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      メルト・アイルアの懺悔 下

 私がこうしてこの身分社会の中で、生きていられるのはルビアナさんがそう願い出たから。あのフィルベルト・アシュター様が、生徒の一生をダメにするのをぎりぎりまで嫌だと粘ったから。私が本当の意味でやらかしてしまわないように、色々助けてくれたから。私がルビアナさんに魔法を放った事だって本当なら、ルビアナさんが大けがをして私は退学になり、こんな風にのんびりと過ごすなんてできないはずだった。それを止めてくれたから。

 それなのに私は色々と決めつけて行動をしてしまった。

 今、私に様々な事を教えてくれているリサ様の子供であるリーラ・エブレサックとシエル・エブレサックにも酷い事をしてしまった。

 あの二人は私の事を好いてはいない。それは当たり前だろう。だから私がこうしてあの二人の母親であるリサ様のもとにいるのが気に食わないというのがあるみたいだった。でも気に食わないところがあろうとも「お母様がそれを望まないから」「母様がそれを許しているから」って、そんな風に口にしてなんだかんだで喋ってくれる。

 お母さんに、もう会えないことはもう受け入れている。受け入れてどうしようもなくさびしいし、悲しいけれどもそれでも私がこうやって立ち直れたのは沢山の人が私にやり直す機会をくれたから。本当にそうとしか言いようがない。

 私は、リサ様に対して時折懺悔の言葉を口にしてしまう。私が行ってしまったこと、そしてこれから考えていること、リサ様の笑みはとても綺麗で、優しくて、ひどく安心して、私はなんだって喋ってしまう。

 「リサ様、私は沢山、間違ってしまったから一生懸命勉強して、私にやり直す機会をくれた人たちに償いたい。迷惑をかけた分、人の役に立ちたいってそう思っているんです」

 私の言葉に、リサ様はそれはもう優しくて暖かい笑みを浮かべていた。

 そういうところ、お母さんに似ている。お母さんもとっても優しい人だった。私を愛してくれて、優しくて、お母さんが私は大好きだった。

 大好きで、もうマザコンって言われても仕方がないぐらいお母さん、お母さんってばかり口にして友達にも呆れられていたぐらいだった。

 そんな私だからあれだけ失敗を犯してしまったのだろう。お母さんがいない事を受け入れられなかったのだろう。

 でもどんな理由があろうとも、私はやらかしてしまって、だからどうにかして人の役に立てるようにこの『異世界』で生きていたいとそう思う。だってお母さんの娘として恥ずかしくないような生き方をしたいのだ。私は。

 「頑張りなさい。大丈夫、貴方ならそういう生き方ができるわ」

 「リサ様にも、沢山迷惑かけてごめんなさい」

 「大丈夫よ。私はあなたが一人前になって、誰かのために生きられるようになってくれたらそれだけでうれしいもの。だから、そういう存在になれるように、目標をかなえられるように精進してくださいね」

 そういって笑ってくれるリサ様が、まるで聖女様とよんでも違和感がないほどに優しい人で、なんだか泣きたくなる。

 私はあれだけやらかしてしまって、でもこんなにやさしい人たちが周りにいる。

 それだけで私は頑張れる。失敗してもやらかしてしまっても、それでも周りにいる人たち次第で、立ち上がれるんだっていう、そういう事を改めて実感した。人と人とのつながりが、どれだけ大事なものなのかわかって、その優しさにどうしようもなく自分がやらかしてしまったことも含めて考えて、情けない気分になる。

 もっとはやくここが現実だって受け入れられていれば、相談出来ていれば、違ったのかもしれない。人をこんなに傷つけることもなく、誰かに迷惑をかけることもなくことが進んだかもしれない。

 私は何をやっていたんだろうってどうしようもない思いが溢れてくる。だけどだからといってやらかしてしまった現実から目を背けることは許されないことであるとわかっている。

 「はい、リサ様、私、頑張りますっ!」

 ありがとうって、何度感謝の言葉を告げても足らないほど私は周りの人に支えられている。私一人ではここが現実だって気づいた段階で、立ち上がれなかった。リサ様が根気強く私に話しかけてくれて、私を落ち着かせてくれた。だからこそ、私はこれだけ正気を保てた。リサ様の隣がどこまでも安心できる場所だったから。

 私はいろいろと取り返しのつかない事をやらかしてしまったからこそ、これから

後悔しないように、こういうことをやらかさないようにそういう生き方をしていこうと思う。

 この世界についてまだ知れたわけでもないし、これから私自身がどうなっていくかわからないけれど、大丈夫、私はもうこの世界を現実として受け入れて生きていける。







メルトはリサ様の本性には気づけません。

リサ様がメルトに一人前になってほしいというのは、こちらに迷惑がかからないようにいっている言葉で、メルト自身の事を思っての言葉ではありません。

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