episode.7 約束
星名と遥は、HRの時間になるまで楽しそうに話していた。
「ふふ…っ、そうなんですか?先輩のお姉さんって面白い人ですね(笑)」
「でしょ?もうお姉ちゃんの彼氏の話聞いたら笑いすぎて寝れないんだよね(笑)」
「何か分かります(笑)もしかしたら俺も寝れないかもしれないですね。」
「うん。多分ね(笑)」
星名には、大学生の姉:瀬玲奈がいる。父親は瀬玲奈が中学1年の時に他界して母親1人で病院を受け継いでいる。母親の後を継ぐ為に医学部に入って医者になる為の勉強している。ちなみに、年上の彼氏がいて性格はチャラくて変な事をいう事がよくあるらしい…
「あ、そういえば星名先輩って部活は何入ってるんですか?」
「部活?えっとね…美術部。」
「美術部なんですか。先輩の描いた絵、見てみたいです。」
「え…見たいの?」
「はい。ダメでしたか?」
「ううん…ダメじゃないよ。分かった、何枚か描いて見せるね。」
「はい。楽しみにしてます。」
「うん。遥君は部活何に入ってるの?」
「俺は、軽音部ですよ。」
「えっ⁉軽音部⁉もしかして楽器とか弾けるの⁉」
「楽器は…ちょっと…俺が担当してるのはボーカルですよ。」
「え…えーー⁉」
(遥君がボーカル…どんな歌声なんだろう…可愛い声のままかな…それとも声変えて歌うとか…気になる…)
「Black Rose」はボーカル(Vo.)の遥、ベース(Ba.)の航輝、ドラム(Dr.)の要、ギター(Gt.)の瑠海の4人組ポップス系バンド。ポップス系の他バラード、ロックを歌ったりする。女子度高く祇王高校のスターと呼ばれているほど人気がある。仕切りと盛り上げ役は遥が照れ屋の為、いつも航輝がやっている。
「…?先輩?」
「わっ!ごめん…ぼーっとしてた…」
「大丈夫ですよ。」
「遥君の歌…聴いてみたいな…良かったら…聴かせてほしいな…」
「え…今は…無理ですよ…あ、そうだ。10月に文化祭ありますよね?それで軽音部が推薦されて歌う事になったんですよ。」
「軽音部ってそんな人気なんだね。すごいよ。」
「いえ…そんな事ないですよ…」
「いやいや、すごいよ。尊敬するよ。」
「あはは…尊敬なんて…」
「ねぇ、遥君。」
「何ですか?」
「その文化祭の時、遥君の歌聴かせてね。楽しみにしてるから。」
「っ…////あ…はい…」
「楽しみにしてる」という星名の言葉に遥は、顔を赤くして照れいたが心の中では喜んでいた。
キーンコーンカーンコーン…
「あ、HR始まるね。」
「そうですね。時間経つの早いですね…あ、星名先輩は怪我してるので保健室でゆっくりしててくださいね。」
「あ…うん。ありがとう。黒姫先生にも言われてるからちゃんとじっとしてる。」
「はい。昼休みにまた来ますから。」
「え、そんなの悪いよ…」
「気にしないでください。俺が先輩に逢いたいからいいんですよ。」
「っ…////」
遥に笑顔で「逢いたい」と言われてその言葉を聞いてまた星名の鼓動が高鳴った。すると、星名が遥の制服の裾を掴んで…
「…どうしました?」
「さっき…悪いとか言ったけど…ほんとは…私も遥君とまた話したい、また逢いたいって思ってた…」
「っ…!そ…そうなんですか?星名先輩にそう思ってもらって言われて嬉しいです…」
「遥君…」
「ありがとうございます。先輩。あ、せっかくですから約束しましょうか。」
「約束?何の?」
「うーん…何しましょうか…」
「そうだね…あ、毎日は無理だけど…こうして逢える時は逢うとか?」
「なるほど。あとは…あ、2人の時だけ名前で呼び合うとかどうです?」
「うん、いいね。何か特別な約束みたいだね…っ」
「そうですね…っ。でも特別って何か素敵じゃないですか?」
「うん。私もそう思う。」
「ですよね。」
「うん。」
「あ、そろそろ行かないとやばいので先輩。」
「………っ」
約束をする為、遥は星名に小指を差し出した。それを見た星名は少し戸惑ってゆっくりと自分の小指を差し出して…
「約束…ね?」
「はい。約束…です。」
お互いに「約束」と誓って見つめあって微笑んだ。
「それじゃ、俺は行きますね。先輩、また昼休みに。」
「分かった。また昼休みに。待ってるね。」
「…っ。はい…っ」
遥は、星名にまた後で来ると言って保健室を出て行った。
(遥君とした約束…大切にしなきゃ…)
星名は、繋いだ小指を見つめながら嬉しそうに遥と交した特別な約束を大事にすると誓っていた。