前では食事も儘ならない! 更には僕と手を繋ぐことも出来ないのです!」

(いや、最後のはいらないでしょ)


 心の中でセラは突っ込む。そんなことも露知らず、ルカの熱弁は続く。


 ルカは天を仰いだ。


「嗚呼、なんと嘆かわしい! 彼女はハーピーである為にこんなに多くの障害を抱えなければいけないのか!?」


 ルカはひとつ、息を吐いた。


「否! 断じて否! そんなのは間違っている! ニンゲンと魔物が敵対しているこの世の中自体が間違っている!」


 ルカの大振りなジェスチャーが空を切る。


「だけど! 僕一人ではこの世界は変えられない……! その日が来るまで彼女には理不尽な事感じてほしくない……そういうことなんです」


 喋り終えるとルカは静かに着座した。そして真っ直ぐレナを見つめて言った。


「何か教えてくれませんか?」


 レナは悲しそうにルカから顔を背けた。


「残念だけど……私からは教えることは出来ないわ……。感覚的なモノだから私もよくわからないし教えられないわ」

「そう、ですか……」


 ルカは落胆した。ニンゲンに化けることができなければこの先の旅路はかなりの苦労が待っているであろう為だ。


「あっ、でも……」


 思い出したかのようにレナが再び声を上げた。

「ん? でも?」

「やってくれそうなヤツならいるわ!」

「マジっすか!」


 まるで暗闇の中に一筋の光が差し込んできたかのようだった。


「その方は今どこに!?」


 ルカはレナにがっつくように尋ねる。だがそれに対してレナは少々困った顔を呈した。


「あ、いや、私もその話が本当なのかはわからないんだけど……」

「話……?」

「いわゆる伝説みたいなモノね」

「伝説、ですか。それは一体どんな……?」

「ええと、確かなんかこう、どっかの森の奥の、えー、湖? かなんかにこう、願いを叶えてくれる〜みたいな精霊的なヤツが居るとかなんだとか的な……みたいな」


 レナはぽりぽり、と頬を掻きながら話す。どうやらそこまで内容を覚えてはいなかったようだ。


「かなり大雑把ですね……」

「それあたしも聞いたことあるぞー! あんまり覚えてないけど」


 そう言ってえへへ、と嬉しそうにスイは笑う。何が嬉しいのかちっともルカにはわからなかったがその笑顔につられて顔をほころばせた。



♦️♦️♦️



 程なくして二人がレナたちの家を出ると辺りは既に暗くなっており、時折冷ややかな風が街を駆けていた。


「で、あんたどうするつもりなの?」


 宿への帰り道、セラは訊いた。こころなしかルカの気分は沈んでいるように見受けられた。


「あんまり有力そうな情報じゃなかったじゃない」

「いえ……そんなことはありませんよ」

「え? どういうこと?」

「…………」


 妙な空白を置いた後、ルカは乾いた笑い声をあげた。


「まあ、きっと時期にわかりますよ……」

「……ふーん」


 一体どういう意味なのかセラにはわからなかったが余計な詮索はよしておくことにした。



♦️♦️♦️



「明日の朝この街を出るんで、今日は早めに寝といてくださいね」


 宿につくと突然ルカはそう言った。


「ええ? どこいくつもりなのよ」

「どこって……んー、行ったらわかりますよ」

「さっきからなんでそんなに曖昧なのよ……」

「気にしなーい気にしなーい! ほら、結構歩くんで早く寝ないと!」


 そう言ってルカはセラの背中を押し始めた。


「ちょっちょっ!」


押されたセラはそのまますぐそこのベッドに倒れ込んだ。そしてそれに続くようにルカはベッドに飛び込んだ。


「えっ!? 何!?」


 ルカは絡みつくようにセラの腰に手を回し、ぴったりとくっついた。額を背中にこすり合わせる。


「ちょっとっ!? 何なのよいきなり!」


 一体全体どうしたものなのか。突然の出来事にセラは面食らうばかりである。


「悩む必要なんて無かったんだ……」


 そう、小さくルカは呟いた。


「えっ?」


「僕は、幸せですよ……」


 再びそう呟くとルカは手を離し、立ち上がった。見るとその目には薄らと涙が浮き出ていた。


「ルカ……」


 セラはわけもわからずルカの名をよんだ。


「さあ、明日に備えましょうか」


 いつもの調子でそう言うとルカは微笑んだ。



2016/01/20 20話〜23話までを合体、加筆修正致しました。

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