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可愛い子には要注意!  作者: 逢花 奏音
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episode.6 優しさ

〈扉を開ける〉


「黒姫先生、いますか?」


「はーい。あら、遥君。どうしたの?」


「如月先輩が怪我しちゃって…」


「あら、大変!すぐ手当てするからベッドに運んで。」


「はい。」


遥は、星名を奥のベッドに運んでからっていた鞄を床に置いて黒姫先生のとこに駆け寄った。


「黒姫先生、俺も手伝います。」


「じゃあ…手首の傷と腕の痣の方をお願いね。」


「分かりました。」


遥は、消毒液、ガーゼ、包帯、湿布を受け取って星名のいるベッドへ行った。そして、すぐ手当てを始めた。


「ちょっと、沁みますよ。」


「うん…っ…いた…っ」


「すぐ終わるので我慢してください。」


「…………」


「腕の痣の方もこれで良し。」


手当て始めてから30分後…


「如月先輩、手当て終わりましたよ。」


「真崎君…ありがとう…」


「星名ちゃん、捻挫して少し腫れてるから歩くのはあまり控えてね?」


「あ…はい。黒姫先生もありがとうございました。迷惑かけてごめんなさい…」


「謝らなくていいよ。困った時はお互い様でしょ。ね?遥君。」


「はい。そうですね。」


遥と黒姫先生は、お互いに顔を見合わせ笑っていた。星名は二人から言われた言葉に喜んでいた。


「遥君。ちょっと空けるからお願いね。」


「分かりました。」


黒姫先生は、用事を思い出し遥に留守番を任せて保健室を出て行った。保健室には星名と遥の2人だけになっていた。


「如月先輩、良かったら聞いてもいいですか?」


「何を?」


「怪我するほどに何があったのか…」


「…………」


「俺で良ければ、聞きます。だから、良かったら理由を教えてください。」


理由を教えてほしいと言われた星名は、急に悲しい顔をして黙りこんでしまった。遥の真剣な表情と言葉には敵わずごまかすなんて無理だと分かっていた。そして、理由を話す事にした。


「あのね…私、深雪と喧嘩…したの…」


「深雪…?」


「あ、初めて聞くよね。名前は伊藤 深雪っていって私の中学からの親友なんだ。」


「そうなんですか。それで、その伊藤先輩と喧嘩って…」


「実はね…真崎君との出来事を聞かせてほしいって言われたから話したんだけど…」


「話したけど…?」


「何だか分からないけど急に怒りだして…その後掴みあいになって深雪が突然手を離したからそれで怪我しちゃって…」


「そして、1人で保健室に向かう途中足を踏みはずして階段から落ちたんですね…」


「うん…真崎君…ごめんなさい…」


「え…?」


「私、真崎君に迷惑かけすぎだよね…」


「そんな事…っ!」


遥が言おうとした時、星名の目から涙が零れていた。遥に迷惑かけた事と深雪と喧嘩した事に後悔して我慢できずに泣いてしまったのだ。


「私…深雪に逢ったら…なんて言えば…いいのかな…」


「…………」


「こんな私のままじゃ…合わせる顔がないよ…」


「如月先輩…」


「私って…最低な人だな…真崎君に迷惑かけたり…深雪に酷い事言ったり…ほんと…っ」


「如月先輩は最低な人じゃありません。」


星名の言葉を遮って、遥が口を開いた。言葉を聞いた星名は顔を上げて遥の方を見た。


「え…今…なんて…」


「先輩は最低な人じゃないって言ったんです。」


「真崎君…」


「如月先輩は迷惑かけすぎとか言ってるけど俺は迷惑だなんて一度も思ってません。伊藤先輩に酷い事言ったかもしれない。でもちゃんと話せば分かってくれますよ。」


「……深雪…ちゃんと話せば分かってくれるかな…?」


不安そうに聞く星名に遥は、星名の手に自分の手を添えて安心させるように笑顔で…


「大丈夫ですよ。きっと分かってくれます。だから、ちゃんと逢って話しましょうよ。1人で不安なら一緒に付き添いますから。」


「…うん…分かった…ちゃんと逢って話すよ…1人じゃ不安だから、一緒に付き添ってくれる…?」


「いいですよ。」


少しだけど遥の笑顔を見て、言葉を聞いて元気になったみたいだ。深雪とちゃんと逢って話すという自信もついた。すると、手の上にあった遥の手が星名の頬に触れて…


「っ…!」


溜まっていた星名の涙を優しくすくい上げるように拭ってあげた。

その遥の仕草にドキドキして目が離せなかった。しばらくして口を開いた。


「先輩。これから呼ぶ時、俺の事「遥」って呼んでください。」


「え…いいの?」


「はい。親しくなった記念に。」


名前で呼んでいいと言われた星名は照れくさそうに顔を赤くして遥を見て…


「じ…じゃあ…遥…君…」


「はい。」


「っ…!」


星名が照れくさそうに、遥の名前を呼ぶと遥は笑顔で返事をしてくれた。その時、また星名の胸が高鳴った。


「遥君…私からもお願い…しても…いいかな?」


「何ですか?」


「私の事…「星名」って呼んでくれる…?っというか…呼んでほしいというか…」


「…っ!」


星名にお願いされた遥は、戸惑って口を手で抑えて照れくさそうに…


「せ…星名…先輩…」


「…っ////」


「これで…いいですか…?」


「う…うん…っ」


お互いに顔を合わせられず、赤くして俯いて何も言えなかった。しばらくして遥が…


「あ…改めて…よろしくお願いします。星名先輩…っ」


「あ…こちらこそ…よろしくね。遥君…っ」


「ふふ…っ、何かお互い真剣になって変ですね…っ」


「うん…っ、ふふ…っそうだね。」


「でも…名前で呼び合うのも悪くないですね。」


「うん。これから呼ぶ時は名前で…ね?」


「はい。」


星名と遥は、手を握り締めあったまま名前で呼び合う事に嬉しくなってお互いに顔を合わせ笑っていた。









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